第47話 甘いぞ濡れ屋敷①
《だから、西宮くんは存分に私をエスコートしなさい》
《えぇ、連れていってちょうだい》
そう言ったのは確か天王洲さん。だから俺は天王洲さんを引っ張ってカッコよくエスコートしようと思ったんだ。
「違う、そっちじゃないわ」
「えぇ……」
俺が連れていこうと思ったお店への道へと向かおうとするけど、天王洲さんはそれらを悉く否定する。自分が行きたい場所があるなら最初からそう言ってくれれば行ったのに、なんか違うこの感じがむず痒い。
「天王洲さん、どこ行きたいんですか……?」
「一度行ってみたい所あったのよ」
「ほほう」
そんな矢先に、二人の愛らしい会話に割り込んできたのは、なんとも緊張感の無いぐぅって音だった。まぁ、多分腹の虫が鳴った音だとは思うけど、断じて俺が鳴らしたわけではない。
じゃあ誰が鳴らしたんだ? 俺にハッキリと聞こえるくらいの距離にいて、且つ俺じゃない人物と言えば天王洲さんしかいないじゃないか。
「…………」
「お腹空いてます?」
「……空いてない」
「いや、でもお腹鳴ってましたよ?」
「……鳴ってない」
「いやいやいや、流石に誤魔化せませんって」
「西宮くんよね? 鳴らしたの」
「え? 違いますけど」
「西宮くんよね?」
「違いまs「西宮くんよね?」
圧が、圧がすごいです天王洲さん。ニッコリと微笑みながら同じ事を三回も、しかも三回目なんか食い気味に言ってきたし。
よくよく考えれば、確かに女の子からしたら恥ずかしい事なのかもしれない。男の俺としては特に恥ずかしくもないし気にしない事だけど、天王洲さんにとっては違うのかもしれない。
「お、俺が鳴らしちゃった……かもです……」
「そう、よね。なら、ご飯を食べに行きましょう」
「分かりました」
俺が折れた事でなんとか事なきを得て、そのままご飯を食べに行くことにした。
だけど、そうなっても相変わらず俺が天王洲さんきエスコートされている状態だったので、そもそもご飯を食べに行くつもりだったんだろう。
天王洲さんに連れられながらやってきたのは、どこにでもありがちな普通のフードコート。俺自身よく来たこともあるしありふれた場所ではあるが、そんな場所、雰囲気が天王洲さんとは合わない気がした。
「天王洲さん、ここでご飯食べるんですか?」
「えぇ。そうよ」
「レストランとか、もっと落ち着きのある場所の方がいいんじゃないですか?」
「いいのよ、ここで。ここがいいのよ」
「そうですか」
「あそこなんて良さそうね」
天王洲さんが指さしたのは、これまた大手でメジャーなファストフード店だった。
「全然イメージ違いますね」
「行った事ないのよ。だから、行ってみたくて」
「え? そうなんですか?」
「普通は学校帰りとか、休日とかに親しい友人と来るものなんでしょ」
「まぁ、一人で行ったりもしますけどね」
「私はみんながしてる、そういう普通がしてみたいのよ」
「てっきり、天王洲さんは友達と普通に行ってると思っていました」
「友達なんていないわ」
「え?」
「私に友達なんて、いないの」
この感じ、この雰囲気はマズい。なんかセンチな方向に進んでいってる。
俺は楽しく笑ってる天王洲さんが好きだ。もちろん、クールでカッコいい天王洲さんも好きだけど、やっぱり好きな人には笑っていて欲しいんだ俺は。
「いますよ」
「え?」
「今隣に、天王洲さんの友達はいます。親友ではないにしても、こうやって休日に一緒に出かける中ですし」
「西宮くん……」
「天王洲さんがまだ俺の事をそう思ってなくても、俺は勝手に友達だと思ってるんで」
「………………」
顔を赤らめたと思ったら、俺から視線を外してしまう。俺、なんかマズい事でも言ったか? なんか気に障るようなこと言っちゃったか? 急に湧いてくるこの不安な気持ち、どうしてくれよう。
「す、すみません……なんか俺ベラベラと」
「い、いくわよ……」
そう言って天王洲さんは俺の手を引っ張ってお店の方へと向かっていく。
「西宮くん」
「は、はい……?」
「ありがと」
「え?」
先程とは違い小さな声音で、でも俺にしっかりと聞こえるほどの声量で言ってきた。
「二度は言わないわよ」
二度言われなくても、しっかりハッキリ聞こえていた。相変わらず頬を赤らめながら、それでいて俺との視線を合わさずにいる天王洲さん。
そんな天王洲さんが愛しくて可愛くてしょうがなかった。
「天王洲さん」
「な、なによ……?」
「好きです。俺、天王洲さんの事めっちゃ好きです!」
「…………」
「天王洲さん?」
「……バカ」
俺の気持ちを込めた愛の告白は、バカの一言で脆くも儚く玉砕するのだった。
————————————————————
《令和コソコソ噂話》
第47話読了してくださりありがとうございました!
新しく始まった「甘いぞ濡れ屋敷編」はいかがだったでしょうか!?
西宮くんと天王洲さんのイチャイチャ増し増しで書いていきたいと思います。
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学校一の美少女はノーパンだし、転校してきた幼馴染がノーブラだし、とにかく美少女にたくさん出くわす件について。 能登 絵梨 @yuigahama
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