カクヨムとかいう別世界

 「注目の作品」とかいう題名と共に、いくつかの作品が展示されているのを、これまで何度も見てきた。そしてそうではない作品が、中心核の方から湧き出てきているのも見てきた。僕はもっぱら、その中心核の方から湧き出て、せいぜい外殻に潜り込むくらいだ。いや、それだって底よりは高い所ではあるのだが。


 応援数どころか、まともに閲覧すらされていなさそうな作品が、中にはあった。僕に言えた事ではないが、それらは廃村の様相を呈していて、僕は間違ってそこに降り立ってしまったと思わされるばかりなのだ。そして、僕もそう思われているだろうと感じていた。僕はその様な作品を見て、何も言えなかった。僕は、彼か彼女か、はたまた別の感覚か、とにかくそこにいるであろう表現者に対して、適切な言葉を思いつくことができなかった。僕はどうにかそこから逃げようとして、今この文章を連ねている。


 書籍化、何々賞受賞、だなんて銘打たれた作品もあった。それらの作品は、絶対的に閲覧数が多いことを示しているのだろう。応援数は優に三桁を超えるものばかりで、コメントも多数寄せられていた。そこにはただ人が集まっていた。だから、そこが賑わって、それが火花を空に掲げてまた人を集めて、そうしてまた賑わっていく……まるでハチ公像のように、待ち合わせ場所の目印のように用いられているその作品群は、僕を待ってはいないようだった。


 僕はここで一人取り残されている。世界の端っこの方で、露を飲みながらひっそりと生きながらえている。そして、まるで隠者のように、ただ書き連ねていくのだ。評価を必要とせず、しかし訪れる旅人は拒まず、その間もただ書き連ねていくのだ。そうでなければどうにかなりそうだった。いや、もうどうにかなってしまっているのだろう。そう思う。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る