本日、2度目のデスゲーム

ちびまるフォイ

私以外の人からデスゲーム受けないで!

「ここはいったい……」


『気がついたようだな……。君は今デスゲームへと参加させられている』


「な、なんだって……!?」


『生き残りたければ、この部屋にある道具を使って脱出するのだ。

 もっとも、生き残るために多くのものを失うことになるだろう。まずーー』


「待ってくれ!」


『これはデスゲーム。いっさいの質問も受け付けない』


「俺、デスゲームすでにやっているんだけど」



『えっ』


画面の向こうの人形がピタリと動きをとめた。

沈黙がデスゲーム主催者側の焦りをわかりやすく伝えている。


『デスゲームやっているというのは……』


「今日で2回目。デスゲームの最中にデスゲームに巻き込まれているんだけど」


『そんなことある!?』


「こっちのセリフだよ! なんで2回も殺されることになるなんて聞いてないよ!」


『デスゲーム参加してたなら先に言ってよ!』


「外で夕食食べてきた旦那にキレる風なんだよ!」


せっかく現代人への粛清や見せしめをかねて、

前々から準備していたデスゲームも失敗してしまったら後味が悪い。


あくまでも自分の課したデスゲームで右往左往してほしいのであって、

まったく関係のないどこぞの馬の骨がしかけたデスゲームのせいで自分のデスゲームがおじゃんになるのは嫌だった。


『こうなったら方法はひとつ。私もデスゲーム協力するから、いったん……いったんこのデスゲームのことは忘れよう』


「忘れるってどういうことだよ?」


『あのね、私も協力して別のデスゲームをいったんクリアしよう。

 で、それから改めて私のデスゲームで死んでもらうってこと』


「そんな……もとはといえば、俺がデスゲームに巻き込まれていたせいで……」


『ううん、いいのよ。同じデスゲームの主催と参加者じゃない。水臭いこと言わないで』


「主催者……!」


『さあ一緒にデスゲームを攻略しましょう!!』

「ああ!!」


二人は先に継続していたデスゲームを攻略することにした。

参加者からデスゲームのあらましを聞いた主催者は考え込んだ。


「……というデスゲームなんだ。どうすればクリアできるのかわからないよ」


『この手のタイプなのね……。デスゲームの流派には大きく分けて2つあって、

 参加者を自由にさせるタイプと、私みたいに密室に閉じ込めるタイプがあるの。

 あなたのは、私の方式とことなるデスゲーム自由型ね』


「水泳の新しい泳ぎ方のスタイルみたい」


『デスゲーム主催側でも流派がちがうから、私の知識も素人とほぼ同じよ』


「なんてことだ。それじゃもう俺は死ぬしか無いのか」


『諦めないで! こういうときのためにデスゲームwikiがあるんじゃない!!』


「それはいったい……!?」


『デスゲームにこれまで参加した人が集まって更新しているサイトよ。

 デスゲームなんてある程度の傾向は似通ってくるからなにか攻略法がわかるかもしれない!』


「頼む! なにか攻略法やヒントを見つけてくれ……!!」


先に受けていたデスゲームの制限時間が刻一刻と近づいていく。

死神の足音が聞こえてくるようだ。


「もう時間がない! なぁ、デスゲームwikiに答えはないのか!?」


『だ、ダメ……どこにも攻略やヒントがのってない……。

 あなたのデスゲームは自家製オリジナルのものかもしれない……』


「それってどういうこと……」


『自分で作ったデスゲームという形式ではあってもどうやってもクリアできないパターンが多いのよ』


「あんただって自分で考案したんじゃないのか!?」


『私もある程度はデスゲームホームセンターで出来栄えのもので準備してるのよ。

 カレーを作るのにルゥを買わずにスパイスから準備する人なんていないでしょ!?

 でもあなたのデスゲームはイチから全部準備されている。攻略法なんて用意されてないのよ!』


「そ、そんな……! 苦しめるだけ苦しめて殺すってことかよ……!?」


『私がそんなことさせない! 必ずデスゲームから救い出して、私のデスゲームで殺してみせる!』


デスゲーム主催者は必死に攻略法を探し続けた。

先のデスゲームの時間が迫るほど参加者は命への執着を捨て始め悟り始めた。


「もう無理だ……どうせ死ぬしか無い……」


『まだ私が諦めてないのに、勝手に生きることを諦めないで!!』


「どうせ見つからない……終わりだよ、なにもかも……」


『なにか……なにかあるはず!』


そのとき、デスゲーム主催者はあるページへとたどり着いた。


それはデスゲーム参加者がどう生き残るのかの視点ではなく

これからデスゲームを主催する人に向けた『誰でもできるデスゲーム!』というページだった。


『これよ! これならいける!!』


「なにか攻略方法があったのか!?」


『今すぐエンジンをかけ続けて!!』


「なんでそんなことを……?」


『いいからはやく!』


主催者の剣幕に押されて参加者はしぶしぶデスゲーム装置のエンジンを付け続けた。

デスゲームとは無関係で意味のない負荷をエンジンに与え続けるだけに思えた。


エンジンを掛け続けた結果、あっという間にエネルギーが切れてしまった。

連動して同じ電源を共有していたデスゲーム装置も止まってしまう。


「と、止まった……? どうしてこの攻略法に気づいたんだ?」


『デスゲーム初心者にありがちなミスがページに載っていたのよ。

 本番前の試運転をしたまま、充電し忘れて本番にのぞんじゃってデスゲーム中に切れるパターンがね』


「助かった……。そんな初歩的で当たり前なミスを、

 人の命を奪おうと思っている人間がやらかすんだな」


『まあ……デスゲーム主催者といっても人間ではあるから……』


「だとしてもプロ意識に欠ける気がするよ。

 こっちは自分の命をかけているんだからもっと真剣になってほしいなって思う」


『そうね……本当に……』


「充電くらいするのが普通だろ。ほんとありえないよ」


参加者は小言をあらかた言ったあとで立ち上がった。

その目には光がともっている。


「さあ、これでデスゲームはひとつ片付いた。もう覚悟はできている。

 あんたのデスゲームを再開しようじゃないか!!

 俺はどんな困難だって打ち勝ってみせる!!」


参加者はわけも分からず連れてこられた頃にはない決意と覚悟を見せていた。

デスゲームではあれど、これは主催者と参加者の知恵比べ。


今、デスゲーム主催者と参加者による命をかけた真剣勝負がはじまった!!





『あの、その前にデスゲーム装置の充電してきていいかな……?』

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