年ばかり取っていきます

 年が明ける前に、時間を取ることができないかもしれないので、先に伝えておきます。良いお年を。


 そうやって、年ばかり取っていきます。今でさえそうなのですから、より年を取ってしまったなら、最早その実感さえも失ってしまうのでしょう。なら、そこには何が残ってくれるのでしょうか。老いでしょうか。喜ばしい出来事の記憶でしょうか。少額の貯金でしょうか。病の後遺症でしょうか。それとも、結局は何も残らないのでしょうか。どうでもいいことですが。


  それよりも重要な事があるという話ではありません。そうやって未来を憂いていたところで、得られるものなど一つとしてないということです。そんなことをしていたら、鬼だって笑うばかりです。いや、僕としては笑っていてほしいものです。しかし笑われたくはないという一心で、未来を憂う人にはなるまいと思っているのです。そうやって年を取るばかりの、ちっぽけな人間です。


 それでもいいじゃないかと、誰かが言うかもしれません。別に、僕だってそれが嫌だという訳ではありません。僕が嫌に思っているのは、笑われることだけです。だからそこではなくて、ただ失っていくばかりの生を恐怖しているのです。年もそうです。金銭もそうです。記憶だってです。僕は色んなものを、ただ失う為に得てきたようなものなのです。それを恐怖せずして、何を恐怖するというんです?


 そうやって、年を取るばかりの、ちっぽけな人間なのです。逆に言えばそんな人間にでも、年は取れるということです。僕はその気持ち一つで、ここまで生きてきました。これからも、たったそれだけの気持ちで生きていくのだろうと思います。それだけの気持ちで生きていけるようなところを、過ぎていくのだろうと思います。


 生きていたいと思えるだけ、マシな人生なのでしょう。しかし、そんな気持ちで生きていたくはないのです。そのように思って生きていくくらいなら、生きていたくもない人生を過ごしている方がまだ良いです。それだって別に良い生き方ではありませんが、それよりもずっと卑しくて、弱々しくてたまらない生き方を過ごしていくつもりはないということです。しかし大それたこともできません。僕はそうやって、年ばかり取っていく人間なのです。

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