もしかすると



それから僕は、なるべくアデラインの側にいる様にした。



アデラインは昔みたいにすっかり表情が抜け落ちてしまう事はなく、ちょっとずつ明るさを取り戻しているようで、そこはまあホッとしたけど。


話しかければ笑顔で答えるし、穏やかに言葉も交わす。



でも、なんだろうな。


つい最近まで見ていた笑顔とはどこか違っていて。


アデラインなのに、アデラインじゃないような。


モヤモヤした気持ちになるんだ。



そして予想した通り、いつまで経っても義父が屋敷に戻ることはなく。



これもまた僕をモヤモヤさせた。



そうして一週間が経ち、僕はアンドレを通してエウセビアに連絡を取った。


お互いに都合の良い日に来てもらうためだ。



アデラインの側にいて貰いたかった。


過保護と思われても、僕がいない間、今のアデラインを一人にはしたくなかったから。



そう。


僕がいない間ね。



丸一日、出かける予定だから。


もし、その日いち日で話がまとまらなかったら、まあ次の日も出かけるつもり。


その通り、王城にね。



ふふん、甘いですよ義父上。


城に籠ってれば上手く逃げられると思ってるんですか?


帰って来ないんだったら、こっちから行って差し上げます。



もうリミットの残り一年を切る頃。

ここまで来たら相手の変更は出来ないと言ったのは義父上、貴方だ。


この際、義父上とはちゃんと話しておかないといけない、そう思うんですよね。


「嫌い」という決定的な言葉は決して言わない義父上。


本当は気にかけているのだとしても、嫌っている訳ではないとしても、現実としてアデラインが傷ついているんだから、そこの所は理解してもらわないと。



そして願わくば。


これ以上アデラインの傷を抉るような真似は止めて欲しい。


僕たちの結婚後、領地に引っ込もうと何だろうと、アデラインと貴方の血のつながりは消えないんだ。



「・・・最悪の場合、アデラインに言った冗談がその通りになっちゃうかもね」



--- アデルの代わりに殴っちゃおうかな ---




僕は、ふっと笑みを溢した。



本当。


もしかしたら、もしかするかも、ね。



僕はエウセビアからの返事を待ってから、屋敷を空ける予定をショーンに伝えに行った。



ちなみに、ショーンからは全力で頑張って下さいと力強い応援の言葉をもらったのだ。

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