【短編】ママチャリだけは無双できる少女に振り向いてもらう方法…… 【小説の書き方が分からないので、アドバイスなど頂けると助かります】
古城ろっく@感想大感謝祭!!
ママチャリだけは無双できる少女に振り向いてもらう方法……
私のクラスには、変な子が一人いる。
中学の頃から同級生で、それでも何を考えているのか分からない女の子。
でも、その子はとっても優しい子で――
ガタンタタン……ガタンタタン……
私は、高校へ通うための電車に乗っていた。
私の家からだと、電車2本を乗り継いでようやく、学校に近い駅に着く。
そこからはママチャリに乗り換えて、学校まで走る必要があった。
駅から学校も、それなりに遠い。
「……」
そっと、スマホを開く。電車に乗っている間、よく見るのは小説投稿サイトだった。
それのせいなのか、クラスのみんなは私を文学少女だと思ってるみたい。
まあ、もしかしたら三つ編みと眼鏡のせいかもしれないけど。
『次はー、輪学駅――。ワナビ駅です。お降りの際は、忘れ物に注意して――』
私の降りる駅だ。
スマホをスクールバッグに戻して、降りる準備をした。
ドアが開いて、風が吹き込んでくる。緑色のセーラーカラーが大きく翻る。
「風、強いなぁ」
今日の自転車登校は、なんだか大変そうだった。
強い向かい風の中、私はママチャリを漕いでいく。
私が2台持っているうちの、いちおう新しい方。
とはいっても、もう高校に2年も通っているうちに、そこそこボロボロだけど。
ちなみに、1台目は私の家から駅までの往復に使っている。
電車だけでなく、自転車も乗り継ぎで学校までくる。
私たちの町に住んでいれば、それは当たり前のことだった。
ただ、その当たり前を覆す子もいる。
――ぶぅん!
風向きが変わった気がした。
それが気になって、風の吹いてきた後ろを振り返る。
すると、そこには私のクラスメイトの女子がいた。
「イア殿。おはようでござる」
私とは中学の頃から、5年間も一緒にいる女の子だ。
いつからか、サムライみたいな話し方をするようになった変な子。
最初に会った時は、そんなんじゃなかったと思うんだけどな。
「おはよう。ユイちゃん」
私が彼女の名前を呼ぶ。
彼女がユイちゃん。
私がイア。
名前だけなら、私の方が変わってるかも。
「今日もいい天気でござるな。おかげで自転車が速いでござる」
「あははー。ユイちゃんが自転車に乗って遅かったことなんて、今までないじゃん」
「そうでもござらぬよ」
長い茶髪をなびかせた彼女は、私の隣までくると、私に合わせて減速した。
そして真ん丸の大きな瞳を私に向ける。
同じく丸くて大きな目を、にこりと細めた。
「最近は自動車を追い抜くような走りも控えているでござるから、割とゆったり走ることが多いのでござる」
彼女の言う『ゆったり』の基準が、私たちとは離れすぎていて、何の参考にもならない。
ただ、彼女は冗談でそれを言ったわけじゃない。
私もこの目で見たことがあるんだ。ユイちゃんが自動車を、改造ママチャリで追い抜いていく姿を――
「今は改造もしていない普通のママチャリを使っているでござるから、もうあんな走りは出来ないでござるな」
「あはは。それでも速いよ。普通じゃ考えられないくらい……」
彼女は本当に、どこまでも元気だった。
ガシャン!
