第14話 魔王の、思い……

 【ミア視点】


 自室に戻り、ミアはあることを考え込んでいました。

 もちろん、アディス様のことです。


「うぅ……」


 好きになったら、どうすればすればいいのかな?

 ピティに教えてもらったのは、好きという気持ちを伝えて、お付き合いして、デートして、チューして……。


 自分の顔が真っ赤に染まるのを感じました。


「無理無理無理! 絶対無理です!!」


 気持ちを伝える? どうやって?

 そんなことできるはずがないです。

 怖いですよ。


 今は、アディス様と会いたくないなと思いました。

 アディス様を好きなのだと気づいてしまった今、顔を合わせればミアはきっとオーバーヒートしてしまうから。


「会えるわけ、無いじゃないですか……」



 ガチャ。


 その瞬間、扉が開きシノノンが入ってきました。


「わ! ビビビビビビックリした!! ノックしてくださいよ!」

「いつもノックしなくてもいいと言ってるのはミア様だよ」


 そ、そうでした……。


 ミアは今の自分の表情を見られたくなくて、毛布に潜り込みました。

 できればシノノンにこの気持ちを気づかれたくないのです。

 恥ずかしいですもん。


「それで何の用なのですか?」

「……ミア様、今日元気ないの?」

「なんでですか?」

「弱弱しい声、あといつも僕が部屋に入ってくると抱きしめてくるから」

「抱きしめてほしい?」

「……いえ、結構です」


 あれ、今間がありましたよね?

 やっぱミアに抱きしめられたいんですねシノノン!!


 しばらく沈黙が続き、シノノンが急に謝罪を始めた。


「申し訳ございません。僕がアディスとイレーシアに図書室で戦わせた結果、本や棚が紛失、損壊してしまいました。責任は全て僕にあります。本当に申し訳ございませんでした」


 それを聞いてミアが毛布から顔を出すと、シノノンは土下座……?

 と言う作法をしていました。

 確かお礼を言う時と、謝罪をする時に使うんでしたっけ。


「何層の図書室ですか?」

「第二十層の図書室でございます」

「わかりました。顔を上げてください。図書室はあと四つありますし、大丈夫ですよ」


 ミアは微笑んで、暗い顔のシノノンに元気ずける。


 なんで図書室で戦わせたのかは分かりませんが、きっとシノノンなりの意図があったのでしょう。

 ……そうですよね??


「ちなみに、イレーシアというのは……」

「はい。第二十九層まで入階可能となっている4学年S組の子です」

「あ、そうなんですね」


 この魔王城は、敵と戦い、くつろぐためだけでなく、魔族の育成のため、学校としても使われています。

 卒業までに、一人でも十分に生きていける力をつけるのが目的です。

 ちなみにミアが決めたわけではありませんが、学校ではランクずけをされているそうです。

 あまりそういうやり方はミアは好きではないのですが……。




 【アディス視点】


 図書室の件について、自分で言うのもなんだがすごく気にしていた。

 商人が喉から手が出るほど欲しいであろう貴重な本を、燃やしてしまったのだから。

 あぁ、いや、別に俺は燃やしてはいないが……。

 掃除していたメイドに曰く、紙類は一応魔術で元通りにできるらしい。

 しかし燃えているとなると、話は別――とのことだ。


 ミアはこの件について知っても怒りはしないだろう。

 付き合いが半年ともなれば、流石にこのぐらいは分かる。


 だがミアが怒らないと知っていても、もちろん謝らなければいけない。

 むしろ謝らせてほしかった。

 それほど、罪悪感でいっぱいだったのだ。



 コンコン。


 俺は恐る恐るミアの部屋の扉をノックする。

 すると中から出てきたのはシノンだった。


「あ、えっと……どうも」


 俺がそう言うとゆっくり扉を閉めた。

 しばらくたち、またもや扉が開いたと思ったら、シノンが部屋の外に出てきた。


「何しに来たの?」

「もちろん、図書室の件について謝りに来たんだ」

「それは僕から伝えておいたから大丈夫だ。自由にして」


 無表情だが、優しい声――


「いや、それはできない。俺がやってしまったことだ」

「……だめ」


 シノンは首を横に振る。


「何故だ」

「今ミア様は誰とも会いたくないと言ってる」

「え、もしかして図書室の件のせい?」

「まさか。でも、僕にも詳しいことは分からない」


 どうやら、図書室の件についてはミアはあまり気にしていないらしい。





 それから、数十日が経過した。

 だがミアが部屋から出てくることは無かった。


 何かを悩んでいるのだろうか?

 思い返してみれば、確かにミアの仕草と表情が数か月前と違っていたのかもしれない。

 いつもは俺が力を貸してもらっている。だから今こそ力になりたい……そう思った。

 故に何回かミアの部屋の扉を叩いた。


「おーい、ミア。俺だ、アディスだ」


 しかしミアが部屋からミアが出てくることは無かった――――



 その数十日の間。

 もちろん俺は魔術の練習を怠らずに行っていた。

 でも、あまり楽しくは無かった。

 あぁいや、もちろん魔術の練習自体はとても楽しいさ、うん。

 しかしどうしてもミアと一緒にする修行の方が楽しかった。


「どうしたの?」


 魔王城の木の下の影で、心地よいそよ風に当たっていると、シノンがやってきて隣に座った。


「ミアと会いたいんだ」

「……そうだろうね」


 ミアはシノンだけは部屋に入れているらしい。

 俺やその他の人は一切部屋に入れてもらえない。

 なんか、悔しいな。やはり俺って信頼されていないのだろうか?


「守護神や、幹部のみんなも心配している」


 シノンは空のどこかを見つめながら、そう言った。


「ん、守護神って幹部の扱いじゃないのか?」


 シノンはこちらの顔をジッと見た後、クスクス笑い始めた。

 そんなにじっくり見ないでくれ、照れるじゃないか。


「君、面白いね。それじゃあ幹部が多すぎだよ」


 ……確かに、それだと幹部が99人以上いることになってしまうな。


「じゃあ、幹部って一体何人いるんだ?」

「4人だよ。君もあったことがあるみたいだけど、ピティも守護神兼幹部なんだ」


 え、ピティって幹部だったのか……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

最悪な形で勇者パーティ"追放"された俺だが【可愛い魔王】に拾われました。 星ミカゼ @MikazeSann

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