第六節

「いらっしゃい。坊主、何買ってくかい」

「では、つくねともも、あと皮、ネギ肉をそれぞれ五本ずつください」

「毎度〜。坊主、お使いかい?」

「ま..まぁそんなところです」

「そうか。なら、少しタレ多く入れとかなきゃなぁ。このタレはよぉご飯にも合うんだよこれが。」

「そうなんですか?」

「あぁ。なんでも秘伝のタレだからよ、鳥の混ぜご飯なんかに入れてもべらぼうにうまいってもんだ」

「ほんとですか?帰ったら早速やってみます。」

「おう。はいこれ〜」

そう言って、焼き鳥の香ばしい匂いを包んでいるであろう、焼き鳥の宝箱とタレを渡された。

「合計で、3000円ね」

「1、2、3、っと。はい3000円です」

「毎度あり〜。また来いよ坊主」

「は...はい!」

普段はコンビニとか行っても店員と喋りたくないし、あたためとかの時間気まずいのに、この店で買うのはちょっと楽しかった。

帰ったら、鳥の混ぜご飯をこのタレ使って作ってみよ。

ほんの少し駆け足で戻った。

「遅いぞ〜少年」

「これでもやれるだけ飛ばしてきたんすよ」

「うぅ。そのセリフ胸が痛いよ」

「ほんとなっちゃん達息ぴったりだね」

「そ..そうっすか?」

「そうかしら?」

「なになに?ほんとにできちゃってる?」

「できてませんよ。まぁ、この人と会ってから世界が少し違って見えますけど」

「残念ながら私は変わらないわね」

ふ...振られた?いや。告っていないし、まだあって2日目だし

「だって、会って2日目だし」

「ふ..2日目?」

「まぁ。最初に会った時は...なんでもないわ」

「何よ〜」

このあと、何かを思い出したかのように少し顔を赤らめていた。

「これから少しずつ変わるかもしれないってだけよ」

「え?」

まだ、脈はある...のか?

というか僕はこのなんとも言えない気持ちは好きなってことなのだろうか。

それとも、また別の何かなのだろうか。

僕が翼崎に抱いていたものとはどことなく違う何か。

...やっぱり僕って何にも知らないんだな

僕は窓ガラスの向こう側に見える商店街の雑踏を見て思わず考えてしまった

「お〜い。少年よ」

「はい!」

「ネナさまが目を輝かせている。早く差し出すんだ」

「はいはい!」

慌てて机の上に置いた、焼き鳥の宝箱を開いた。

また今度。もう少しだけ悩んでみよう。そう思った

「なにこれ〜。おぉいしそう」

「さっき言ってた焼き鳥だよ〜。この皮っていうのが美味しんだよ」

「いやいや、このネギ肉をお食べ〜」

「最初はつくねでしょ」

「じゃぁ全部〜」

そう言って、少女の小さなお口に溢れんばかりの焼き鳥を詰め込もうとした。

「ああああ。待って待って」

「え?」

少し目元をうるうるさせなががら、早く食べたいとばかりにこっちをみていた

「まずはいただきますって言うの。それと、逃げたりしないから好きなのから一つずつ食べなさい〜」

「はぁい。いただきます」

そう言った少女は真剣な眼差しで手に持つ焼き鳥を眺め、つくねに口をつけた。

「いいぞネナ。つくねはいいぞ〜」

「;.p@.@l2~」

「え?なんて?」

よく聞き取れない言葉だったが、美味しいことだけは顔を見ればわかる。よかった

そのあと、ネナは皮を食べ、ネギ肉、ももの順に食べた。

「美味しそうに食べるわね〜。私の分もあげようか?」

そう言って鷺宮さんは皮を、明日井さんはネギ肉を差し出した。

「じゃあ僕も」

そう言ってつくねを渡した。店主さんは慌ててキッチンの方へ戻り少し大きい皿っと水を持ってきてくれた。

目をキラキラさせるネナ。

「私たちも食べよっか」

「そうですね」

各々焼き鳥を手に持ち、みんなでいただきますをした。

「へぇ、言われてみればネギ肉も美味しいわね」

「やっとわかってくれたか、なっちゃんよ。そうね、皮も食べてみると美味しいいね」

「そうだろう。そうだろう。やっとわかってくれたかうゆゆ」

「つ..つくね」

つくねとももの美味しさは...

