壊れた聴覚
音澤 煙管
どう?聞こえるでしょ?!
「陽が沈み、薄暗くなった部屋で……
それでもぼくは灯りは点けない。
なぜ?だって?!
野暮なことを聞くんだね?
じゃあ言おう!
この瞬間からは、耳がとても
敏感になる時間だからさ。
目を開けて居ても薄暗く、
目を閉じると真っ暗になる。
当たり前のことだけど……
そしても一度目を開けるんだ。
……ほらね?
また、昼間みたいに明るくなるだろ?
コレを何度も繰り返すんだ。
そうすると不思議なことに、
耳に聞こえる音たちが、
昼間みたいには聞こえなくなる。
そして、この時間に飛び交う
蝙蝠たちを目で追える様になる。
時には羽ばたく音や会話も聞こえてくる。
それがどうかした?って?!
この時間からしか動けない、
これから夜に生きる者たちの
話が聞こえる様になるんだよ。
どう?不思議だろう?!
だから、灯りはまだ点けない。
灯りは、今生きる者たちの声が
聞こえなくなっちゃうからね。
わかったかい?先生。」
月一度、かかりつけ精神科の
カウンセリングへ来ている。
ぼくは正常だけど、皆がおかしいと言うから、先生に毎回説明に来ている。
先生は幻聴と言うけれど、ぼくの頭も耳も正常なんだよなー
来月はココへ入院して、先生以外の患者さんたちにお話しする予定なんだ……。
壊れた聴覚 音澤 煙管 @vrymtl
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます