それでも、旅は続く

 そんな言葉が、昔やったフリーゲームの中にあった気がする。世界の謎、その全てを解き明かすまで! なんていう言葉が続いて、物語世界を旅する三人組の姿が世界のどこかにあった様な気がしている。そして、世界の存続を左右するとんでもない事件が起きてしまって……それをどうにか解決しようと決心する一人の主人公がいたような気がする。


 そして僕は、その様をモニター越しに眺めるだけなのだ。その間、僕はひとりだ。外で雪が降っているというのに、僕は部屋の中で、ストーブの発する熱気に晒されながら、たった一人で物語と対峙する時間を過ごしていた。それは確かに覚えている。そのまま、働きにも出ず、要求だけが肥大化して、特に何も成す事のできないまま、家を追い出されるのだとばかり思っていた。


 結論としては、そうはならなかった。だが、それが幸せだったのかは分からない。初めから叶わない夢であれば諦めもつく。僕は孤独を避けようとして、作家志望という、茨の道を進んでいるだけなのではないか。社会に進出していく事を拒んで、それなのに社会に認められる事を望んでいるなのではないか。だとしても、結局は進んでいくしかない。辿り着く為には、進まなくてはならない。


 そうやって辿り着こうとしているばかりだ。だから根本的には、いずれ家を追い出される無法者と変わらないだろう。それでも、その様な人間とは違うと、どうにか認識してもらおうと根拠を探しているのだろう。それが、生きようと試みる人の姿なのだと思う。例え自分の思う様には生きられなくとも、それでも自由意志の名の下に、人生を生き抜こうとする姿なのだと思う。


 そんな風に、僕も生きているつもりだ。あなたがそうしているように、僕もそうしているつもりだ。そうやって、そのうちに、かりそめの現実に飲み込まれて消えていくだけなのかもしれないが。

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