続ける自分と、途方もない空間

 自分の声が、どこまでも薄れていくのを感じる。今はそんな気分だ。誰にも聞かれず、誰にも伝わらず、ただ消えていくだけの言葉が、僕の心から飛んでいって、どこかにたどりつこうとしているのだ。そして、そうはならないと。


 だけど生きている。だから生きている。よく分からない。ただ生きているだけなのかもしれない。間違いなく分かっている事は、少しずつ老いている事だけだ。後の全ては自分だって分からないのだ。自分が決断している事さえもだ。カクヨムとやらに生き恥を晒し始めたのもそうだ。それだって、そういう風に思われる様な行動ではないかもしれないというのに。


 伝えたい事があると思っていた。嫉妬しっとでも、苦悶くもんでも、他者を傷つける様な退廃的たいはいてきな言葉でも、伝えようと思えば伝えられるものだと思っていた。僕には、その様な気持ちがどうしようもなく生じてこないと、その様に確認する為に、一か月以上もかけてしまったのだ。自慢にもならないが、僕にはほとんど向上心が湧いてこない。だから、先ほど述べた様な手段を用いて、他者に対して煩悩の群れを差し向ける事が理解できない。された覚えもない。だから、そういったものは表現できないだろうと、今はそう思っている。


 僕は、あなたに存在していてほしいと思っている。そうでなければ僕は、自分という存在だけでは、自分を認識できないと、そういう事だ。何を言っているか分からないかもしれない。だが僕は、いつもよく分からない事を言っているだろう。だから、理解できる言葉への翻訳とかはしない。途方もない空間の中で、僕みたいに悩んでいるといい。そうやって、自分を続けているといい。たったそれだけの言葉が、どうにも誰にも伝わらず、ただ消えていくと、そういう事だ。

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