第34話 待ち合わせ

「あの背番号『11』って夏に投げてた吉住だよな?」


「準決勝で怪我したらしいぞ」


「じゃあ今日は投げれないんだよな。俺達でも勝てるんじゃないか?」


 相手ベンチが煩わしいな……


 今日は秋季大会の3回戦、西城高校にとっては初戦だ。早川さんが先発で、木村さんがブルペンで練習。俺もベンチではなくブルペンに入る。俺が投げれないのを喜んでやがる……


「木村さん、今日の早川さんは調子が良さそうですが、初戦なので力んでしまうかもしれません。準備だけはお願いします」


 結果として木村さんの準備は不要だった。


 11対1で5回ゴールド勝ちだ。早川さんは1点を取られたが投げきってくれた。打線も、琢磨の出塁から打線が繋がり5回裏の攻撃で6点を奪い試合が終わった。


「寛人ー! 俺めっちゃ活躍したやろ!」


「はいはい、凄かったよ」


「「僕達の方が凄かったよねー!」」


 確かに今日は打線が点を取ったけど、山崎兄弟の二遊間の守備が最小失点に抑えたのが大きかったな。


「投げてて本当に助かったよ」


「ああ、今日はお前達の守備に助かったよ」


 今日投げた早川さんの後に陽一郎が続いていた。琢磨も活躍はしてたけど、バッテリーからしたら失点を少なくする方が大事だから仕方ないと思う。


「琢磨が活躍したのは俺も分かってるけど、バッテリーから見たらそうなるよ」


「「琢磨っ! 僕達の勝ちだね!」」


「寛人は今から病院でリハビリだったよな?」


「今から着替えて直ぐに病院に行くよ」


「なんや、寛人は来られへんのか?」


「琢磨、寛人は今度にしろ。俺達だけで我慢しとけ」


「ゴメン、着替えて監督に挨拶したら先に出るから」


 陽一郎や琢磨が何を言ってるのか分からないな……リハビリに行く事は言ってるけど、その後の約束は内緒だ。コイツ等に言ったら……特に琢磨はついて来そうだしな。相澤さんに今からリハビリに向かうと連絡しとくか。


 監督に挨拶も終わり病院に向かった。



「足の痛みはあるかい?」


「これ位なら大丈夫ですね」


「吉住先生との相談にはなるけど、少しずつ運動を取り入れようか」


「本当ですか! 俺からも透さんに聞いてみます」


 少しずつ走れたら良いんだけどな。秋は無理と分かってても、来年には万全にしておきたい。それまでに走り込みもしておきたい。



 リハビリも順調に終わり病院を出た。スマホを見たら相澤さんからメッセージが入っていた。


『もう試合が終わったの? 早く終わったんだね。私の方が吉住くんより遅くなるかも』


 試合が5回で終わってしまったからな……

連絡を入れて近くまで行っておくか……


「リハビリ終わったよ。試合は早く終わったからね。この前に会った、学校の近くのコンビニに行って待ってるよ」


 これで良し。ここからだと15分位か……



 コンビニに着いてしばらく時間を過ごしていたら「部活が終わったから今から行くね」とメッセージが入った。スマホを閉じたら何か変な視線を感じた。


「ねえ……あそこの……」


「うん……たぶん……思う」


「……西城……間違い……かな」


 こっちを見ながら何か言ってる東光大学附属の制服を着た2人組がいるな……西城高校の制服は目立つのか?


「あの……吉住くんですか?」


「え? そうですけど」


 俺の知り合いなのか? 頭を回転させたが分からないな。何処で知り合った人達だ?


「知り合いの人でしたっけ? ゴメン、覚えてないみたいで……」


「初めて話しますよ」


「そうそう! 私達、中学の時からファンなんです!」


「俺の? 誰かと間違ってませんか?」


「西城高校の吉住くんでしょ?」


「私達、中学の時も何度か吉住くんの応援に行ったもん」


「行ったよねー。東光に進学して来たら良いねって言ってたのに、公立の西城だもん……私達も西城に行けば良かったー」


「あの時の試合も、東光じゃなくて吉住くんを応援してたし」


 何か良く分からないが、一方的に話してくるな……確か中学の時、練習や試合が近くであると来てる子達がいたな……


「練習や近くで試合がある時に来てる人達がいたね……和也や琢磨と話してたから、その友達と思ってたよ」


「あの関西弁の子は私達だけじゃなくて、女の子全員に話しかけてたよ」


「『吉住くんを呼んで来て!』って言ってたのに、連れて来てくれないんだもん」


 いつも琢磨が俺に来いと言って、連れて行こうとしてた理由が分かったわ……行かなくて正解だったみたいだ。


「足は良くなったみたいね。暇そうにしてるし、今から私達と遊びに行こうよ」


「そうだよー。ここで会えてラッキー」


「いや……人と待ち合わせなんだよ」


「えーーっ!」


「じゃあ、連絡先を教えてよ」


 参ったな……どう逃げるか……こんな時は琢磨に押し付けて……違うな、あいつは喜んで突撃して行ってたからな。


「吉住くん、お待たせ。待ったかな?」


 この声は相澤さん……本当に良い所で来てくれた。助かった……


「ゴメンネ。待ち合わせしてる人が来たから行くよ」


「え……あの子って……相澤さん?」


「うん……はい……」


「相澤さん。さっき来たばかりだから待ってないよ。それじゃ行こうか」


 中学の時から知らない女の子が話しかけて来るけど、しつこい子しか居ないんだよな。本当に琢磨に連れられて、一緒に行かなくて良かったと思う。遊ぶ時間より練習の時間の方が大事だ。


 コンビニの出口から出ようとしてたら、さっきの女の子達が相澤さんの事を話していた。


「吉住くん……さっきの女の子達は知り合い?」


「知らないよ。コンビニで急に話しかけられたんだ。相澤さんこそ知り合いじゃないの? 相澤さんの事を言ってるよ?」


「クラスが違うし、話した事のない子だよ。吉住くんは知らない女の子に話しかけられるんだね……ふーん……」


 相澤さんは何か考えてる様子だったけど、コンビニから出た俺達は約束していた中央公園に向かった。



――――――――――――――――――――


私は諦めました…

この物語はスポ根にもなる事を…(*´・ω・)

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