お気楽にいこう

 まあ、何か言いたい事がある訳ではないんだ。いつもそうだけど。




 僕という人は、何かにつけて思い悩むところがある。今回は、そういうものを全部取っ払ってしまおうと思った。何か哲学的な思索しさくふけるのもいいが、結局のところ、そんなものは何の役にも立ちはしないのだ。だから、心の底からそのヘドロのような悩みを全部引きずり出して、排水溝にでも流し込んでやろうと。


 そうやって、排水溝の前にまで来たのはよかった。その先がまずかった。始めに、喉の奥に腕を突っ込んで、そのまま吐き出そうと思っていた。できなかった。何か、僕の行動を拒んでいるものがあった。本能だ。悩みを全部放り投げてしまうのは、やがて大きな問題を引き起こすと、誰かにそう言い聞かせられていたのかもしれない。


 とにかく、結局僕は何もできないまま家に帰った。そうしてこの文章を書いている。まあいいじゃないか。そんな気持ちでいる。今にも吐き出しそうだ。笑顔だ。心の奥から憤怒ふんぬが湧き出てくるようだ。僕は今、ここにいるのに、ここにいてはならない気分だ。


 だから、ここにいさせる理由が必要なのだ。苦悩から、自分を引き離す事はできなかった。始めからずっとそうだ。引き離そうとしてばかりで、肝心の苦悩から目を背けているのだから、そりゃ離れられないだろう。当たり前だ。だから言いたい事はなかったけれど、言いたいという衝動は絶えず残っていた。何日経とうと、例え昏睡状態に陥って、リハビリが必要な程に筋力が衰えたとしても、それでもやがてはパソコンの前に座って、何か伝えようと文字を連ねるだろうと、そういう事だ。伝えたかった事はそういう事だ。




 あれ?

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