第1話 椿と蕾とおばあちゃん

椿と蕾は、外で一緒に遊んでいた。鞠をつく遊びだ。

「お姉たん、鞠お上手だね」

「うふふ、そう?蕾もお上手よ」


椿の漆黒のおかっぱ髪が、風で揺れた。小豆色の着物の裾も揺れた。


蕾のお団子頭を、椿はそっと撫でる。

蕾はまだ5歳だ。椿は15歳なので、椿が10歳の時に生まれた。母親が亡くなったのも、椿が10歳の頃だ。

父親も、侍に誤って切られて、殺された。確か、椿が11歳の頃か。今は、椿と蕾、そしておばあちゃんと一緒に暮らしている。


「蕾は可愛いわね。お母さんそっくりよ」

「お母たんに?」

「うん」


椿は微笑んだ。

椿は母親の忘れ形見とも言える蕾を、大層大事にし、可愛がっていた。蕾も、そんな姉の椿を慕っていた。


「椿、蕾、お昼ご飯ができたよ」

少し掠れた声で、おばあちゃんが家の戸を開けて顔を出し、言った。


「はーい、じゃ、お昼食べましょう。蕾、お腹空いたわね」

「うん」


二人は家に戻っていった。

おばあちゃんは、優しくて椿は好きだった。おばあちゃんは美影の母親で、美影が死んだ時、

「こんなに可愛い自分の子供を残して死ぬなんて…美影は酷い親だよ」


そんなことを漏らしていた。


おばあちゃんは両親のいない二人を、大事に育てていた。幼くして両親を亡くした二人に、同情していたのだ。


明日は母親の五回忌だ。椿と蕾は母親のお墓参りに行く予定だ。

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