pole ghost

ウナーゴン

20070328

 坂道を上り、角を右に曲がると、自宅までの細いまっすぐな道路があらわれる。


 その夜、私はいつものごとく、人気のない帰り道を歩いていた。角を曲がって、ふと家の方に目を向けた瞬間、奇妙なことに気付いた。


 家の門のすぐわきにある電柱の影に、白い服を着た女の人が立っている。


 静かな夜の暗闇のなか、電灯の明かりに青白く浮かび上がるその姿は、微動だにしていない。長い黒髪の若い女性。


 体に僅かな緊張感が走り、私は思考を素早く回転させた。あれは人間だろうか。それとも、突如として霊が見えるようになってしまったというのか。人間だと考えるのが、現実的な判断であるように思える。しかし、こんな時間に、よりによって私の家の前に立っている理由が判らない。人間でないとすれば、幽霊か何かだということになる。だが、これまで心霊体験など何一つなかった私に、あそこまでくっきりと霊の姿が見えることがあるのだろうか。


 私は歩調を落とし、様子を伺いながら、おそるおそる接近していった。


 あと6メートル程のところまで近づいたとき、彼女が私に気付いた。





 電柱女が、ゆっくりと私を見た。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

pole ghost ウナーゴン @unargon

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説