ゴホン。咳払いをしたマスターさんがこっちを見て、

「土田くんと言ったかね。やはり焼き鳥はももとつくねだろう」

「そうですよね!」

そう言って2人でうまぁと口から漏らしていた。

「あーそう言って皮とネギ肉の美味しさまだ分かってないメンズがいるよ!なっちゃん」

「そうね。これは解らせてあげるしかないわね。うゆゆ!」

残っていた三本の皮とネギぐしをそれぞれ二つに割り差し出してきた

「これって...」

「早く食べないと〜」

そう2人が言うと手に持つところだけ残していない方の皮と、ネギが2個ももが1個の方だけを残して、ガールズが分け合いっこして食べていた

「え?」

マスターと僕はその一瞬の隙に押されて思わず感嘆が漏れた

「えぇぇ」

美味しさを教えるのではなかったのだろうか。まぁ美味しそうに食べる彼女たちを見れたからよしとしよう。そういうことにしよう

「た..食べますか」

そう言ってベトベトの持ち手の皮と、ネギ多めのネギ肉を2人とも食べた

「おいしい。」

そう言えた時にはもう遅かった。

ちくしょう。先に手に持っとくんだった。

「あ、少年。焼き鳥代渡すね」

「ああ。いいすよ。これはおわびみたいなもんですし」

「お詫び?私悪いことされてないけど。というかした方だけど」

そう言って明日井さんは目を閉じ考え始めた。

一方そのころ鷺宮さんは(話したら殺す)というような熱い視線を僕に送っていた。


「まぁいいって言うならいいや。代わりにってわけじゃないけど今日のカフェ代はタダでいいよ。ね?お父さん」

「ああ」

「いいんですか?」

「鷺宮さんには色々助けられてるし、今日はおいしい焼き鳥も食べれたからね」

「パフェ頼んでればよかった」

「そう言わないでくださいよ」

ご好意に甘えるが、鷺宮さんが欲したパフェたのんでればなぁ

「...半額でだけどパフェ3人分用意しようか?」

「いいんですか!」

「流石にただッとは言えないけど、みんなでしめのデザートと行こう」

「いただきます!」

ネナはようやく焼き鳥を食べ終わり少しキョトンとしていたが、みんなが笑っているからかネナも笑っていた。

「ぱふぇってなに?」

「おいしい果物とアイスクリームでできたとってもおいしいものよ」

「ネナ、アイスクリーム知ってる。ママが、あの人って人に教わったって言って作ってくれた」

「あの人さん?」

「ネナもよく知らないけど、このお本描いてくれた人って言ってた」

「へぇ〜」

「え?ネナちゃんって外国の子なの?」

「多分ね?よくは分からないけど」

「へぇ。ふしぎちゃんかぁ」

「まぁそんなところね」

「ところでさ、どんぐらい面倒見ればいいの?」

「あ...」

当初、鷺宮さんと一緒に食べ歩きしつつなにかしらの手がかりを探そうとしていたのだが

気づけばあったところから離れ、商店街に来て、一緒ご飯を食べている。

預ける必要ないのではないか説浮上。

「どうしましょう?」

「とりあえず、15分ぐらい面倒みててくれない?」

「まぁいいけど。」

「じゃ、そう言うことで。さぁ少年。ついてきたまえ」

「は..はい!」

そう言って、喫茶店を一旦後にした一行。

「とりあえずそこのゲーセンでも行かない?」

「まぁいいですけど」

「女子1人で行くのはなかなか勇気がいるのよ」

「そうなんすね。でもなぜに今?」

「行ってみたいっていうのが半分。これからの相談するのがもう半分ってところかしら。」

「は…はぁ」

いまいち掴めないというか…

「ネナちゃんとは、ひとときたりとも離れたくはないどだけれど。でも、ねなちゃんの前で話すのはやりづらいかなぁって思ってて」

「そうですか?」

「可愛すぎて、ずっと見てちゃいそうで」

「あぁ〜なるほど」

そうして近くのゲームセンターに足を踏み入れたわけだが、

「す..すげぇ」

普段ゲームセンターの類はうるさそうと思っていたので入ってこなかったが

歴レグのヒロイン“スミア”のフィギアや毒ドクのドッくんぬいぐるみなど、欲しいものが目白押しであった。

「今まできたことなかったっすけど、いいもんすね」

「だね〜。これなんかネナちゃんへのお土産にいいんじゃない?」

と、ドッくんを指差して言った。

「そうっすね」

「毒ドクのおかげで色々薬とか、毒とかに詳しくなったのよねぇ」

「まさか、湿布も一種のドーピングだなんて〜って思ったすよ」

「まさか、はじまりの魔術師の弟子だったことは一番の驚きだけどね」

やっぱり好きなことの会話は楽しい。

「で、どうしようかね」

「無難に警察とか保健所じゃないんですか?」

「身分証もなさそうだしね〜」

鷺宮さんはあまり浮かない顔をしていた。そんな気がした。

「なんか心当たりでもあるんですか?」

「多分ね、警察も保健所もこればっかりはどうにもできないんじゃないかな〜ってね」

「そんなもんすか」

まだ自分が中学生だからか、理由もなにも解らなかった。でも、彼女がそう言うのだからきっとそうなのだろう。僕はそう思った。

「じゃあ預かりますか?」

「そうね〜。え?拉致監禁?」

「物騒な!」

「それもありね」

「100億パーセントなしの方向です。」

「監禁じゃなくて、預かるって意味でね」

そんなこんな言いながら、ドッくんぬいぐるみの入っているゲーム台に500円を投入し6プレイを選択した。

