35話 知識の里について

優一達は各家にマットレスを配布する途中、アイリスを紹介した。

まるで引っ越しの挨拶のような感じだが、一つ違うのがアイリスを紹介する度に毎度の事ながら崇める様にひれ伏す人達。

アイリスは挨拶周りだけでかなり疲れていた。精神的に。

「何でこの街の人達は、あんなに気を使われるのですか?」

「この街に居る人たちは、元は奴隷だったから偉い人を見ると反射的にあの態度になってしまうのかもな」

「私達も時期が経つにつれて、普通に接してくれると願っているのですが…」

「急に直せと言われても無理だよね…」

優一達は屋敷に戻ると玄関の前にはガレスとリリィが待っていた。

「優一殿!ちょうど戻られて良かったです」

「さっきぶりだな!」

「リリィちゃん!もう起きても大丈夫なの?」

琴音はリリィの頬を両手で揉む。

「大丈夫れふ」

「アイリス殿の歌を聞いてからすっかり元気になったのです」

「それは良かったです!」

ティファリアも琴音と一緒にリリィの頬を揉み始める。

「それで、何か話が合って会いに来たんだろ?」

「はい。それと宜しければ一緒にお茶でもいかがと思いまして」

ガレスの手には甘いケーキが入った箱のケースが握られていた。

優一はガレスとリリィを屋敷に招き入れる。

琴音とティファリアは紅茶を用意すると、7人でケーキを食す。

「優一さんはオールワールドの南にある世界樹に向けて旅をされていると伺ったのですが、エルフの里にはもう行かれましたか?」

「いや、まだ行ってないな。途中にエルフの里があるのか?」

「はい。エルフの里は普通では見つけられない様に結界が張られています」

(そうなると、行くのは結構難しいな。まあ目的とは違うから別に構わないが)

リリィは腕に付けてあるアクセサリーを外し優一に渡す。

腕輪には透明なクリスタルがはめ込んであった。

「これは?」

「これはエルフの里に近づくとクリスタルが緑色に光り、里の場所が分かりやすくするための物です」

「有難いけど、俺達はエルフの里には特に用事はないからな」

「エルフの里は、他の種族より魔法にかけていて、一頭も二頭もずば抜けた才能を持っているので琴音さんとティファリアさんには、いい経験になると思いまして」

(確かに・・・)

「これは私が持っておくね!」

琴音はリリィからアクセサリーを受け取る。

「次の目的地は決まりましたね!」

「リリィちゃんの故郷に行けるなんて楽しみです」

「では、次の目的地はエルフの里で決まりですね!」

「こんなに早くエルフの里に行けるなんて!」

琴音とティファリアは目で優一を行きたいと訴える。

「分かった。分かったからそんな目で見るな」

リリィは懐から一通の手紙を琴音に渡す。

「これを、エルフの里にいる私の親に渡してくれませんか?きっと長く帰らない私の事を心配していると思いますので…」

「それなら直接、里に行ってから親に会った方が良いと思うけど」

「いえ、私はガレス様の元を離れるわけにはいけませんので!」

「私も直接会った方がいいと言ったのですが…珍しく聞き分けてくれなかったので、ならせめて手紙を書くようにと言ったのです」

「そうなのね…分かった!ちゃんと渡しておくね」

「それではいよいよ出発ですね!」

「ちょっと待った!」

「どうしたのですか?」

「ラティスとルナフィーネは暫くお留守番だ」

「嫌です!優一様達と離れたくない」

優一はガレスを連れて席から離れる。

「ガレスさんにお願いがあって…」

「どうしたのですか?」

「二人を鍛えて挙げて欲しいんだ。今のままで旅に連れて行ったらいずれ危険な目に合った時に、助けて挙げれるか心配で…それにアイリスもいるから」

「そういうことでしたか!分かりました。このガレスにお任せください」

「助かるよ」

「暫くは、この街に居るからそれまでには二人を説得しておくから」

「優一さんも大変ですね」

優一は苦笑いをして席に戻り、今度は琴音とティファリアに説明するのであった。

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エアストヴェルト 工藤準 @kudoujun

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