勝手に殺さないでください

 まだ、生きています。ここにいます。誰も信じなかったとしても、確かにここにいます。そうでなければ、何もかも存在してはいないのでしょうから。


 自分が存在しているということは、そうやって些末なことであるのです。どう説明しても大して記憶に残らないような、どうしようもないことなのです。だから、自分で大切にしてやらないといけないのです。そういう、かわいそうな人というのは、どこにでもいると思いませんか?


 思うのなら、どうして悲しんでやらないのですか。思わないのなら、どうして僕の話なんか聞いているんです? 結局、そうやってどこかで間違っている訳じゃないですか。そんなものでしょう。それでいいじゃないですか。自分にそう言ってやれるなら、どうしてかわいそうな人たちにはそう言ってやらないんですか。


 どうでもいいわけでしょう。仕方ないと思っているわけでしょう。それをどうにか正当化して、生きていくしかないのでしょう。僕もそうです。仕方のないことなのです。だったら、せめてちゃんと見捨ててやってくださいよ。忘れてやってくださいよ。どうして中途半端に、この世に縛り付けてしまうのですか。それが執着なら、それは対象のせいになるのですか。全ては自分の弱さなのです。この文章も、この文章に対して感じることも、執着も、かわいそうに思うことも、思わないことも、存在すること、しないことさえも……。




 だからそうやって、勝手に諦めて、何もかも殺してしまおうと思わないでくださいよ。あなた一人ヤケを起こしたってどうにかなるものじゃないんです。あなた一人分だってです! 生きていなきゃならんのです。自分の弱さのためにも、それを克服していくためにも、諦めるためにも、達成するためにも、生きていかなくてはならんのです!


 そして、ついでに僕のことも、少しでも存在させてほしいのです。そうやって、全てのものをそこに存在させているようにしてほしいのです。そして、その全てを受け止められる存在であるようになってほしいのです。だから、勝手に殺さないでください。いる前に、消さないでください。


 僕はそうやって、僕を存在させようとしてきました。今、また少し失敗しました。そうやって失敗続きです。まだ僕には、弱さがたくさん残っているのです。執着が残っているのです。弱さに対してだってです。きっと、消えてしまうまでそのままなのだと思います。そうあってほしくはありませんが、そうあるのだろうとも思います。そうやって、中途半端に生きてきてしまったのです。僕はたくさんのものを見失って生きてきました。あなたがそうならないことを祈っています。もし、もうなってしまっているとしたら、これ以上そうはならないことを。

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