「でも、いつまでとか、どこでとかどうします?」

「それは..大丈夫じゃない?」

「あ!」

初めてだったからだろう。アームがぬいぐるみにかすりもしなかった。

「な、なんでです?」

「下手ね〜。いやね、私の知り合いにに他境遇の子がいたのよ」

そう、髪を軽く整える仕草をして、

「初めてなもので。そうなんですか?」

「私がやってあげるわよ。そう」

と、一回で2度会話する高等芸を披露しました。

「あ」

僕と同じようにかすりもしなかった鷺宮さん。さすがです。

「これだから機械は...」

「まさかの機械に八つ当たりですかい」

「まだ、人の方がわかりやすいわよ」

「普通逆ですよ。普通」

「じゃあ私はアブノーマルだ」

「数え切れないほど能力欲しいものですね」

「機械操作とか、タッチタイピングとか欲しいわね」

「自力案件でしょ。まぁ僕も苦手ですけど」

「そうね。話戻すけど」

どうやら僕たちの会話は脱線なしには進まないようだ。脱線して進まないのではなく...。

「預かるなら、女の子だろうし私とうゆゆでやるわ」

「じゃあ僕は何をすれば?」

そう言いながら、3プレイ目に突入。

「そうね。あくまで想像の話だけれど、君には預かるよりも大事な使命があるはずよ」

「と..いうと?」

お、今度はぬいぐるみの両サイド掴んだ

「ネナちゃんのお兄さんを見つけ出すことよ」

「は?」

言った途端持ち上がりかけのぬいぐるみが落ちた。

「そうして、夢に見るネナちゃん妹計画の実行よ」

わ…わからない。

「その様子だと僕やることないじゃないですか」

「何言ってるのよ。土くんじゃなきゃ見つけられないから言ってるのよ」

ん?だんだん読めなくなってきましたぞ?

「次は私がやるわ。こういうのはタグっぽいところに入れるのよっ!」

「ええっと、捜索と僕に何の関係性が?」

「順を追って話すわね」

「はい」

4プレイ目の鷺宮選手。狙うはタグ一点のみ。無風。

「その前にっ。これを獲るわよ!」

「マイペースな!」

「あ」

案の定、タグに掠るどころかぬいぐるみにすら触れていなかった。

「まぁ、練習だし?」

「僕が獲るんで、説明お願いしますよ」

「はいはい。まず第一に、あなたには土田普という名の父がいるわね」

「ええ?」

あまりの衝撃発言についてが滑った。

「あなたがやるといくらかかっても獲れそうにないじゃない」

「それよりもっ!なんで俺の父親の名前知ってるんすか?」

「母の知り合いだからよ」

「ど...どんな関係ですか?」

まさか、次の一言で家庭環境が崩壊しませんうように

「そうね..まぁ同じ研究室にいたってところかしら。細かくは知らないわ」

「それなら。まぁ」

「あと、一時期同居してたみたいね」

「ええぇ」

「大丈夫。あなたが思っているような関係は微塵もないはずだからさ」

「よ...良かったっす」

「よし、次こそはタグに入れて見せるんだから」

そう意気込み、ブレザーを脱いで腰に巻く鷺宮さん。その眼差しは戦場に凛と佇む歴戦の猛者のようであった。

「これはいったわね」

ゴクリ。どこからどうみてもぬいぐるみのかなり奥なのですが....

「お、惜しかったわ」

「はいはい。で、僕のお父さんが何だっていうんですか?それと次こそは僕が決めます」

「説明すると言っておいてあれなんだけれどね、多分少年のお父さんが助けになってくれるはずよ」

「それはまた、不可解なこと祭りですね。よし、僕もタグ狙ってみるかな」

「さっき、似た境遇の知り合いがいるって言ったじゃない?」

「言ってましたね」

「正確にいうと、私じゃなく母の知り合いなのよ」

「なるほど?あ…」

タグにかすりはしたものの、爪が入りそうにはなかった。

「それでね、私が幼い時、母が話してくれたことにあるのよね。迷い途中の可愛い女の子の話がね」

「まさに今と同じ感じゃないですか」

「そう。一目見た時からそんな気はしていたのよね」

「で、肝心の内容はどんな感じなんですか?」

「簡単に言うとね、登場人物は衰弱している王女と、彼女を助けようとするその兄。

それと1人の学生なの。その王女を治すためにその兄は最奥の扉を目指すのね。

なんでも、その扉の奥に全てを解決する道具があると言われていて、それに賭けてみることにしたの。でも、その最奥の扉っていうのがどこにあるのかわからないでいたの。

だから、国中からいろんな人を集めてたみたいなんだけど、」

「何だけど?」

「それを行う少し前に黒髪の女の人が現れて一枚の地図を彼に渡したていたの。それと一緒に、名前が書かれた紙と、女の子を連れた男の絵が書かれたものもね」

「まさか?」

「そのまさかよ、」

「あ、ちょと待ってもらっていいですか」

「いいけど」

「獲れそうじゃないですか?」

「まさかぁ」

「そのまさかです..あ」

とは言ったものの、言っている途中にはぬいぐるみはタグに入らなかったのもあり滑り落ちてしまった。

「この続きが聞きたいなら、私にもう一度チャンスをよこしなさい」

「まぁいいですけど」

500円投下のラスト(お財布的に)、6プレイ目に突入した。

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