別に子供でいたいわけじゃないけれど
きっと、大人にはなれないだろう。いくら考えてみても、行動してみても、大人という存在には到底及んでいないように思える。なりたいとも、思えなかった。
大人という存在は、大人にならざるを得なかっただけだ。そうでなければ、責任もあり、仕事という束縛もあり、日々疲労ばかり貯めていくような生活を送るはずなどないだろう。送るとしても本意ではないはずだ。いや、それは決めつけに過ぎないのだが。
それでも、大人がみな大人になろうと生きていたとは思えない。むしろ、そんなものを避けようとさえ思っていた者もいるだろう。そうして、荒波の中であがいてみせたりした後に、結局は大人になった方が楽であると、気づいたのだ。ただ広大なばかりの荒野を進むよりは、重圧の中であっても生活できるような、そんな人物を目指したわけだ。そして、ほんの少しくらいは、実際にそうなれたわけだ。それが人並みの努力であったなら、僕は一生大人にはなれない。僕はどこかで、ずっと子供だ。別に子供でいたいわけじゃないけれど。
泣き喚くのは、きっと子供らしい行為だと思った。大人でもなければ、子供にもなりきれない。そんな中途半端な人間なら、きっと何を伝えようとしても歪みが生じるだろう。なら、この文章を書けるのは今だけだ。後数年……いや十年も経てば、嫌でも僕は大人になっている事だろう。だから、この文章は今だけだ。息苦しく、誰にも見せたくないような弱さは、この時にしか表現できないものだ。そうであってほしいと思うばかりだ。
僕は、大人という存在に期待を寄せてしまっているのだろう。だから大人が特別な能力を持ち合わせた人間のように映っているのだ。でも、そんなのは一握りだ。少なくともそれは僕ではない。心配する必要などないはずだ。どうせ、そんな特別なものに縁などないのだから、普遍的かつ耐えられるだけの苦痛しか背負う事ができないのだから、何を心配しても結局は自分の弱さに過ぎないだろう。耐えられそうにもない自分の貧弱加減を恐れているのなら、どこまでいっても仕方のない事だ。
ああ嫌だ。絶対に嫌だ。子供のままで生きていけるような世の中でもなければ、大人という責任に耐えられる人間でもない。僕には何も足りていない。足りているのは時間だけだ。それさえも、今まさに失い続けているのに!
それもいつかは若さと共に、やがて薄れてしまうだろう。いずれ、そこには何も映らなくなるのだ。その時、僕はただ空虚だ。そうであってほしいのか、そうであってほしくないのか。僕にはそれも分からない。それでも生きていけるような世の中に、僕は衰弱させられている。そうやって、どうにか被害者であろうとするばかりなら、僕は一生を懸けたとしても大人という存在にはなれないだろう。
責任に足る人間にならなければいけない。それは、責任に欠けている人間の言葉なのだ。僕はまだ、欠けた人間だ。
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