結局どういう文章を読みたいのさ
不透明な要求ばかり寄越してきても、こっちにはどうする事もできないと言っているんだよ! 何なら納得できるんだ。何なら満足するんだ。何なら否定してくれるんだ。何なら肯定してくれるんだ。何なら存在を確認してくれるんだ!?
そうやって逆ギレしていてもしかたない。そんな事は分かっているのだ。見つけてもらえる文章を書かなければ、文学の徒に道はないと。そんな事は分かっているのだ。しかしどうすればいい? 誰も、側を通り過ぎるだけだ。僕の方も、ただ通り過ぎていくだけなのだ。見つけてもらうとかどうとかの話以前に、各々が各々で生きていて、語り合う必要というものは微塵も持ち合わせてはいないのだ。それでどうやって話を聞いてもらえるというんだ。耳が付いているなら、誰でも僕の話を聞き取れるはずなんだ。それでも話を聞いてもらえないのなら、僕の話には何も価値がないのか、それともただの雑音として扱われているか……とにかく、この世には存在していないというのと、何も変わりがないじゃないか!!
僕はどうすればいいんだ。悩まずにただ進んでいけばいいのか。そんな人間が、どこにいるというんだ。皆、結局悩みながら、答えを出そうとしながら、そうやって苦心しながら生きている訳じゃないか。僕はそうせずとも生きていけるとでもいうのか。そんな人間がどこにいる。ここにだっていないのに。
どうして気が狂ってしまわないんだ。どうして正気でいると思い込んでいるんだ。僕はおかしくなっているはずなのに、他者との会話を問題なくこなせてしまっている。僕はどこにいるんだ。どこに辿り着いたんだ。これからどこに向かっていけばいいんだ。どうして異世界ばっかりこの世に飛び出していくんだよ!? どうして冒険を求めるんだよ!? 自分は自分自身の生活を保つので精一杯になって、それでどこかに生きているであろう特別な存在に思いを馳せて……駄目だ! 僕には否定できない。僕だって同じ事をしているんだ。僕に気づいてくれるような、特別な存在を求めているだけなのだから。どちらかと言えば、圧倒的にこちらの方が気持ちの悪い存在なのだ。だから誇示するのだ。誰もこれを褒めなければ、いよいよ価値を失ってしまう、些細な人間なのだ、僕は。
僕はずっと怯えているんだ。何をしていても、題名のように疑問を重ねている愚か者なのだ。なのに歩みを進める無謀者なのだ。ああまたやってしまった! こんな文章を誰が読むんだ!? こんな長ったらしくて、意味不明な、突拍子もない文章を誰が読むというんだ!? だから僕は何度も読み返しているんだ。そうやって存在させようと試みているんだ。だから僕の目の前で腐って、地に還っていく一方だ。誰か助けてやってくれ。僕の文章を地中から引っ張り出して、ただその目に焼き付けてくれ。そんな事は、皆思っている事であるというのに。
ただ存在証明の為に、僕は生きている訳ではない。だから存在証明を追い求めようと躍起になる事ができているのだ。生存に関わる重大な問題なら、こんな悠長に構えてはいられない。通りすがりの人にだって縋り付くだろう。そうでなければ消えてしまうというのなら、僕はその為に世の中を駆けずり回って助けを求めるだろう。そうではないから、こうして世間の端っこの方で、他人に怯えているだけなのだ。ずっと同じような事をしている。ずっと同じような事をしながら、死んでいくような気がする。そして、それさえも何者かに止めさせられるのだと分かっている。なぜか分かっている。それもこれも、自分が行っているからだ……だからこれは初めからずっと、自分のせいだ。
結局、僕はどういう文章を書きたいのだろうか。他者の欲求に合わせたような、自分では納得できていない文章なのだろうか。それとも、誰にも見られないかもしれない、自己満足の大長編なのか。どうであれ、部屋で埃を被っている文章の群れなど誰も読まないという事だ。それだけの事だ。だからこうやって世間に開陳している訳だろう。全く恥ずべき事なのだ。だから僕は恥知らずなのだ。全く恥知らずだ。だから文章の代わりに、僕が部屋で埃を被っているというのに。
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