第四節
なんか身分証明とか、住所がわかるものはないだろうか…
「予め言っておくと、そのようなつもりは微塵もございませんよ」
「確かに、このまま放置ってのもねぇ。今のところ手がかりが少なすぎるし…」
つい気になって少女のポッケに手を入れようとするが
「あなたがやると犯罪臭がするわ」
「じゃあやってくださいよ」
危うく犯罪者となるとこだった。
「何これ?」
その手には一冊の本があった。
「これ見ていいやつですかね」
「もしかしたら電話番号とかあるかも」
1ページ目を捲るとアニメチックな絵がいくつか載っていて、その下にひらがなで書かれた単語が、よく読めない文字と一緒に書かれていた。
「笑っている..子供かしら?」
その下には、あそぶと書かれていた。
「その下は建物ですかね..変わってますけど」
「私何ヵ国か話せるけどこの言葉は..発音かしら」
「それ、字というより発音を表しているのでは?」
「そう考えると合点がいくわ」
「にしても、最近の女子高生は何カ国語も話せるハイスペックなんですね」
「そう?」
「今から高校が不安です」
この流れで、どこ高なのか尋ねられたついでに、相手の高校の名前を聞き出そうとか考えてないです。本当です。
「そう...まぁなるようになるさ」
想像以上に素っ気ない答えでちょっと悔しい。ちきしょう、俺の頭に孔明並みの策略が降りてきたと思ったのに
「話戻すけどさ」
「はひぃ」
「奇声獣かしら。まぁいいわ。ほっとくっていうのもアレだし交番ってのも...この状態じゃあ大変なことになりそうね」
「というと?」
「言葉が通じない。道端で寝ている。保護者の陰もなし。普通は警察沙汰でしょうけど、一緒にいたほうがいいと思うわ。それに...」
何故か寝ているはずの少女の手が彼女の袖を引っ張っていた
「可愛いから」
「お巡りさん〜ここに誘拐犯がいます」
「ちょっとだけだからさ」
「ただのナンパ野郎でした〜」
「まぁいいじゃない。これから食事でもするところですし、ジャパニーズなおもてなし消えてやろうじゃない」
「まぁ、鷺宮さんがいいならいいですけど」
「嫌なら私1人でやろうか?お金だけ置いてってくれればいいからさ」
「誠心誠意、ご一緒させていただきます。」
「焼き鳥」
「2本追加でどうですか?」
「うむ。良きにはからえ」
「じゃ行こっか」
「えぇっと...」
そういえば名前を聞いてなかった
「なんて呼びます?」
「なんて呼ぼうかしら...」
「自己紹介して雰囲気的なノリで...」
「そうね、雰囲気は世界共通語だもんね」
「...お..僕は土田、土田樹だよ」
「それで、私が鷺宮小菜だよ」
小菜さんて言うのか...そういやニャインの名前がなっちゃんだったな
「じゃああなたは?」
と言って自分に向けていた指を相手に向けて首を傾げてみた..
「....ネ..ネナ」
「ネナちゃんって言うのか」
すごい、本当に雰囲気は世界共通語なのか!?
「ネナはネナ。ちゃん、じゃない」
「おぉ、そうだね...」
思った以上に日本語が喋れそうで安心したけど、
「そうだよ、ネナはネナだよぉ」
ここからどうやって、話を広げればいいんだ?
「私たちこれから食べに行くんだけどくる?」
「食べに..くる...ん?」
「そう。一緒にご飯だよ」
「ネナおなぁかへたぁ」
「そうそう。さっきなんか食べたそうだったから」
「食べるぅ」
「よし、行こっか。おい土田少年。リムジン呼んでこい」
「リムジン代は先輩持ちならいいですよ」
「よしネナちゃん行こっか。」
やっぱり“ちゃん“って言うのは馴染みがないからか、最初はムスッとしていたが、
「行くぅ!」
と可愛い元気な返事が聞こえたのでちゃん付け続行だ!
