第9章 指名手配犯として③
「手っ取り早く済ますには邪魔な人格を消し去ってしまうべきなんでしょうけど、それだと後々の楽しみがなくなっちゃうのよねぇ・・・まぁいいわ」
「???」
「儀式についてだけど、私が外側を彼女に相応しい器へと着飾ってあげるんでお前は内側から彼女のお越しを願い続けなさい」
儀式とは名ばかりで実際には外面からの洗脳に加え、内面からのマインドコントロールを施す強固な催眠術である。喪服女は手始めに剥がれかけた爪に除光液とマニキュアで修復を施していき、奈津子の方はミラーアプリを顔全体が写り込む位置にセットすると『私は口裂け女、私は口裂け女・・・』と呪文を唱えるようにして自己暗示を掛け始めた。爪に続いて顔のメイク直しに取り掛かると外見上からは再び面影が失われていき、奈津子は変わりゆく姿に悲しみを覚え瞳からは自然と涙が溢れ落ちてきた。
「何やってるの!勝手に器を汚さないでくれるかしら。この身体はもう彼女のモノなんだから邪魔しないでさっさと入れ替わっちゃいなさい」
「すいません」
今の奈津子には涙を流すことすら許されず、新たな所有者が気に入る環境作りに努めなければならなかった。その間も飾り付けは滞りなく進み、ルージュを引けば外側が完成の段階にまで差し掛かった。すると奈津子自身にも変化が起こり、暗示が『あたしは口裂け女、あたしは口裂け女・・・』私からあたしへと変わりだしていた。
佐伯奈津子は以前と同じく潜在意識と顕在意識の狭間を彷徨っていた。今回も宛もなく漂っていると突然闇の中から手が伸び出し奈津子の足首を掴んだ。余りの恐怖に全身が硬直して動けなくなってしまうと奈津子の身体を伝って1人の女性が這い出してくる。そのまま奈津子の背後に立ち耳元まで顔を近づかせて囁き出してきた。
「呼ぶのはだ・あ・れ、あたしを呼んだのはあなたかしら」
奈津子が振り返るとそこには自分と容姿が瓜二つの女性が立っていた。唯一違っていたのは女性の口が左右に大きく広がっている所だけである。
「私の名前は佐伯奈津子、今は口裂け女と言う方を探しています・・・もしかしてあなたが口裂け女さんですか」
奈津子は女性の問いかけには答えず、逆に質問を投げかけた。女性の方も同じく何も答えずただ笑みを浮かべ続け・・・不意を付いて奈津子の両肩を押した。
「そうあたしがお探しの女・・・あんたの役目は終わったの」
バランスを失い倒れ込んだ奈津子は運悪くそのまま闇に落ちてしまった。手足をバタつかせてもがき続けているうちに闇へと引き込まれ、暫くすると体力が完全に尽きて潜在意識の奥深くへと沈んでいってしまった。奈津子の姿が見えなくなるのと何を思ったのかアップスタイルで固定させていた髪を解いてストレートへと伸ばした。すると女性の爪や唇の色が少しずつ真っ赤に染まりだし、最後には目も鋭利な形へと変化していった。
「これまでのあんたって邪魔で目障りな存在でしかなかったけど1つだけ感謝してんのよ。幼く見窄らしかったあたしの身体を、あっ、あ~ん、こんなにまで魅力的なボディーへと成熟させてくれたんですもの」
女性は全身を打ち震わせて満足げな表情を浮かべると肉体の成熟具合を確認すべく、たわわに実ったバストを両手で弄り(まさぐり)出した。
「後はこのわがままボディーをあたしの思うがままに操り・・・ハァ~ん、た~っぷりと楽しませてもらうんだから、あああ~ん、あん、き、気持ちいっい~・・・・・・・・・・こっちはどんな感じかしら、うふふふふー」
女性の右手がゆっくりとした動きで下半身へと伸びていく。
生きる都市伝説 まーちゃん0034 @markun0034
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