コロナ(COVID-19)と過ごした25日間-ペット同伴可の施設療養と入院の記録-
2021年 5月24日 保健所の職員が告げる。 「ご報告があります。あなたが感染したのは変異株でした」……そしてマロンが変調をきたす。
2021年 5月24日 保健所の職員が告げる。 「ご報告があります。あなたが感染したのは変異株でした」……そしてマロンが変調をきたす。
電話口に出た私に保健所の職員が告げる。
「ご報告があります。福井真世さん、あなたが感染したのはN501Y株という変異株でした」
嫌な予感は当たった。私は「そうですか」というのがやっとだった。
保健所の職員は「変異株に感染した人には連絡する決まりになっているのでご報告しました。ホテル療養先には、私からもう伝えてありますので福井さんが何かする必要はありません。失礼いたします」
あっさりと電話が切れる。私はすぐにスマホで「N501Y株」と検索した。
最近流行している変異株で、子どもに感染しやすいこと、若者でも重症化しやすい、などの情報がある。
父と母に電話やメールで報告するか迷ったが、今は心配をかけるだけなので止めた。
(治ったあとにわかったことだが、両親は変異株ではなかった。
PCRの検査をした場所が私は公共の検査センター、両親はA病院と違うのでA病院ではそもそも変異株の検査をしていない、とか、検査の精度が低くて診断が間違っているなどの可能性もなくはないが、母と父とは違うところで私がコロナをもらってきたのかもしれない。すべては謎に包まれている)
夜19:30頃、マロンが突然吐いた。朝ごはんの残りと、黄色い胃液。
げえげえと苦しそうに。
マロンは沢山いいう〇こをする子なのだが、依然として、糞はおろか、おしっこもしていない。
マロンの吐いた後を掃除しているとA病院に入院している母から着信があった。
私はマロンの状況を話した(自分の状況は話さなかった)
「ストレスだよね」
母はそう言う。私は、スピーカーモードにしてマロンに母の声を聴かせることにした。
(母がガラケーなのでfacetimeというテレビ電話は出来なかった)
「マロン、ママだよー」
マロンがぴくり、と動いた。
少しだけ頭をキャリーから出して鼻先をひくひくさせている。
耳がぴくぴく動いている。
「マロン、もう少しでおうち帰れるから、ママ迎えに行くから、ちょっとだけ頑張ってね。
マロン、マロン、大好きよ」
……私はマロンが鳴くかと思ったが、鳴かなかった。ただ、じっと不思議そうな顔で耳を傾けているだけ。
「ちゃんと、ご飯食べて。しーしーとうんうんするのよ」
「お母さん、マロンちゃんと聞いてるよ。お耳が動いてるよ」
少し静かになった、と思ったら電話口の向こうから嗚咽が聞こえてきた。
「お母さん、大丈夫?!」
「真世に会いたい、パパに会いたい。マロンに会いたいよ」
「うん……」
大丈夫だよ、すぐ治るよ、と言えなかった。それぐらい、私の体調は悪かった。
腋の下をアイスノンで冷やしても、体温は38.8度。(多分実質40度はあったのだろうと思う)
咳もひどくなってきている。
状況は、良くなかった。でも、母の声が思ったより元気そうなので、案外母が一番早く退院するかもしれない。せめてそれまで、ここにいたい。入院したくない。私がいても、ここまでおかしくなっているマロンを保健所送りになんて、したくない。
いただいた氷枕、持ってきた冷えピタとアイスノン。処方された解熱剤。それらを利用して、母や父が退院するまで時間を稼がなくては。
私の体よ、頼むから、持ちこたえてくれ。
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