浮遊
あちらこちらをさまよっていたり、同じ場所に絶えず留まっていたりする。そういう日々を過ごすと、今日という日には何も残らない訳である。今日もまた、何も得られずに過ぎていくようである。
返らぬ盆に目を向けて、疲弊に続く疲弊の果てである。それでも生きているのだから、生きていかなければなるまい。そうやって浮遊の日々である。得られもしなければ、失う事もない。ただ消えていく日々である。消えていれば良かったと、そう思う時でさえも、やはり存在している自分が、その日々の中を通り抜けている。
ただ地に足を付けて歩いていればよかったものを、こうして生きてきてしまった。まるで頑固であるように同じ事を繰り返し続けている。新しきに怯えているように、同じ事を繰り返し続けている。こうして、書き連ねている。きっと生きているという事は、こういう事ではないのだろう。何かもっと活動的で、躍進的で、得られる物を全て得られる喜びの中なのだろう。ここではない。この、文字の連なりではない筈なのだ。
しかしどうにもここに生きようとしてしまっている。そうして、どこまでも進んでいこうとしてしまっている。その間に幾らでも苦しむであろう自分を想像して、悦に浸っている節まである。そうやって、どこかで他人事のままでいる。幽体離脱かもしれない。自分の姿を俯瞰しているのではなくて、そもそもそこには抜け殻があるのかもしれない。急に倒れてもう二度と動かなくなるのかもしれない。そういう事をここに書いている時点で、そうはいかないのだ。現実を疑う様なものだ。疑われているなら、その分は存在していなければならないのだから、そうして僕はここにいる筈なのだ。
そう考えると、今度はどこにもいない様な気がしてくる。どこにもいられない様な気がしてくる。そうしているうちに、また自分を疑ってみせて、その分また存在し続けている様な気がしてくる。そうやって浮遊している自分の精神がある。剥がれかけている接着剤の様な乾いた感触がある。これを、僕は生きる実感に仕立て上げている。この文章も、きっと同じなんだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます