親の誕生日か・・・
御厨カイト
親の誕生日か・・・
「君、今日が何の日か覚えている?」
「え?」
カレンダーを見ていた妻がいきなり尋ねてくる。
今日は6月30日。
なにか記念日というわけではない。
多分。
「今日ってなんかあったっけ?」
俺がそう尋ねると妻は俺の顔を見て、はぁーとため息をつく。
その様子を見て俺は少し恐怖を覚える。
なんかの記事で見たことがある。
女性というのは何かの記念日を忘れていたらすぐに失望してしまうって。
おいおい、やらかしたか俺。
そう思い俺は恐る恐る妻に訪ねる。
「えっと、今日はなんかの記念日だったっけ?」
「はぁー、君という人は。親の誕生日ぐらい覚えておきなさいよ。」
「あっ」
そうだった、今日はお袋の誕生日だ。
大人になってからあまり連絡してないから忘れていた。
「その様子だと本当に忘れていたみたいね。」
「はい、そうです。」
「本当に君って人は。もう何ぼさっとしているの!早く誕生日プレゼントを買って、訪ねてあげなさい。」
「誕生日プレゼントって何を買って行けばいいかな?」
「そうだね、花でも買ってきてあげたら喜ぶんじゃない。」
「花・・・か。何の花がいいのかな。」
「お義母さんはガーベラが好きだってこの間言っていたわよ。」
「そうなんだ、知らなかった。てかなんでそんなこと知っているの?」
「よく連絡取り合っているからお義母さんと。」
妻はそう言ってスマホを手に持つ。
なるほど、俺の知らないところでコミュニケーションが取れているようだった。
それはそれで安心するが。
「分かった。じゃあちょっと花屋で買ってから実家に寄ってみるわ。」
「そうしてあげて。花屋さんの店員さんに頼んだら花束作ってくれるから。」
「オッケー、じゃあ行ってくる。」
「はい、いってらっしゃい。」
そうして俺は近所にある花屋さんに向かう。
いざついてみるとたくさん花があって迷ってしまう。
ガーベラってどれ?
こりゃダメだ。
そう思った俺はもう店員さんに任せようと思って店員さんにガーベラの花束を作ってもらう。
数分待つと結構大きめの花束を持ってきてくれた。
その大きさに比例して値段も大きかったがその値段に見合う出来だった。
そして、俺はその大きめなガーベラの花束を実家に向かう。
と言っても今俺たちが住んでいる家から実家まで徒歩15分ぐらいだからすぐ着くのだが。
そうして、実家に着く。
チャイムを鳴らすとすぐにお袋が出てきた。
「あれま、どうしたの?あんたがこっちに顔出すなんて珍しい。」
「いや、今日はさ、お袋の誕生日だからさ。ほらこれ。」
俺はそう言って花束をお袋に渡す。
そうするとお袋はパッと目を見開く。
「あんた、覚えていたの。意外だわ。ありがとう、嬉しいわ。」
「あ、ああ、そ、それは良かったよ。」
俺はお袋の純粋のお礼に少し気まずくなってしまっているとお袋はすぐさま俺の異変に気付く。
「うん?あんたもしかして自分の奥さんに言われたから来たわけじゃないわよね。」
「・・・え?そ、そんなわけないじゃん。」
「・・・ホントあんた分かりやすいわね。」
「すいません。」
「まあいいわ、そうだとしても嬉しいわ。ありがとね。てか私たちいつまで玄関先でこんなことしているのかしらね。さ、上がりなさいな。」
「お、おう、ただいま。」
「はい、おかえり。」
そうして、俺は久しぶりの我が家でお袋と今までの近況報告のようなものをする。
一通り話した後、俺はふと思う。
「そういえば、お袋。」
「うん?」
「なんでお袋はガーベラが好きなの?」
「いきなりどうしたの?」
「いや、あまりお袋とそんな話をしてきてなかったからさ、いい機会だと思って。」
「なるほどね。私が何でガーベラが好きか。それはあんたが1番最初にくれたプレゼントがガーベラだったからよ。」
「え?」
「だから、私がガーベラを好きになったのはあんたのおかげなのよ。」
「そう・・だったのか。まさか、そんな理由とは思わなかったな。」
「まあ、あまり言ってこなかったことだからね。だけどあの時のことは今でも覚えているよ。あんたが小さな手で「おかあさんたんじょうびおめでとう」って言ってガーベラの花を1本渡してきてくれたこと。」
「覚えてないな、そんなことあったんだ。」
「あんたが6歳の時だからね。覚えてなくても無理はないよ。まあ、そんな感じかね。」
「なるほど、そうだったのか。」
「そうだ、あんた今日はどうすんだい。なんだったらご飯を一緒に食べないかい?父さんも今日は帰ってくるの早いから。」
「そうだね、久しぶりに一緒に食べようかな。」
「分かった。じゃああんたの分も準備しとくからね。」
そう言うとお袋はキッチンへ向かい食事の準備をする。
俺はスマホを手に取り、妻に電話する。
「もしもし。」
「もしもし、どうだったプレゼント?」
「ちゃんと喜んでくれたよ。」
「それは良かった。それでこれからどうするの?」
「ああ、こっちで食事することになったから君も来てよ。」
「え、いいよ。今日ぐらい家族水入らずで過ごしたら。」
「何言ってんだよ。君も家族の一員だろ。君が来ないと家族がそろわないよ。」
「・・・分かった、今から向かうね。」
「うん待ってる。」
「じゃあ後で。」
「うん。」
そうしてスマホを置いた後、俺はお袋に声をかける。
「お袋!」
「分かってるよ。ちゃんとあの子の分も準備しているから。」
「・・・おお、流石だな。」
数分後、彼女がやってくる。
いつの間に買ったのか手土産も持って。
やはり、嫁はお袋と仲が良いみたいでとても会話が弾んでいるみたいだ。
それから、少しして親父も帰ってくる。
久しぶりの家族での食事。
とても心も体も温まるものだった。
親の誕生日か・・・ 御厨カイト @mikuriya777
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます