ハートマーク一つでは、何も変えられない。

 嫌悪している訳ではない。ただ、僕は躊躇ちゅうちょしているのだ。本当にこんなハート一つで何か変えられるものがあるのか? 星だってそうだ。レストランを評価するみたいに付けたって、一体何が作者の為になるっていうんだ。


 そうやって考えているなら、どうして無反応を徹底しないんだ。これはそういう話だ。期待をかけるような真似をして、人の為になるような事をした気になって、そうやって悦に浸っている自分の姿が気に入らないだけだ。『他者であれば、そんなケチは付けない。』僕は自分の弱さが気に入らないのだ。


 そして、ハートマークを投げつけて、何が変わってくれるのだろうと思っているのだ。僕には何も変えられないのだから。僕には、あなたの苦労を代わりに被る事もできないし、あなたの痛みを肩代わりする事もできない。給料を増やす事だってできない。僕はただ、黙って文章を眺めているだけなのだから。


 だから僕は僕の事が嫌いだ。他の誰よりも嫌いだ。他の誰よりも、何よりも自分を知っているからだ。僕はあなたの事をろくに知らない。だから、こうやって自分の事ばかりだ。僕はいつもこうだ。こうやって、自分を苦しめるばかりだ……。


 ハートマーク一つで、変えられるものがあるのなら、いくらでも変えてみせようと思った。昨日も思っていた。一昨日も思っていた。あるいは、ハートマークなんて見つけていなかった時からずっと……同じように朗らかに励まそうと思っていた。それもこれも全て、うじうじしている自分の姿が気に食わないからだ。それなら間違った事をして、人に迷惑をかける方がまだマシだと思ったのだ。僕はそうやって間違ってきた。これからも間違うだろう。


 そうやって悩み苦しむ時、ハートマークは何も変えられない。僕は、まるでゲーム上の能力のように、増加していく数字を生み出す事しかできない。そんなものは、現実世界に生きる人間の問題を何一つとして解決してはくれないのだ。それでもハートを増やすのだとしたら、それはもう損得勘定ではないのだと、そう思う。

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