第2話 魔法使いだからってみんな魔法使えるわけじゃねぇんだからな!

「魔王様…貴方、ベストポジションにいらっしゃる自覚はございませんの?魅力的なラスボスがいてこそプレイヤーは燃えますのに…ふぁ……」

また電源が切られ、戻ってきた王女が苦言を溢すが魔王の欠伸に釣られ、途中で言葉が途切れる。

「そんなこと言われてもよ…俺はゲームできりゃそれでいいんだってば。世界滅ぼすとかぶっちゃけ興味ねーし。」

魔王は呆れたように頬杖をつきながら王女に答え、ふと柱の影に目をやると「…何隠れてんだよ。出てこい。また死んだんだったら慰めてやるから。」と声を掛ける。

「ま、魔王……やっぱお前が世界で一番優しいよな…!…ところでさ、魔王。その優しさに付け入るようで悪いんだけど…来たる最終戦の時も…よろしく頼むぜ?」

ひょっこり顔を覗かせたボロボロの勇者は涙ぐみながら魔王の玉座まで走り寄り、懐から金貨の袋を覗かせる。少し間を置いて隣室から顔を覗かせた寝巻き姿の僧侶が「…回復しますか?」と勇者に問うと思い出したように崩れ落ちながら「……た、頼むわ……ほら、昨日200体くらいモンスター狩らされたから…全身ボロボロなんだよ。」

「…んん…手を抜くのは構わねぇんだけど、本気じゃねぇとプレイヤーにバレるだろ?」

魔王は金貨の袋を勇者の方に押し戻しながらも困ったように首を傾げ、勇者に問いかけているとようやく長い長い欠伸を終えたらしい王女が憤慨した様子で魔王に詰め寄る。

「まあ!ご趣味と指名は別物ですわよ、魔王様。…そこまでやる気が出ないと仰るなら、私が代わりに魔王になりますわ。」

「…そりゃ困る。ゲームのシステム的に。」

「それなら、毅然となさってくださいませ。貴方様は勇者様とで一、二の人気を争う人気キャラで、魔王軍の主なのですから。」

王女はどちらが年上なのか分からないレベルで魔王に口酸っぱく説教を飛ばす。

「へへ…そうだよ魔王、逆に言えば本気で戦ってるみたいに見えればいいんだよ。

んん"ッ…じゃ練習しとこうぜ。あ…!ちなみに本気じゃなくて、演技の練習な。お前さっきもやってたろ?」

勇者は下衆な笑みを浮かべてすっと剣を抜くが立ち上がる魔王を見て慌てたように付け加える。

「…おう…てか、あれ?そういやなんで俺励まされてたの?…魔王だよな?俺。うん。俺魔王だ。」

王女の説教を聞いていた魔王はふと首を傾げ、自問自答して一人でうんうんと頷く。

「…てか勇者さぁ…確かに演技ならやってたぜ?でも本番で手ぇ抜くの大変なんだよ。お前、ド◯クエイ◯ブンの勇者が持ってる勇者パワー的なのとか何もねぇじゃん。」

勇者の方に向き直った魔王は退屈そうに伸びをし、一応演技の構えを取ろうとした…時。ごすっと鈍い音を立てて魔王の腰に何かがぶつかる。バランスを崩した魔王は思いっ切り転び、床に胸を打ち付けた。

「あ、師匠だ~!ねえねえ、魔法教えて…って、あれ?師匠、床に転んでどうしたの?」

「……お前……今確実に俺の腰イったぞ。

あと…お前は魔法無理だって言ってんだろ。ステータス完全に格闘家じゃん。」

ツインテールの少女は魔王の言葉を聞くとぷりぷりと怒りを露にする。

「なによ、その言いぐさ!私だって頑張れば…」

「んじゃこれ出してみ。出来っか?」

魔王は言葉を遮るようにして小さな炎を人差し指の先に灯らせる。ツインテールの少女は鼻で笑い、杖を必死に振るが「なぁんだ、そんなの簡単よ。…えいっ!…あれ?…えいっ!」出るのは煙としょぼいSEばかり。

「…ほら、無理だって。こんなの初歩中の初歩だぜ?」

ツインテールの少女はいよいよへそを曲げて頬を膨らませ、「…な…なによ!師匠だって物理で殴れば怖くないんだから!」と杖を魔王に向けてぶんぶんと振り始める。

「やめろ、やめろって…危ねぇ。勇者に当たるだろ。」

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「なぁ、頼むよ魔王。俺の話を聞いてくれ!」 匿名希望 @YAMAOKA563

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