第十四節
「さぁ気を取り直して最終戦!校庭と地下フロア全体を使ったサバイバルゲームの時間です!」
「かなり手の込んだものだなぁ」
校庭(残り1時間から解放)、地下一階の倉庫と空きスペース、地下二階の体育館にそれぞれ、ダンボール製のサバイバル場が出来上がっていた。なお、階段は非交戦エリアとなった。
体育館には登れるところもあり、そこからの射撃はもちろん、数多くの遮蔽物も作られておりいろんなプレイスタイルでできそうだ。とは言っても、実際にしたことはなく、全部アニメの影響と言っても過言ではない。
地上や空きスペースは話によると、迷路に近い形となっているとのこと。
「武器の説明です。クラスの中で攻撃手、回復手、狙撃手の3つに分かれてもらいます。ただし、回復手の残機は2それ以外が1。狙撃手用ライフルは各クラス1丁となります。」
「今回の試合にあたり実行委員長、加藤くんのお父さんの会社に全面的な協力がありました。今回使用する武器は今後発売予定の自然に優しい銃弾と高性能ゼッケン、子供用の銃と回復キットの試用も兼ねています。やったね」
す..すげぇ
「ここで3組の加藤くんから補足説明です」
「今回使用する高性能ゼッケンは上着だけとなります。言い換えるなら、ゼッケンを着ているところのみが被弾箇所扱いで、そのダメージ量がゲーム上の死へのカウントダウンです。そして、そのダメージ量は回復手のもつ回復キットで治せます。ただし、回復手は自身の回復キットでは回復できません。その他細かい使い方は取扱説明書を読んでください。」
「本格的というかなんというか...」
「それではクラスごと位話し合い、担当を決めてください」
10分にも満たない話し合いで、女子7人男子3人が回復手、スナイパーには野球で9番の..ガタイのいい人がやることになった。
「ゲーームスタート!」
1組と2組が地下一階、3組と4組が地下二階からスタート
クラスがいくつかに分かれた。
4組は白チームだが、ゼッケンの色は黒みたいだ。かっこいい...
奨と組もうと思っていたが気づいた時にはいなかった。
「まぁ。どこかで会えるか」
スタート直後。発砲音が聞こえ始めた。
左目を閉じ少しして動き出した。
左からくることがわかったので先に構えておいた。
「うわっ」
相手が狙おうと構えたその時、すかさず発砲。
あくまで今回の戦いは耐久戦。キル数を稼ぐよりも確実に生き延びて相手のダメージ量を増やすべきだろう。
再び左目を閉じると前方と後方から同時に来るとわかった。
両目を見開き左右を確認すると程よい遮蔽物があった。
「あえてここは交戦せずに回復係の誰かと合流する方がいいか...」
できれば名前がわかる人がいいなぁ。あ 片手で収まるほどしかいない?!
....翼崎さん一択だな。べ...別に他意はない。
ちょうど別れ道にぶつかったので右に一歩踏み出した時、左に一歩踏み出した時の両方でその後の展開を少し先読みした。
朝から多用したからか扱いにも慣れてきた。早送りで場面を見たり、1秒から30秒先までの調整はできるようになってきた。ものすごく楽しいが少し怖くもある。
そんなことを心のどこかで考えつつも右ルート、左ルートともに翼崎さんに会えそうな雰囲気はなかった。
「歩き回るか」
なんとなく他のクラスとの接触が少ないように感じた左ルートを進み、階段を登った。
そういえば開始早々銃声が思っている以上に聞こえてこないな。
というのも、倉庫付近でたくらすが空中戦をしていたのだった。
「とりあえず…倉庫に向かうか...他のスペースに行くか...」
困った。どっちに行っても交戦は避けられなさそうだった。
「あえて戻るか」
なんだか無駄な動きをしているように感じるが、非交戦エリアである階段付近であれば回復手が自然と集まってきてもおかしくないように思えた。
ビーと言う警告音が鳴った。
「あれ?」
階段を降りようにもゼッケンが邪魔して入れない...というか入らせないようになっているのだろう。
ゼッケンには2分42秒の表示。左目を慌てて閉じると10秒足らずで蜂の巣状態であることが感じ取れる。
「やるか」
回復手が近くにいないが、下の階からの援護に薄い望みをかけ生き延びること最優先で発砲した。
遮蔽物の上に向かって五箇所に発砲。それと、ポケットから弾を鷲掴みし投擲。
「うわっ」
別に銃出なくても弾があたればダメージ判定。数打てば当たる戦法...なのかな?
