何もしていないと、召された事にされてしまう

 だからといって、駆られるように表現するというのもいかがなものか。やりたくてやっているのではないのか。それとも、もうやりたくなくなってしまったのだろうか。どうでもいい事だ。どうせ、また始めるのだろう。


 実際のところ、消えたところで誰も気に留めるような真似はしないのだ。一時はそう振る舞ったとしても、やがて忘れていくだけだ。それだけなのだから、つまりは元に戻っていく訳だろう。何事もなかったあの日々に戻っていく訳だろう。そうなのか? そんな事がありえるだろうか?


 誰も彼もが、何事もない平穏な時間を過ごせる訳ではないのだ。そんなのは、僕だけなのかもしれない。それだって、全くのでたらめなのかもしれないというのに、何を見てこの文章を信用しているのだろうか。始めから何もかも、全て嘘っぱちのでたらめで、本当はここに筆者らしき者など、一人もいないのではないか。誰もそこにはいないのではないか。ここに一人いるだけで、それさえも、全くのでたらめなのではないのか。そんなのはいやだ。それだけで、そうならずに済んでくれるものだろうか。


 そうやって、時ばかり経っていくと、何もしていない事になる。何もしていないと認められると、死んだかどうかしたかと思われるだけだ。そうして、忘れ去られていくだけだ。僕はまだ表現を諦めてはいないし、止めてもいない。続けなければならない。続ける意志を示さなければならない。僕はまだここにいて、どこかに辿り着こうとしているのだ。それだけだ。それだけで、どうして存在していると思ってもらえるのだろうか?


 僕はそうして、自分を存在させようと試みているのだから、止められる筈もない。続けなければならない。止めたとて、また始めるだけだ。始めなければならないのだ。僕はそうして、消滅をおそれているだけなのか。それだけの動機なのか。くだらない。さっさと止めてしまえばよかった。執着などするから、こうして苦しむ羽目になるのだ……。




 そうやって、止めてしまったのに、また始めたのだ。僕は一生、そんな人間だ。

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