第40話 東光大学附属の学園祭③

 side:遥香



 今日は部活が終わったら、吉住くんと公園に行く日だよね。

 

 私か吉住くんの、早く終わった方から連絡をする事になっていて、「試合が終わって、今からリハビリに行くよ」とメッセージが入った。思っていたより早く連絡が来てビックリした。


 吉住くんのリハビリが終わって、「学校近くのコンビニで待ってる」と連絡があった。私は部活が終わったので急いで向かったよ。


 コンビニに着いたら吉住くんは同じ学校の女の子達と話をしていた……

 女の子達は楽しそうだし、私は吉住くんの所に行っても大丈夫なのか分からなかった。

 でも、待ち合わせしてるのは私だから吉住くんの所に行った。


 さっきの女の子は中学の頃から応援に来ていた人達だったと聞いた。やっぱり吉住くんは人気あるんだ……


 公園に着いてから約束していたキャッチボールをした。この前と違って、グローブを2個持って来てくれていた。ボールも小さくて柔らかかった。


「俺が小学校の低学年の頃に使ってたボールだよ。小さいけど、柔らかいし危なくないから。相澤さんに当たって怪我とかさせたくないし」


 こんな理由だった……


 こういう優しい所……やっぱり良いな……


 この前のボールは硬くて少し大きいなって思ってたんだ。


 スポーツショップで見ていたボールと同じ位のボールかな? 小さい頃は同じ様なボールを使うんだね。


 前も楽しかったけど、今回はもっと楽しかった。グローブでボールを掴めなかったけど、途中から捕れる様にもなれた。


 たぶん吉住くんが取りやすい様に投げてくれたんだよね……


 この後はタコ焼きを食べた……正直、思い出したくない位に恥ずかしい事をしてしまったんだ……



「遥香、どーぞ」


『ぱくっ』


「美味しいねー。綾ちゃんも食べて」



 同じ事をしてしまったんだ……凄く恥ずかしい……吉住くんも目を丸くして驚いてたもん。


 謝ってたら吉住くんは何故か笑い出したんだ。そして「少しじっとしてて……ほら、取れたよ」吉住くんは私の口元に手を当てて来た……凄くドキドキした……


 吉住くんはコンビニでも女の子達と仲良くしてたし、慣れてるんだろうな……私だけこんな気持ちなんだと思う……


 でも、やっぱり嫌な感じがしない。


 ひろとくんには会いたい……でも吉住くんとも一緒にいたいと思ってしまう……私はどうすれば良いんだろう……


 学園祭の話になって、土曜日に吉住くんは学校に来るって言ってた。


 私達は喫茶店で、土曜日と日曜日で接客担当が変わる……私、土曜日が担当なんだけど見られたら恥ずかしい……



 土曜日の学園祭の日になった。


「森下くんと奥村くんは何処に行ったのよ!」


 綾ちゃんは「2人がいない!」って怒ってた。


 森下くんと奥村くんは、交代の時間になっても戻って来なかった。電話しても出ないし、手の空いている人達で探すことになった。


「遥香はこっち! 一緒に来て!」


「綾ちゃん。私、この格好で外に出たくないよ」


「アンタが外に出たら宣伝になるから来なさい。私が一緒にいるから大丈夫よ」


 結局、私は連れ出された。綾ちゃんと正門の方に行ったら、森下くんと奥村くんが他校の人達と一緒にいた。


「こんな所にいた! 交代の時間が過ぎてるんだけど!」


「ごめん、西川さん。今から戻るよ。ついでに客を連れて行くから。この4人だ」


「あー! この子やん! 前に会った子

! 店員さんなん? 皆、早よ行くでー」


 夏休みに森下くんと一緒にいた人達かな?


「遥香も教室に戻るよ」


「綾ちゃん……私、時間ギリギリまで部室で隠れてるよ。さっきから色んな人に見られてるし……時間になったら戻るよ」


 部室棟までは遠くないし、部室棟から教室までの道も人が少なかったので、私には都合が良かった。



 少し歩いた時だった……


 何か聞こえる……



 これはピアノの音? 今日は誰も使う予定がなかったはずだよね?



 この曲は……懐かしい……


 ひろとくんが、練習していた曲だ。


 私は懐かしい気持ちになって、その音を聞いていた。


 そして……


 えっ! 今の間違えた所……



「ここ難しい……弾けないよ……」


「そうだね、寛人は同じ所で弾き間違えてしまうね。お父さんが弾いてみるから、動きを良く見ててごらん」


「うわー! お父さんはやっぱり凄いね!」



 ひろとくんは同じ所でいつも間違えていた。ピアノの曲も同じ……


 何で? 


 確認しないといけない……私は急いで音の聞こえる所まで走った。


 その時……誰かに呼び止められた。


「相澤さん、少し良いかな?」


 えっ! 何? 急いでるんだけど……


 振り向いたら奥村くんだった。教室には戻らなかったのかな? あまり話した事なかったけど野球部の人だったよね。


「……えっと……奥村くん、何かな?」


「そんなに時間は取らせない。相澤さん、好きなんだ! 俺と付き合ってください」


 えっ……どうしよう……


 でも……早く行かないと……


 男の人は苦手だよ……皆それを知ってるはずなのに……あまり知らないのに何で好きになれるんだろう……私には分からない……


「……あの……ごめんなさい」


「いや……ありがとう。すまなかった」


 奥村くんは教室へ戻って行った。私も管弦楽部の部室に急がないと!


 部室まで走った。ピアノを弾いている人が誰なのか知りたい……

 

 でも、着いた時には誰もいなかった……


 私は時間を潰す目的もあったので部室に残った。そろそろ行こうかなと思っていた時……


「相澤さん、何してるの?」


 何故か吉住くんの声が扉の前から聞こえた。野球部の部室に行っていたみたい。先輩に会うって言ってたもんね。ピアノを弾いていた人を見てないか聞いてみよう。


「吉住くん、聞きたい事があるんだけど、ここを通った時に誰か見なかったかな?」


「いや? 誰も見てないよ。ここでは相澤さんが初めてだよ」


 吉住くんは誰も見ていなかった……私の聞き間違いだったのかな? でも確かにピアノの音が聞こえたんだ……


 教室に戻ろうとした時に吉住くんから誕生日プレゼントを貰った。


 「吉住くんが選んだもので」って言ってたよね。本当に選んでくれたんだ……開けてみたいけど、時間がなかったから後の楽しみにしておくね。


 吉住くんも友達の所に向かうと言っていたので一緒に行く事になった。


 服装が似合ってるって言われた。


 恥ずかしいけど嬉しかったよ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る