第118話 大団円

 カージノ大陸が地球に現れて既に一年半が経過した。


 JLJは対カージノの事業を一手に引き受け既に世界最大の資産価値を持つ企業へと成長した。

 JLJ以外の世界中の企業は、JLJとの合弁事業を立ち上げることが最大の目標となっている。

 特に重要な事業はエネルギー関係である。


 イスラム原理主義国が存在した場所から端を発したモンスターの出現に関しては、世界中の化石燃料採掘地を中心に広がり、海でもメタンハイドレードの堆積地を中心にモンスターが現れる状況になっていた。


 そして一定量以上の化石燃料や放射性物質を抱えていた地域はダンジョン化現象を起こしている。


 世界ハンターギルド本部は『パーフェクトディフェンダーズ』社が中心となり超国家の民間組織運営の魔石燃料収集組織として急成長をしている。

 勿論ここにもJLJは外部筆頭株主として参加している。

 旧イスラム原理主義国が主権を主張していた地域を広範囲で取得し、ここに本部を構えた。

 ギルドマスターにはアンドレ隊長がカージノから呼びもどされて就任している。

 サブマスターはミッシェルだ。


 ギルド本部のアンドレ隊長の部屋にはギャンブリーの街の屋敷と繋ぐ転移の扉が設置してあり、大規模なモンスターの発生にはカージノの冒険者ギルドに救援を要請したりも行う。


 俺もこの一年半はめちゃ忙しく過ごした。

 特に魔道具関係の生産が一人ではとても追いつかなくなったので、カージノの魔道具職人を大量雇用したりして対処をした。


 夢幻さんのビーチスポーツ振興事業も順調に進展し既にビーチ競馬は開催が始まっている。

 世界中に向けて販売されるスポーツ振興くじも1レースの売り上げが日本の中央競馬の十倍を楽に超える規模で、それに出場する選手たちも含めて幸せになっている。


 ちょっと意外だったのは、フラワーとフローラの二人なんだけど脚質が力のいるビーチの馬場にとても向いていたようで、連勝街道をひた走っている。

 高額な賞金を手にしていつでも自分を買い戻せるのに、競争に出るとき以外は相変わらずのメイド服で俺たちの世話を焼いてくれる。


 藤崎さんの進めているカージノビーチリゾート事業も既に世界最大のリゾートとしてカージノの海岸線が活用されている。

 世界中からビーチリゾートに建てられていたホテルを買収し、百件以上のホテルが並び建ち、それぞれのホテルが元々建っていた環境を再現した街並みは、訪れる人々の心を掴む。


 勿論、大崎さんが担当してくれた港湾と空港の整備も整っていている。

 日本とカージノを結ぶ豪華客船『ダービーキングダム』は世界中のセレブが予約を入れてきており、予約が二年先までいっぱいの状況だ。


 航空機も魔道ジェットエンジンに載せ替えられたことにより安定した運行を行えている。


 自動車産業においてもJLJから提供される魔道エンジンが親カージノ王国の各国においてはほぼ行きわたり、予想されたような混乱はおこらなかった。


 反カージノを掲げた国へは基本的にカージノからの魔道具は一切流通させないために困窮を極めている。


 カージノ関連での商売を成功させるために必須になるのは、カージノ語の習得である。

 ホタルが監修したカージノ語の吹き替えアニメが世界中で人気になったが、これに関しては販売はせずにネットで無料視聴できる形である。


 家電品の流通が始まったカージノ国内ではテレビとDVDプレーヤーが人気になっていて、白ラベルで流通するBLアニメの海賊版が社会問題になりつつある。


 こんな社会になったが色々な検証が大好きな日本のマスコミが、モンスターを倒して手に入れることが出来るお告げカードによる神様の格付けを企画して実際に様々な宗教の支配地域で、手に入ったカードのスキルデータを集めた結果、ランク三に該当するスキル以上の出現が確認できておらず、その効果もカージノ王国と比べ効果が低いことが取りざたされた。


 しかもカージノ王国ではスキルが購入できるが、これはあくまでもオグリーヌの加護を受けた人間が女神神殿に行った場合にしか購入できないことも判明した。


 これではカージノ以外の冒険者が強くなれる要素が低く魔石の獲得に関しても需要に供給が追い付かなくなってしまう。

 そこで起死回生の手段が打たれた。


「先輩、そろそろ諦めてください」

「マジかよホタル。でも俺だけは絶対に嫌だからな」


「大丈夫ですって夢幻さんプロデュースの立派な勇者物語が聖書となってますから! 勇者が二人の聖女と剣神、それに美しい姉妹の眷属を連れて世界をモンスターから救う物語です。これがギルド本部のある場所のダンジョンから発掘されるんです。私がスキルを乗せて書き記しますから世界中の人が読める不思議な本です。絶対信じるでしょ?」


「それって……俺がホタルと夢幻さんと東雲さんと藤崎さん姉妹連れてモンスター討伐する話だろ? モンスター討伐の合間に不治の病を癒したりしながら世界中を回って行くっていう」

「まぁそうですけど、ぱっと見で私たちだって分からない名前になってますし、衣装とかも勇者パーティっぽい設定で白亜の石像も一緒に発掘されるんですよ」


「で、それを広めるために使う対象がシールズのメンバーなのか?」

「そうです! バーン大佐から許可もとってますから大丈夫です。石造と聖書をダンジョンの奥深くで発見したシールズのメンバーが、ダンジョンマスタークラスのモンスターに襲われた所をその石造から現れた石造そっくりのパーティーによって助けられ、怪我を癒され、また石造の中に消えていくんです。そしてその石造に感謝の祈りをささげた途端に、祈りをささげた隊員に新たなスキルが芽生えるんです。それを見たほかの隊員も次々に祈りを捧げスキルを獲得するんです。報告を受けたバーン大佐がエスト伯爵に頼み、石造をギルド本部に設置してもらい、それに祈りをささげた人々に新たな能力が芽生える! どうです? ここまでいけば新たな宗教が誕生でしょ?」


「聖地はギルド本部で、ミッシェルとかアンドレ隊長とかいるんだよな? 絶対爆笑されそうだな」


「で、ですね。スキルの売買なんですけど、これは普通の従業員にさせるわけにはいかないですから、友里恵さんを責任者にして、後はエルフや獣人女性の奴隷を夢幻さん方式で救って担当してもらいましょう。先輩を信仰した人なら先輩が提供するスキルは身につけることが出来ますから」

「うーん、ホタルちょっと聞いていいか? そんな話をする時のホタルって意識を誘導されたりしてる」


「えっ? 何を言ってるんですか先輩、誘導なんかされてないですよ。オグリーヌ様と話して、自分で判断してます」

「えっ? オグリーヌと話してるのか?」


「私、先輩の眷属ですけどSランクだから普通に部屋には入れるでしょ? それで一度一人で行った時にオグリーヌ様が出てきて色々話したんです。おかげでずっとモヤッとしてた物が綺麗に晴れちゃった感じですね」

「そうなんだ、それを聞いてどう思った?」


「先輩のことをですか?」

「うん……」


「今まで通りでいいんじゃないでしょうか。神様とその眷属ですからきっと私たちの寿命とかヤバい事なってますって、ゆっくり気長に考えましょう百年くらいかけて」

「そっか」



~WIN5で六億円馬券当てちゃった俺がいろいろ巻き込まれた結果現代社会で無双する!~    ―完―



◇◆◇◆



あとがき


長い間お付き合いいただきありがとうございます。

また次回作でお会いできることを楽しみにしております。 TB

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