「やっぱりこのままお持ち帰りしていいかしら。ちょうど妹が欲しかったの」
「そんな愉快犯みたいな…」
「ネナ、兄様いる」
「だそうですよ。翼崎さん」
「ええ?」
「んん?」
2人同時であった。その時、シンク○率は100%近かった。
「今、兄様って言ったよね?」
「確かに言いました」
「つまりは、結婚して合法的に妹にできると?」
「論点ズレてます...」
それはダメです。とは言う勇気がなかった。
「でも、親族がいるとわかったのは僥倖です。」
「急に大人びた言葉使うねぇ。マセがき?」
「読書家なんで」
「タイトルを言ってご覧なさい」
駅に向かう途中まで、頭に?マークを備え付けたネナを間に挟んでラノベのタイトルでしりとりをした。
「はっ!ごめん」
慌ててカバンから、詰めていた駄菓子を取り出した。
「これなに?」
「お菓子だよ。ここからちぎると、お菓子が出てきて...」
ぱくっ!
威勢が良かった。だがなネナちゃん。包装紙は美味しくないぞ
「食べれなかったのくれる?」
「包装紙食べるの?」
「ネナ食べたい」
「これは食べ物じゃないんだよ」
「仕方ない。私が食べますか」
「食べれるか!」
急に鷺宮さんが額に人差し指を当てて言った。
「やはり近所の子ではないと思われるわね」
「急ですね、また」
「今のしりとりの下りでもお菓子の包装紙にしても、あんまり反応があんまりみない感じだからね」
「そんなこと考えてしりとりしてたんですか」
「まぁ、君は熱中しすぎてこんなにも可愛いネナちゃんほったらかしにしてるみたいだけど」
ちくしょう。自分だけ正当化しやがってとは思ったものの言われてみればそうだ。
であれば、今度は僕からアプローチをかけてみるべきではないだろうか。
「じゃぁネナちゃんは魔法って知ってる?」
「まほう?よくわかんない」
「そんな異世界人じゃあるまいし...」
「いせかい?知ってるよ」
「ほらネナちゃんだって...」
「ええぇ?」
本日2度目のシンク○率100%近くをたたき出した。
「この本書いた人、いせかいの人」
流石に驚きを隠しきれなかった僕であったが、何故か翼崎さんはニヤけていた
「何にやけてんすか」
「...想像以上に面白いことになりそうだなぁって」
「そうですかい…」
その時だった。バタッという音が足元から聞こえた。
「ネネネネナちゃん?」
焦って気が動転しかけたが、その直後にスヤスヤと寝息が聞こえてきた。
「急に寝ちゃった。」
「もう大丈夫ね」
急な彼女の急な発言に一瞬耳を疑った。
「なんでっすか?」
「いや、なんでもないわ。それより落ち着いて寝れるところに先に行かなくちゃ」
「そ...そうですね」
その後も、さっきの発言が気になって仕方がなかった。はずだったが、気がつくと気になってたことも忘れていた。
結局はネナを背負って商店街へ行き、鷺宮さんの知り合いの家に厄介させてもらうか交渉することになった。
商店街までは電車で二駅。歩けないわけではないが、ネナをおぶっていることを踏まえ電車を使うことにした。
「やっと駅着きましたね」
「やっぱ人がゴミのようねぇ」
「そう言う自身も人なんすよ?」
「じゃあ私は新しい世界の神になるしかないか...やむを得ん」
「じゃあ僕は、たった一枠の眷属狙うしかないですね」
「待ってるぜ!土くん」
そう言って、右手でグッドサインを出してきた。流石の対応力だ…
「それはそうと、見えてきたわね」
天井のある商店街でかなりの大きさもある。知ってる限り、天井のある商店街っていうのは珍しい気がする。
昔ながらの店の横に今風のオシャンティなお店が並んでいて年齢層もまばらだ。言うなれば混沌…って言っても、商店街イコール混沌にはならないか…
人酔いしやすい体質である自覚はあるのだが、何故かこう言うような活気あるところは嫌いじゃない。うっ…やっぱきつい。
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