前方を少しは足止めしつつ、挟み撃ちされないよう先読みしながら後方の迷路を進んでいく。
階段が地下倉庫の真ん中に位置しており、前方と後方に仕切り版や迷路、遮蔽物が混在していた。
そういえば取説読んでないなぁ。隙を見て読めば打開策があるやもしれん。
ゼッケンを見ると残り1分37秒の表示。
今通っている道の先には扉があり、その向こう側で飛んでいる人が見えた。
「まじかぁ。あんなのもできるのか...」
より一層、取説を読む必然性が出てきた。
適当に回ってもどればいいかな。
迷路といっても明確なスタートやゴール地点があるわけではなさそうだった。
「そろそろかな」
ゼッケンのタイマーが0になった瞬間、階段に入り込んだ。
というのも、もどってくるのをねらってたのか,
数人に狙われていたのだ.
どうやら射撃されてもダメージ0カウント扱いになるようだ。
取説は...あった。
ゼッケンの内ポケットから取り出して読んだ。
『ゼッケンの機能一覧
・ダメージカウント機能
・被弾箇所ごとのダメージ変更
・BB弾の衝撃を極力ゼロにする素材使用
・最大10人までの飛行
・通信(あまり感度は良くないと思う)
・その他計測
・おまけ』
はい?普通に考えて飛行ができる時点でこの国の技術かどうか気になる。
少なくともニュースで伝えられるだろうし、軍や警察も喉から手が出る欲しい物のようにも思える。これが試験利用ねぇ...
自分の左目といい、ネナのことと言い身の回りでこの世界のものとは思えないことが増えてきている。
それ以外に気になるとすれば、計測とおまけか...
計測と言っても身体的特徴なのか?或いは...
おまけに関しても、何かあるようにしか思えない。
とりあえず、通信と飛行は試しつつ計測とおまけは頭の片隅においておこう。
左目を閉じて10秒。あらゆる方法を試した未来を感じながら使い方を理解した。
流石に左目が痛い。と思ったのも束の間その痛みが次第に引いていった。
もしかしておまけって...リアルな回復?
今思えば、最近悩みの肩こりも、走り続けた足の痛みも感じない。
これ欲しいな。
とりあえず、通信機能で翼崎さんと奨に連絡した。
「もしもし?」
「うわっ! って樹くん?」
「おう。土田樹君だ」
「び…びっくりした...」
「どこにいる?」
「スタート地点のところ。ここ一応戦わなくてい場所みたいだから」
「なんでまた」
「始まってちょっとしたらBB弾の雨が降って周りみんなダメージ過多でノックアウト。私はギリギリスタート地点の範囲内だったから生き残ってるんだけど...」
「ピンチ?」
「まぁ」
「助けに行ったらかっこいい?」
「そうね。ついでに言っとくと三藤くんもチラチラ見かけているから生きていると思うわ」
「おう。なら通話しない方がよさそうだな」
「さらに言うとあと20秒ぐらいでスタート地点の機能?っていうのがなくなるみたい」
「それを先言えやっ!」
通話はそのまま、左目を閉じ階段を駆け降りた。
「あと?」
「20秒ぴった」
「わかった」
体力も疲労も気にせずにいける状態。最短で12秒でスタート地点につく。
ここまで2秒。
6秒以内に殲滅..いや道中から倒し始めればいいか
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