第9話
え??何故だ??なんでエリカがそれ(コ●ドーム)を持っている?
それは来たる聖戦の日に備えるべく、引き出しの奥の二重底に厳重に保管していたはずだ。
「ちょ‥‥‥エリカそれは駄目だ!」
「???なんでー?あ、ギザギザ付いてるこっから開けるんだ」
包装袋のギザギザに手を掛けて開封しようとするエリカ。
「やめろおおおおおおおおおお!エリカ落ち着くんだ‥‥‥それを置きなさい」
「落ち着くのはお兄ちゃんだよ、何かいつになく焦ってるし、益々怪しーんだ!」
「いや、ちがう、ちがうぞ、」
「じゃあ開けてみてみても良いよね」
ピリッと音をたて袋に少し切れ込みが入る。
「ああぁぁぁーーーー!!!開けちゃらめぇぇえええーーー!!」
「お兄ちゃんうるさい‥‥‥何かさっきから本当変だよ、いつもの冷静なお兄ちゃんじゃないみたい、これってそんなに大事なものなの?」
「そっ、そう!大事なものだ、紳士の礼儀にかかせないものなんだよ、一種のマナー用品で挨拶道具みたいなものものなんだよ」
マナー用品‥‥‥間違ってはないよね‥‥‥?
「マナー用品??じゃあお兄ちゃんは良くこれを使ってるの!?」
「いやっ、今はまだ自主練の使用に止まってるというか。でも近いうちに使う予定‥‥‥だといいと思ってる‥‥‥多分」
「???訳が分からないよ、自分1人で使うものじゃないの?」
「ま、まあ本来はな、本番ではツーマンセルで使うというか、その、そんな感じだ」
「ふーーん?そうなんだ?よくわかんないけど2人いれば使えるんだ?」
「い、一般的にはそうなるな」
そう答えると
数秒うーーーんと何やら考え込んだ後、顔を上げ、ニコッと笑うエリカ。
「わかった!じゃあさっ、私が相手してあげる!お兄ちゃんとこれ使うっ!本番する!」
what??????
「相手がいれば良いんでしょ?私がお兄ちゃんのお相手してあげる」
「いや、それは出来ないって」
「むぅぅぅーーーう!なんでなんでなんでぇ!
最近お兄ちゃん帰り遅かったり、部屋に閉じこもったり、今だって隠しごとばっかり‥‥‥お兄ちゃんは妹に隠しごとしちゃ駄目なんだもん!個人情報全開筒抜けじゃないと駄目なのにっ!
それからお兄ちゃんとこの道具つかって本番するのぉ!」
いやそれはおかしい‥‥‥あと全然意味分かってないのに本番とか言うの止めて、頼むから。無邪気って怖い。
「個人情報情報全開は流石に無理だって、そんなメンヘラ彼女みたいなこといわれてもな‥‥‥」
「メンヘラじゃないもんっ!お兄ちゃんひどい、私はただ心配してるだけなのにぃ、ええ~ん」
嘘泣きを始めるエリカ。
エリカがこうなると長い、確かに最近、文化祭やら動画投稿やらで、全然構ってやれてなかったのは事実だ、なんだかんだいってもエリカは本当の妹のような大事な存在で、俺の事をいつも気に掛けてくれる優しいやつだ。そんなエリカに寂しい思いをさせるのは俺とて気が引ける。まあ、それにしては普段の俺への絡み具合が上限突破してる節があるので、慕ってくれるのはとても嬉しいのだがそこに関しては、いささか再考して欲しい所ではある‥‥‥引き出しをまさぐられたあげくコ●ドームとか発見されたら、俺の立つ瀬がないからね‥‥‥?当の本人はそれが何に使われる道具なのか全く理解してないから、なおの事たちが悪い。しかも万一、他の家族にこんな事をばらされようものなら、思春期真っ盛りの高校生にとって死刑宣告に等しい。まあうちの母親に関していえば「あら、しっかり(避妊)してるのは良い事ね、でもあなたもそんなお年頃になったのねー‥‥‥うふふ青春ね」とか言い出しかねないが、どの道絶望でしかない。
兎にも角にも、取りあえずはそれを返してほしい‥‥‥そんなもの(コ●ドーム)握りしめて泣きながら「「お兄ちゃんとこれ使いたい!!本番したいっ!!」」とか叫んでたら、知らない人にみられたら完全に誤解されてしまう。まじて俺通報されちゃうからね?
「エリカ、落ち着け、悪かったって」
「ひぐ、本当に悪かったって思ってる?」
「ああ、思ってるって」
「じゃあこれの使い方教えて」
「無理」
「ふぇぇぇん、お兄ちゃんのばかぁああ」
駄目だ、とりつく島もない。
こうなったら仕方ない、久しぶりにあれをやるか‥‥‥
「エリカ、ほらこっちおいで」
俺は自分の膝をポンポンたたく、嘘泣きしてた指の隙間からこちらをちらとみて、とてとてとこちらへ向かってきて、俺の膝に座るエリカ、枝毛ひとつない、ストレートの綺麗なブロンドヘアが俺の目の前に広がる、その金髪を優しく、手櫛ですく。
「ひゃん、はぅぅ~」
右手で軽く髪にふれながら、左手で頭を優しくなでる。
「ふぅぅ、お兄ちゃんのこれすきぃ~」
さっきまで動物の様に暴れまわっていたエリカが、とろーんとした顔をして、一気に大人しくなる。昔から、エリカが癇癪を起こした時や、泣き止まないときなどにこうしてやったものだ。
その隙にエリカが手に持っていたマナー用品(コ●ドーム)を掠めとる。
「ねぇお兄ちゃん、他の女の子にこういう事したら駄目だからね」
「いや、クラスの女子にいきなりこんなんしたら事案だろ__」
と、いった所で口をつぐむ、この間の虎見との事を思い出す。そういえば、不可抗力とはいえエリカ以外の女子とあんなに近づくのは始めてだったな‥‥‥あの時の事を振り返っていると、なんかどきどきして、思わず撫でる手の速度も速くなっていた。
サスサスサスサスサスサススススススススススス!!!
「はわわっ、はぁ~ん!お兄ちゃんはやいぃ!でも嫌いじゃない~きもちぃよぉ」
「ほれほれ」
「はあうっ、ああんっ!そこ良いっ、!きもちいっ!もっとぉ~」
「ほーらこれならどうだ?」
更に手首にスナップをかけ、撫で回す。
シュシュシュシュッシュッシュッシュッシュココココココッッ!!!
「ああーーっ!!!もうらめぇ~~~~~~っ!!!」
そのまましばらく頭を撫で続けていたら、気がついた時にはすぅすぅと寝息をたて、エリカは眠ってしまっていた。‥‥‥やれやれなんとか収まったか、しかし今回は危なかった。今後はエリカの不満が爆発する前に定期的にガス抜きしてやらないとな‥‥‥また勝手に突拍子のない行動を起こしかねない。
そうだ、今度久しぶりにあそこに連れて行ってやろう、俺とエリカの秘密のあの場所に__
そんな事を考えながらうとうとと俺も眠りにつくのだった。
大人気の歌い手である俺が、告白してフラれた上に利用されそうな件について。 ヒモートワーカーズ @himohimo1234
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。大人気の歌い手である俺が、告白してフラれた上に利用されそうな件について。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます