それでも、歩いていけるものなら

 ここで進むことを許されたから、進んでいるのではないのだ。むしろ禁止されてしかるべきだ。人生における貴重な日々を、こんな文章につぎ込むような贅沢をするなんて、若さというものをまるで理解していないと!


 だからといって、他にできることがある訳でもないのだ。だから、こうして文章を連ねて……それが価値のある行動だと思い込んでいるばかりだ。誰か、誰でもいいから、僕のやっていることを否定してくれ! そうでなければ、僕は正しいことをしていると勘違いしてしまう! 否定できないものなら、肯定してくれ。そうして、僕を神輿に担いで乱暴に地面と衝突させるのだ。そうでもなければ、僕はどうしていればいいんだ!?


 僕では、書き連ねる自分を否定することも、肯定することもできない。どちらも僕の望むところではないのだ。そんな風に自分を慰めるくらいなら、社会に揉まれて散々になって、それでも何とか生きていくと決断する方が、その方がずっとマシってものだ。そうじゃなければ消え失せていくだけだ。世界の端っこの、誰も訪れないところで干からびていくだけだ。そうではないか。そうではないのか? それとも、手前には露でも飲んで生きながらえているのがお似合いだっていうのか。その通りだ。


 僕は、そんな風に片づけられてしかるべき存在なのだ。学はない。愛嬌だってあったものではない。人に気に入られようと特別努力した訳でもない。それでどうして愛されるのだ! それでどうして人に好かれるような人間になれるのだ! そうやって、どうにかして嫌われようとしているのだ。それもこれも、この世の悪意を全てを自分に向けさせる為だ。それがどうだ。人に知られることさえ失敗している始末だ。嫌われることさえできなかったら、僕には何ができるというのだ。消え失せることか。まだ存在すらしていないというのに?


 そうやって、辺り構わず騒いでいられるのも今のうちだろう。結局、今の僕もそれなりに「特別」を抱えて生きているのだ。それがもたらすものがろくでもないだけで、何ももたらされていない訳ではない。僕はこれを幸福と思わなければ。他者に嫌われることさえない……それほどまでに認知されていない自分でも、それでも、歩いていけるものなら。

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