第2話 お墓参り
椿と蕾は、山道を歩いていた。山に入りある程度歩いた所に、母親のお墓がある。
山道には木々が生えており、木漏れ日を背景に小鳥の囀りが聞こえる。
蕾はわらべうたを歌いながら、椿と一緒に歩いていた。
「お姉たん、鳥さんの鳴き声が聞こえるね」
無邪気に蕾は言った。
「ふふ、そうね。鳴き声が心地良いわね」
木の枝にとまる小鳥を見上げながら、椿は言った。
母親の墓石が見えてきた。周囲の墓は、苔が生えており薄汚れていた。
椿は桶に汲んだ水を墓石にかけ、花を供えた。
線香に火をつけ、墓石の前に置いた。
椿は目を瞑り、両手を合わせた。それを見た蕾も、真似をして手を合わせた。
(お母さん…蕾は立派に成長しています。心配しないでね?)
死んだ母親も、蕾のことがきっと気がかりだろう。そう心の中で呟いた。
「お姉たん、蕾ね、蕾は元気だよってお母たんに言ったよ?」
「…そう。お母さんもきっと安心してるわね」
優しく微笑むと、椿は蕾の頭を撫でた。
夕暮れ時、二人は家に着いた。
家の中は薄暗く、おばあちゃんは横になっている。
「おばあちゃん、ただいま。お墓参りに行ってきたよ」
おばあちゃんは返事をしない。
「…おばあちゃん?」
横たわるおばあちゃんに寄っていくと、椿はおばあちゃんの体を揺さぶった。
おばあちゃんの肌は、冷たくなっている。
(…嘘でしょ?…まさか)
椿はおばあちゃんの胸に耳を当てた。…心臓の音が聞こえない。
(嘘…おばあちゃんが…おばあちゃんが…)
椿は呆然とした。ぺたりと、その場に座り込んだ。
蕾は不思議そうに姉を見つめている。
(おばあちゃんが、死んだ…)
紅蓮の花 月野由美 @tukinomeg
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