「わ!?」
自転車のペダルが、急に軽くなった。
そのせいで、体重をかけていた方の足がガクンと下がる。
まるで落とし穴に落とされたような感覚。
私はとっさに自転車を乗り捨てて、地面に立った。
自転車はあっというまに転げて、ハンドルをくるりと回したままアスファルトにぶつかる。
スクールバッグが入っていた前カゴが、ひしゃげてしまった。
「な、何? 今の……」
「ふむ……」
ユイちゃんが私の自転車を起こしてくれる。
そして、ペダルを軽く揺すった。
「ああ、これは、チェーンが外れているのでござるな」
私の自転車は、チェーンが外側から見えない。
フルチェーンケースという部品が付いているからだ。
でも、ユイちゃんはチェーンだと断言した。
「ちょっと待つでござるよ。拙者に直せる範囲で、修理するでござる」
「え? いいよ。そんなの」
「良くないでござるよ。イア殿も大変でござろう。それに、自転車が可哀そうでござるからな」
ユイちゃんはどこからか、ポケットツールを取り出す。
ドライバーなどがいくつも組み合わさった道具だ。
「ここのネジを外すと、チェーンケースのギアの近くだけが外れるのでござるよ」
「あ、本当だ」
私はその手元を覗き込んだ。ユイちゃんの言う通り、チェーンが外れている。
「とりあえず今日のところは、後輪を後ろに下げることで、チェーンを引っ張るでござる」
「そんなことできるの?」
「うむ。車軸についている、チェーン引きというネジ付きの鉄板があるのでござるよ。そこのネジを少し締めると、その分だけ後輪が後ろにいき、チェーンがきつくなるのでござる」
「わぁ。それじゃ、もう外れないの?」
「いや、結局はチェーンが老朽化していると、また外れるでござる。何より、このまま使い続けていると、今度は歯車のギザギザまで削れてしまう。早めにチェーン交換でござるな」
あっという間に直しちゃったユイちゃんは、まるで自転車屋さんみたいだった。
立ち上がったユイちゃんが、得意げに指で鼻をこする。
「ふん。どうでござる?」
「すごいよ。ユイちゃん、プロみたい、な……?」
「どうしたでござる? 拙者の顔に何かついているでござるか?」
「あ、うん。その……油汚れが」
「む?」
ユイちゃんの手は、オイルで真っ黒だった。
それで鼻をこすったものだから、鼻の頭も真っ黒。
せっかくの可愛い顔が台無しになっている。
「あー、まあ、失敗したでござるな」
「ご、ごめんね。私のせいだよね。本当にごめん」
「いやいや。拙者が油断しただけでござるよ。それに、大した問題ではござらぬ」
ユイちゃんは、ニカっと太陽みたいに笑った。
「イア殿の自転車が直って、良かったでござる」
「ユイちゃん……」
私は、そっとユイちゃんの肩を抱くと、自分の身体を寄せていく。
お互いの身体が、ぴったりと吸い寄せられる。
ユイちゃんのあったかさも、柔らかさも、伝わってきた。
彼女の吐息も、私の唇に当たる。
彼女の心臓の鼓動も、私の胸に伝わってくる。
きっと、逆に私のも――
私の鼻が、ユイちゃんの鼻に当たった。
眼鏡が二人の顔の間に挟まって、ちょっと落ちそうになる。
「な、なななななっ!? い、イア殿?」
「えへへー」
ユイちゃんから離れて、自分の鼻を指で擦ってみる。
私の指にも、黒いオイルが付いた。
ってことは、私の鼻にも、それがついたってこと。
「お揃い、だね」
私が自分の顔を指さして言う。
ユイちゃんは一瞬ぽかんと口を開けて、それからクスリと笑った。
「な、なんでござるか。それ」
「うーん。ユイちゃんだけ汚れているの、ちょっと不公平だなぁって思ったから」
「そんな事ないでござろう。それに、びっくりしたでござるよ」
「ビックリしたって、何が?」
唇を押さえるユイちゃんが、何にビックリしたのかは分かってた。
でも、私はあえてとぼけてみる。
ユイちゃんの困った顔が、とっても可愛かったから。
でも、そんな風に口元を覆ったら、今度は唇が汚れちゃうよ。
それも、私がお揃いにしていいのかな?
なーんて……
「冗談だよ」
私は結局、ユイちゃんといつまでも、友達でいたかった。
――――
ご一読ありがとうございました
ご感想など頂けたら幸いです
本作は
『ママチャリだけで無双できる少女。できれば普通に恋がしたい』
のスピンオフです
よろしければ、本編もお楽しみください
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