第36話
僕の目の前をマイムが風のように駆けて行く。鮫に似た
「くっ!」
大口を開けて突っ込んできた
体勢を立て直そうとした僕のすぐそばで咆哮がする。僕に向かってきていた
と思った瞬間、腹に響く銃声と共にその
「油断禁もーつ!」
二匹の
「助かった!」
壁にぶつかって動きが止まった
「よし、いける! スキル・スワイプ」
中剣が邪魔だ。前方に向かって放り投げる。追いかけるように駆けだしながら、ダイバーズウォッチに指を走らせる。
「【電光――」
左拳に纏わりついたバチバチと音が聞こえてきそうな黄金色の光を胸に叩きこむ。
「――石火】!!」
薄暗い深海の世界に潜り込んだ。僕以外の全ての動きがスローモーションのように感じる。放り投げていた中剣を、追いついてそのままキャッチする。
通路を駆け抜ける。鮫の
「そうは――」
中剣を大きく振りかぶりながら、
「――いくかぁ!」
中剣が
「あれれれれいたたたたたたー!?」
ゴロゴロと通路を転がる。あまりの痛みに【電光石火】のスキルも解除される。
「痛い……顔をやすり掛けしてしまった……あ、そうだ! マイムは無事か!?」
涙目で立ち上がる。マイムの様子を確認する為に通路を振り返った。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「おっとっと」
跳ねるようにボブカットが舞う。およそ緊張感が感じられない声をだしつつも、その赤い瞳は
「チェシャ、まだー? そろそろ良くない? 攻撃よけるのアタシきつくなってきたんだけど」
『後20タクルかかる』
「わー、本当かー。チェシャ、仕事サボってない?」
『マイムラゼリアゼルテローシャが無駄弾使ったのが悪いのでは』
「む、あれは無駄弾ではありませんー。援護ですー、必要弾と呼びなさいよ」
何やら右手のダイバーズウォッチと言い合いしてるような感じがするんですが。気のせいかな?
そんなこんなで二十秒過ぎただろうか、マイムのダイバーズウォッチから声がした。
『充填完了。マイムラゼリアゼルテローシャ、発砲を許可する』
「許可されました!」
そのとたんマイムの動きが変わった。今まで
「んー?」
怪訝に思っていると、マイムの動きが止まった。二匹の
「まずい!」
『トオル、大丈夫です』
思わず駆け付けようとした僕をシリエルさんの声が止める。マイムの右手が動いた。軽く握った銃のような、いやそれは正しく銃なのだろう、武器から腹に響くドンという音とともに赤い閃光が走り、二匹の
圧倒的な威力だったのか、二匹の
迷宮の住人~有能すぎるのは僕ではなく支援精霊だった~ 千原良継 @chihara
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。迷宮の住人~有能すぎるのは僕ではなく支援精霊だった~の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます