今日もそこらをさまようばかり

 何をしているのか、分からずにいるのです。何を表現しているのか、何を見ているのか、そもそも生きているのか、存在しているのかどうか……分からずにいるのです。そういう思惟のうちには、まだ存在しているのでしょう。なら、それさえ失ったら、僕にはもう何もないのでしょう。そうやって、そこらをさまようばかりです。


 いつか、僕はそうしてさまよってばかりでした。いつの間にか、再び意識を持って動いていたのです。それまでは、まるで全てが夢の様にぼやけていて、あるいは夢の中に取り残されていたやもしれません。そうして、現実的な発想は何一つとしてなかったのです。そうやって、そこらをさまようばかりです。


 どうしてそうでなくなったのか、よく分かっていないのです。だとすると、実はまだ意識を持って動いてはいなかったのかもしれない。今も夢の中にあって、ただ夢が鮮明になっただけかもしれない。現実的な夢を見て、現実そのものには生きていられていないのかもしれない。そうやって、そこらをさまよっているばかりなのかもしれない。いや、さまよってすらいないのか……深く沈んで、二度と這い上がれない程の落差を得てしまっているのではないか。そうやって、意識はさまようばかりです。


 ひとつどころに、僕はいられないのです。絶えず動き続ける事もなく、絶えず留まる事もなく、ただひたすらに変化を求め、しかし変化も中途で止まり、そうなれば後は曖昧な旅路だけが残るのです。曖昧な自己が思惟に浸るのです。ここには、だからまだ誰もいないのです。いたとしても、その事に気づくことはできないのです。そうやって、そこらをさまようばかりです。

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