羅針盤を失った船
ここに連なっていく文章に、何か一つでも意味を付け加えてやれているだろうか。その意味を読み取ってくれるような、そんな人は本当にいるのだろうか。僕は、ここに一人いるだけで、閲覧数も何もかも、全くの幻に過ぎないのではないか。しかし逆に、閲覧数が何万にも増えたとしたら、どこにも誰もいないという考えは、全くの出鱈目だと感じるのだろう。僕はそうやって、自分がいる場所がどんなところなのか分からなくなってしまったのだ。
孤独ではなかった。特別に出会いに恵まれているわけでもなかった。一人ではないが、複数でもない。ここにいると、そう優しく語りかけてくれるような人は、僕が遠ざけたか、見失ってしまったのか……どうであれ、もうどこにもいないかのようだ。きっと、僕のせいだ。そうであってくれ。僕が誰も惹きつけることができなかったから、今こうして一人でいるのだ。いや一人ではないはずだ。しかしどうだろうか。誰も僕の言葉に耳を傾けてはいない。耳を傾けるだけの存在は、とうに消え失せてしまったのではないか。
そうやって、僕は何を伝えるべきか、完全に見失ってしまった。故に、僕は今、これ以上ない程に純粋な感情を抱えているはずだ。何にも影響されない、それだけで存在していられる感情の輝きは、他の何よりも純粋な……痛み、苦しみ、妬み、悲しみ、喜び……僕は今、これ以上ない程に感情に痛めつけられている。向かうところを失った感情が、精神と物理の境目を目前にして、暴力に働きかけているのだ。その壁を越えようとさえしているのだ。
だから今、こうやって文章は連なっている。文章というのはだから、その壁を越えてきた力そのものなのだ。コンクリートにひび割れを生み出すタンポポなのだ。そんなに綺麗なものではないが、しかし輝いている。鈍くも、鋭くも。だから苦しめられているのだ。僕には抱えきれないものだったからだ。だからこうして外側に表出しているのだ。自分というものを律する者は、こうはしない。文学者という者は全て、そのような弱さを抱えていると言えるだろう。誰にも否定はできない。その否定もまた弱さから生じて、表出したものなのだから。
僕はここにいる。それもまた、確かな事ではないのかもしれない。しかしそれだけは信じていなくては。他の全てを確かなものとするよりもまず、自分が確かでなければならない。全てを認識するのは自分だ。自分だけは、曖昧であってはならないのだ。だから自分の弱さは真実だ。閲覧数も真実で、意味を読み取ってくれる人もまた真実であるはずだ。そうでなければ、僕はいよいよ指針を失ってしまうだろう。どこに進んでも、平らな地形がだだっ広く続いているのだろう。そう思う。
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