今日もそこらをさまようばかり
何をしているのか、分からずにいるのです。何を表現しているのか、何を見ているのか、そもそも生きているのか、存在しているのかどうか……分からずにいるのです。そういう思惟のうちには、まだ存在しているのでしょう。なら、それさえ失ったら、僕にはもう何もないのでしょう。そうやって、そこらをさまようばかりです。
いつか、僕はそうしてさまよってばかりでした。いつの間にか、再び意識を持って動いていたのです。それまでは、まるで全てが夢の様にぼやけていて、あるいは夢の中に取り残されていたやもしれません。そうして、現実的な発想は何一つとしてなかったのです。そうやって、そこらをさまようばかりです。
どうしてそうでなくなったのか、よく分かっていないのです。だとすると、実はまだ意識を持って動いてはいなかったのかもしれない。今も夢の中にあって、ただ夢が鮮明になっただけかもしれない。現実的な夢を見て、現実そのものには生きていられていないのかもしれない。そうやって、そこらをさまよっているばかりなのかもしれない。いや、さまよってすらいないのか……深く沈んで、二度と這い上がれない程の落差を得てしまっているのではないか。そうやって、意識はさまようばかりです。
ひとつどころに、僕はいられないのです。絶えず動き続ける事もなく、絶えず留まる事もなく、ただひたすらに変化を求め、しかし変化も中途で止まり、そうなれば後は曖昧な旅路だけが残るのです。曖昧な自己が思惟に浸るのです。ここには、だからまだ誰もいないのです。いたとしても、その事に気づくことはできないのです。そうやって、そこらをさまようばかりです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます