第十六節

先読みにより、使われる前に使った。

「オブジェット起動!」

ゼッケンについた星のマークを触りながら、そう言った。

「おお〜」

「奨もできるぞ」

「おっしゃ」

「翼崎さんは俺の後ろに! 3秒後に投げます。」

「1...2」

そう言いながら投げた。

「3秒経ってないじゃん!?」

「間に合っているのはわかってたから...」

相手チームに向かって下投げしつつ、もう一度

「オブジェット起動」

次は空中

「奨は飛びながらお願い」

「翼崎さんは...奨が怪我した時のために待機」

「おい、あいつ空気に向かって話してるのか?」

「見えちゃう系男子なのかもな」

逃げ惑いながらそう言ってくる人に向かって、追い討ちをかけるように突進した。

背中に意識を集中させ、あたかも羽が生えたかのような感覚になりながら

「オブジェット展開」

低空飛行しながら詰め寄り相手の弾丸は避けつつオブジェット展開の前に倒した。

1試合で使えるオブジェット数は5つ。今3回使用しているからあと2回分が残っているわけだ。

ここまではよかった。

だが次の瞬間、蜂の巣状態になることがわかった。

少し目の前に集中しすぎて、左目を開いていたのだろう。再び閉じると目の前がBB弾でいっぱいだった。

「あ...」

一か八か相殺するしかない...

「オブジェット2重展開。」

手にしたBB弾の爆弾擬きと飛行を組み合わせて操縦可能にした。

オブジェットを使う際に感じた使い方の一つだ。

「オブジェット起動!」

相手の赤と青のゼッケンをひた人たちが一斉に発し、放ってきた。

ただ、その流れ弾で赤ゼッケンも青ゼッケン同士の争いも再燃したのだろう。

一斉起動されるも、こちらに投げられたのは5つだった

そのうち三つはこちらが操縦したオブジェットを使い相殺した。

残り二つと...流れ弾分耐えれれば生き残れる...

流石に操縦も右目だけとはいけず、左目を閉じれなかった。

「ダメージ過多。死亡判定。」

「あ〜終わっちゃった」

奥で銃弾の音が聞こえるも諦めて両目を閉じた。

「図書カード..欲しかったなざ」

空気を読んだか読んでないのかわからないが

『残り残機数1。総ダメージ量過多分を差し引きあと銃弾一発分で死亡判定』

と表示されたのに気づいた。

『5秒後に戦闘状態に戻ります』

5秒あれば十分だった。左目を使い、安全かつ迅速に翼崎さんと奨に合流し遮蔽物の多い地帯に戻る。そこまでは把握した。

「翼崎さん。ほんとは残機くれてたんだね」

「やっぱり少年漫画みたいな展開になったわね」

フフフと笑う翼崎さん。

「え?読むんだ!?」

「まね〜。はい、回復キット使ったわ。あと私も2回しか回復できないからね?」

今度歴レグ紹介しようかな...

「奨はどうしたい?」

「面白そうだからお前らについてくわ。あ、邪魔だったか?」

「ノーコメント」

「で、どうすんの?」

「どうも、集中砲火されると流石に死ぬので遮蔽物地帯に戻りたいかな」

「それは誰でも死ぬやろ」

「でも、こんなにできたゲームなら対策方法もある気がするんだよね〜」

そんなこんなで道中5、6人倒しながら扉の前まで戻ってきた。

「扉の前にはいないのな」

「裏に入るよ?」

「まじ?」

「まぁちょっとカッコつけてくる」

最近ハマりのうる覚え処刑用BGMを脳内再生しつつ扉を開けた。

決して弾の装填速度は早くないが、相手の弾は撃たれる前に反射的によけれるので、奥のスナイパー以外の4人を倒せた。スナイパーが一旦身を潜めたのを機に合流。

「おおぉ〜」

じゃあ次は俺だな

「ん?」

オブジェットを解除した奨は駆け出した。

「左目も開いて見てろよ〜」

そう言って先ほどスナイパーが居たであろう方向に行ってしまった。

「行っちゃったね」

「行っちゃったな」

それから少しして断末魔が聞こえた。

「うわっああああ」

「忍者かよ」

「と..飛んでるっ!?」

どうやら扉の外では空を飛んでる人がいなかったようだ。

「は〜っすきりした。」

「お前すごいな..」

俺は左目使ってるにしても、奨はオブジェットの身で倒しに行ってしまった。

「これからどうするよ」

「ねぇ樹」

「なんだ?」

「クラスの仇討ちしたらMVP取れるかもよ?」

「そんな手が...どうやって?」

「開始早々にやられたし、さっきの子達も3組だったから...3組を倒すとか?」

「なるほどな」

「そうと決まれば行くしかないな」

「だね」

「なぁ樹」

「ん?」

「どっちがMVP取れるか競いたくなったって言ったらどうする?」

「...いいと思う」

「なにその漫画みたいな展開!?いいじゃん!」

「おっ翼崎さんも乗り気か?」

「そうね..だったら私は樹くんと一緒に行動かな」

「まぁ妥当か」

ここでかっこいいところ見せたいな...

「地上階攻略はどうする?」

「忘れてたわ」

「地上もあるんだ!?」

「じゃあ俺が地上攻略、樹が3階でどうだ?」

「いいけど..」

「じゃ..解散!」

残り時間30分弱。色々あったけど1、2組と交戦したことで結構掴めてきた。

「そういや1、2組女子いなかったな」

「え〜なになに?気になる子でも探してた?」

「探したのは翼崎さんだけなんだけどな...」

あと、三藤もか

「そ..そう...」

「おう」

「1、2組の子達ならあえて退場したんじゃない?」

「なんかもったいなくね?」

「1、2組で結託してたし、さっき透明化してる時に男子たちがそんんこと言ってたから多分あってはいると思うけど..」

あえて2つの組み同士で与ダメージ量を3、4組と差をつけることで優勝争いを絞ったのかもな...

「階段についたけど少し休む?」

「ん〜いいかな。なんか疲れないのよね」

「このゼッケンのおかげかもね」

「すごいわね」

「一応確認なんだけど、透明化回復キットって同時に使えるの?」

「ちょっと待ってね」

そう言って取説を確認した彼女。

「使えるみたいね」

「おっけ〜。それと、手握ってもらってもいい?」

「いいけど..なんで?」

「おまじない」

あと少しで戦闘開始だし透明化しているとは言っても弾ひとつ当てさせたくないからな...

「ちょっと何言ってるのかわからないわ。ま...いいよ」

そう言って手を握ってくれた

「ん。さんきゅ」

っしゃアアアアア。いけないいけない、柄にもなく取り乱してしまった。

「じゃあ透明化しておいてね」

「わかったわ」

見つかる前に3発発砲。

「どこからだ?」

追加で6発発砲し1対1に持ち込んだ。

「おっ土田くんじゃん」

え?誰?

「あーうん。どうも」

そう言って左ポケットに入れてた弾を投げつけた。

「その技うちのクラスの必殺なのに!?」

「それ言っちゃうの?」

「あ」

相手の球をいつも通り避けつつ1発撃ったことで勝利。

「翼崎さんは..少し先にある右のダンボールの影のところに行って欲しいかな」

「あいよ〜」

どうやら次の戦闘が3組との本戦のようだ。スナイパーの弾を避けつつオブジェット対策を考えたが思いつかなかった。

「やるだけやるか」

出し惜しみしていられなさそうなので左ポッケの入った残りの弾丸を撒き散らしつつ発砲。

オブジェットの弾も遮蔽物で避けつつ翼崎さんとは反対の左側で右ポケットに入った沢山のBB弾を複数回投げた。

途中でオブジェットの反射した弾が当たってしまったが気がつくと3対1だった。

スナイパーに警戒しつつ翼崎さんのいるであろうもう一方の段ボールに向かった。

何故かダメージを受けた。

「ちょ」

あ....どうやらふれてしまった。

パッチーン!

「痛っ!」

「あそこにもう一人いるくね?」

「狙うか」

ヒリヒリしている頬の上からビンタを食らったのもありすごく痛かった。

さらに追い討ちをかけるように、発砲された。

「か..回復..キッ...ト」

「...はいっ!これでいいでしょ」

透明化しているとはいえ赤面しているのが窺えた。

「あの...どこに触れてしまった伺っても?」

「変態」

「敵を倒してくるであります!」

その瞬間

「見つけた」

高速飛行で頭上に黄色のゼッケンをきた女子が1人、銃を構えていた。

「あーうん。アウト〜」

回復キットを使ってもらったときすでに左目を閉じていてよかった。

「はい?」

すでに相手のゼッケンは黄色ではなく透明になっていた。

それと同時に白色のBB弾が床に散乱した。

「なんでわかってるんだよ」

「翼崎さんは...最初に会ったところまで行っておいて欲しいかな」

「...わかった」

なんとなく気配が遠のいたように感じた。

「そこにいたの女の子?」

体育座りで横にいた人に聞かれた。多分実行委員の人を待っているのだろう

「おう。 すごく関係がわかりにくいのがいたぞ」

「へぇ〜」

初対面なはずなのに揶揄っているような笑みを浮かべられた。

「あ、キタキタ」

「君は...なんか説明してた」

「加藤だよ」

「ごめんね加藤くん。なんか勝てなかった」

「ああ〜気にしなくていいかな。」

にっこりとした顔をこっちに向けながら加藤は発した。

「今度お茶でもどう?」

「....はい?」

「親父がね、よく土田って人の話をするんだ」

「は...はぁ」

「まぁその辺の話も今度」

「お...おう?」

なんだろう。すごくやりづらい。ただでさえややこしい感じだったのにもう収集つきそうにないな...

加藤とさっきの女子が階段の方に行った。

...考えるのは後にしよっ

ふぅっと一息吐き、左目を閉じた。どうやらスタート地点に翼崎さんはいるみたいだ(もし、追いかけたら出会えたことからわかった)

相手の人数は残り5人(この瞬間に敵がいそうなひらけたところに出たときに感じた)

今翼崎さんが持ってる回復キットは1つ。何パターンか先読みしたけど直接攻めても倒しきれはしなかった。残り時間は16分。

「よく見る、相手のリーダー格を倒すみたいなのってできるかな...」

相手の弾は当たらず、相手の動く先に発砲。一見チートでも100%でないのはよくわかっているつもりだ。ただ、ポケットに持ったとりあえず倒せるBB弾乱射(投擲)もできて一回。

さっきのでばら撒いた分も残ってはいるが...

少なくとも1つ、最悪5つオブジェットを持ってる人が5人いる....

「そこにいるよな?」

そう言われて答えるほどお人好しではない。

受験期並みの集中力で考えても一向に打開策はない。

聞こえ始めた発砲音。

「オブジェット展開!」

まじか...

こうなったら耐久戦だ。複数と同時に相手するのは流石に骨が折れるだろうから、迷路を使って2体1以下にしたい...

「あぶなっ」

左目を閉じていたためノーダメージだったが、流石に3人3方向から攻められると避けにくい。

「なんで当たらないんだっての」

「おりゃ」

まともなダメージ量にはならないが、下に強く投げつけたBB弾があっちこっちに跳ねなんとか迷路までの道がひらけた。

「追うなっ!」

なるほど。あの人がリーダー格か。ここで人を減らせなかったのは辛いが1番の標的が見えたのはでかい。

「オブジェット拡大」

初めて聞くものだ...どんなものなんだろうか(一気に攻め寄った時)(迷路を進んで他の出口に行った時)(この場で止まった時)この三つを試した。

「なるほど。索敵みたいなものか...」

どのアクションをしてもどこにいるかわかっているような動きをされたように感じた。

なら逆手にとってトラップを仕掛けるか。

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