第33話 誕生日プレゼント
「悪い、今日は弁当じゃなくて学食なんだよ」
昼休みになり俺は、陽一郎と安藤に真田、いつもの3人に声を描けた。
「珍しいな。学食なんて久し振りだろ? いつもは学食じゃ足らないって言ってるのに」
「部活があるからだろ? 母さんには、リハビリで運動が出来ない間は昼飯に気を使わなくて良いって言ってるんだよ。早く起きて弁当を作ってもらうのも悪いしな」
「いい事だ。部活に動けない体になって戻って来られても困るからな」
「それじゃ学食に行ってくるよ」
運動部に所属している俺達4人は、弁当の他に、おにぎりを持参している。運動する時は足りないからな。
学食に行き話す奴を探していたが、今日は誰も居ない様子だったので、空いてる所に座り一人で食べていた。
「あら? 珍しい。御一緒しても良いかしら?」
「高橋さん。席は空いてるしどうぞ」
同じクラスで、文化祭実行委員でも一緒の高橋さんだった。相談が出来る相手も居ないし、丁度良いか……
「高橋さん。女の子に誕生日プレゼントって何を贈れば良いんだ?」
「彼女でもできたの?」
「違うよ。世話になったというか……病院で誕生日を過ごしてて、退院の時にケーキを貰ったから、そのお返しだよ」
「そうね……気にせずに使える物や消耗品とかなら相手も気軽に貰えるんじゃない? この前の子でしょ?」
「おまっ……何で分かるんだよ」
「他校の生徒なのに仲が良さそうだったじゃない。見てたら分かるわよ」
「はぁ……この前の子で合ってるよ。ありがとう、参考にさせてもらうよ」
来月って聞いてるけど、何日か聞いてなかったな……誕生日の日に会って渡す訳でもないし聞かなくても大丈夫か……
そのまま放課後になり、部活に顔を出していた。夏の「1」ではなくて「11」と書いた背番号を受け取った。ブルペンに向かう前に、監督と陽一郎の所に向かった。
「吉住、リハビリは順調か?」
「はい。まだ走ったりは出来ませんが順調ですよ」
「そうか、無理はするなよ」
「寛人、土曜日の先発なんだけど誰が良いと思う?」
「土曜日というより、琢磨を先発にしたらダメだ。気分屋だから投げてみないと分からないのでは困る」
「そうだよな……2年の木村さんと早川さんのどちらかを先発にして、琢磨はリリーフだな」
「琢磨には酷だが、試合中はセンターを守ってもらって、攻撃中にブルペンで投げて貰って行けそうか確認するよ」
秋季大会の戦い方も決まり、木村さん、早川さんと話をして、ブルペンで投げてもらっていた。琢磨は外野の守備練習中だ、あいつは……何処に居ても騒いでるから静かで良い。
今日の部活でやる事がなくなったので、帰る事にした。時間もあるし行ってみるか……
いつもの通学路を通り、駅前にあるショッピングモールに向かった。駅と併設されてるから本当に楽だな。
高橋さんの意見を参考にしてみよう。
プレゼントなんて小学校以来だから、何を買ったら良いのか分からないからな。高橋さんから聞いたショッピングモールの中にある店の前までやって来た。
ここに入るのか……?
こんな所に入れないぞ……
確かに売場はあった。しかし、スポーツ用品店や男物の服を売ってる所しか行かないから入れない……
目の前の店は女の子が好きそうな物が売っている。何も考えてなかったが、客も女の子しか居ないじゃないか……
見渡すと、西城や東光大学附属の制服を着た女子生徒ばかりだった……
本当に入るのか?
俺は行くしかないのか?
買うと決めていた俺は、中学の全国大会決勝のマウンドに立った時に感じた緊張感の方が楽だったと思いながら、未知の世界に足を踏み入れた。
店内に入ったら女子生徒の視線に晒された……やはり場違いな所に来てしまったみたいだ。もう諦めて何があるのか見てみるか。
高価ではなくて消耗品や普段使えたりする物って言ってたな……俺の選んだ物で良いって相澤さんは言ってたけど、彼女の好みとか何も知らないんだけどな……
ハンドクリーム? 種類が分からない……
リップクリーム? リップクリームなんて更に分からんぞ……
バスグッズ? 風呂道具なのか? 女性の間では銭湯でも流行ってるのか?
余計に訳が分からなくなってくる……
高橋さんに聞いたのは良いが、さっぱり分からない。頼み込んで来てもらうべきだったか……
困った俺は店内をウロウロと見回っていた。そして壁の棚に並べられた品物が視界に入った。
これは……
消耗品でも普段使いでもない……でも何でだ? これが良いと思ってしまうな。うん、これに決めた。
今まで迷っていたのが嘘のように、俺は品物を手に取りラッピングをして貰い、購入して駅から電車に乗り帰宅した。
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