【注13】さあ、異世界へ!
異世界作品、百花繚乱時代に突入しました。
日々、驚くほどの数の異世界を舞台にした作品が生み出されています。
完全に異世界の身を舞台にしたいわゆるハイ・ファンタジーと、現実世界を舞台とした物語であるロー・ファンタジー、異世界へと旅立つテーマを持つ異世界旅行物はそのちょうど中間と言えるのでしょうか。
かつて私が読んだ異世界への移動が存在する作品と言えば、『ランドオーヴァー』『魔法の国ザンス』『スペルシンガー』『黒の碑』『不思議の国のアリス』『ブレイブストーリー』、アニメ『ピーターパン』『となりのトトロ』、映画『フック』などなどがあります。
これらの作品内の異世界の立ち位置は様々で、主人公の永住の地となる存在であったり、とっぴな経験をしていずれ立ち去る世界であることもあります。一度はその世界の危機を救い英雄となることもあれば、恐ろしい危機に遭遇して這う這うの体で逃げ出すこともしばしばです。
このあたりは作品の主題によるもの、怪奇性が強い作品か、英雄性が強い作品なのか、ジュブナイルなのかというものが強く作用するようです。
どちらにせよ、作家によって自分の作り出したその世界を愛しているのか、それとも単なる狂言回しとして単純に作り出したものなのかが、読んでみると如実に感じ取れるのが興味深いところではあります。
現実世界の描写は恐ろしく精緻で人物の心情描写もたくみなのに、異世界に旅立った途端、たちまち極端な善人か極端な悪人しかいない、ある意味清浄な世界に変わったりするのです。逆説的に、身体的な不安もなくなることが多々あります。
「異世界はとても清らかだ」
「異世界はとても邪悪だ。暗黒時代だ」
「異世界は極めておろかだ」
「異世界はすさまじく発達している。付け入る隙さえない」
「異世界も現実社会と同じく複雑だ。善悪二元論で単純に分けられるものではない」
これらの発想は、実はいずれも同じ根底の考え方から生み出されています。現実世界という白飯をかきこむためのおかずでしかないということです。
完全なハイ・ファンタジーではなく、異世界を現実の対比としてあらわしている意味が、必ず作品には存在します。その点に注意して物語を読み進めていけば、作者の意図をくみ取るヒントになるかもしれません。
また昨今は「異世界転生もの」の物語が多く生み出されています。
現実世界で一度何らかの理由で命を落としたものが、異世界で記憶を持ったまま生まれ変わり、現代の知識を生かしてうまいことやる話です。その逆の形もありますね。
まるで大喜利のような、あるいはラジオのハガキ投稿のような発想の作品の連発はとても面白く、なかなか感心させられます。ファンタジー作品を実にライトに楽しむ現代の傾向が表れているとも言えます。
粗製乱造にはいい面もあります。
作品を生み出した分だけ経済は回りますし、本当にすぐれた作品であれば、おそらく100年後も残っているでしょう。
最近の作品群は、そのタイトルをちらっと一瞥するだけで理解できる手軽さもあります。物語の題名を目にした人がくすりと笑っただけでも、あなたの作品が世に出た意味はあるのです。
さあ、あなたもペンやキーボードを手に異世界へ旅立つ準備を始めましょう!
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※この項目は加筆修正する可能性があります。
幻想闇鍋【彼の場合】 ODANGO WORKS @odangodragon
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