第67話 番外編(穏やかな朝)
朝目が覚めるとレスター様はいつも片肘をついて私を見つめている。
「レスター様…あまり見ないで下さい…」
「何故だ?夫の特権だぞ…」
「恥ずかしいのです…」
シーツで顔を隠すと、レスター様は私の顔を隠さないでくれと、微笑気味で捲ってくる。
「結婚してもミュスカは初々しいな…本当に可愛い…」
「…っんん」
恥ずかしがる私をよそにレスター様の迫り具合は変わらない。
朝から何度口付けをするのか。
夫婦になってから毎夜私を離さないレスター様に、私達夫婦は仲睦まじい夫婦と邸中の評判だ。
そして、街中にもそれが広がりつつある。
領地を視察したり回るのも二人で行くことが多いからだ。
そして、今日もレスター様と朝食をご一緒していた。
結婚してから、メイドだったアンナが侍女になってくれて、朝食もベッドに運ばれるようになったけど、私がレスター様と一緒に摂りたくて、朝食は二階のサロンに準備されるようになっていたのだ。
一緒に和やかに朝食を摂っていると、アランさんがいつも通り手紙をトレイに乗せてレスター様に出した。
手紙を見ると、笑顔だったレスター様の顔が歪む。
「レスター様?悪い知らせですか?」
「…シャーロット・バクスターからだ」
またですか…。
シャーロット様は幽閉される直前に大聖女様がご褒美だと、レスター様に会わせたせいか、浄化作業を頑張ればご褒美にレスター様に会わせてもらえると思っているようで、時々手紙が届いていた。
「アラン!手紙は燃やせ!不吉だ!」
「お返事は良いのですか?大聖女様を介した手紙ですが…」
「なら、ミュスカと結婚して幸せですと、書いて送れ!」
「畏まりました」
そして、今日もシャーロット様の手紙はボイラーの焚き付けにされるんだろうなと思う。
「ミュスカ、朝食の後は庭を歩こうか?」
「はい…でも少しですよ。今日はアップルパイを作るんです」
「では、アップルパイは庭の家でゆっくり頂こう」
「はい…」
そして、今日も穏やかな1日が始まっていた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━
いつもお読み下さりありがとうございます!
新作【呪われた令嬢はヘルハウスに嫁ぎます。】もよろしくお願いいたしますm(_ _)m
【書籍化】金貨一枚貸したら辺境伯様に捕まりました。金貨一枚でお邸に住めるなんておかしくないですか? 屋月 トム伽 @yazukitomuka
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます