第32話 カワセミのなみだ――争いの連鎖
ヨダカ兄さん ほんとに ごめんなさい
あのとき ぼくが しっかり 兄さんの
気持ちを わかって あげていたら……
*
いじわるな タカの やつに 市蔵 などと いう まるで 人間 みたいな
俗っぽい 名前を おしつけられた うえに 「首から 名札を ぶらさげて
鳥の 家を 一軒 ずつ あいさつして まわれ」 と 命じられた 兄さん
ヨダカ という 名前 だって 兄さんが このんで つけた わけじゃない
生まれた ときから 決まって いたのに 迷惑 だなんて あんまり だよ
いくら タカが つよく いばっていて だれも かなわないから といって
ほかの 小さな 鳥たち まで いっしょに なって ヨダカ兄さん のこと
みにくい だの のろま だのと ののしったり さげすんだり した(~_~)
巣から おちた メジロの あかんぼうを たすけて やった とき だって
しんせつに 連れて 行った 兄さんを 親鳥は どろぼう あつかい した
そして すごい いきおいで あかんぼうを とりかえすと あるまいことか
「ケーケケケケッ」と あざわらったのだ 兄さんは ぬれぎぬを きせられた
*
そりゃ たしかに ヨダカ兄さんは 美しいとは いえない かも しれない
だが ぼくら 身内から すれば なんとも やさしい 味のある 顔だった
いやいや いまさら ぼくが そんなことを 言うのは 卑怯だ(ノД`)・゜・。
追いつめられた 兄さんが さいごの 別れに 来てくれた とき だって
ひとり とりのこされる さびしさ ばかりに とらわれて いた ぼくは
行き場を うしなった 兄さんの 絶望に よりそおうと しなかった……
赤く うるんだ 目から カワセミは ハラハラ なみだを こぼしました
*
星に なった ヨダカ兄さんを 見るのが つらくて 川岸の 森の おく
ふかくで ふるえている カワセミが ある朝 寝不足の 目を うっすら
あけて みると 大いそぎで こちらに むかって 来る ものが います
それは 南の国で 花の 蜜を とっていた 末弟の ハチスズメ でした
ハチスズメは 次兄の カワセミに 似た 極彩色の 羽を もっています
この 美しい 2羽が ヨダカの 兄弟? なんと 皮肉な 運命でしょう
*
駆けつけた ハチスズメは けんめいに カワセミの 兄を はげまします
――カワセミ兄さん どうか しっかり なさってください
もし カワセミ兄さん まで 天へ 行ってしまったら
ぼくは この世で ひとりぼっちに なってしまいます
自分を ゆるせない 兄さんの 気持ちは わかります
けれど ヨダカ兄さんは 幸福 だったんじゃないかな
たしかに ヨダカ兄さんは 太陽や 星にも そむかれ
まっさかさまに この 地上に むけて おちて きた
でも 地上に つく 寸前 ヨダカ兄さんは 雄々しく
舞い上がり あれほど なりたかった 星座に なって
みんなの 役に 立つことが できた であれば こそ
さいごに ヨダカ兄さんは ほほえんで いたんだ 🌠
話し おえた ハチスズメは カワセミの 半分 ほど しかない 小柄な
からだを よじり 全身を 身もだえ させながら おんおん 泣きました
*
沈んでいた カワセミは 魂魄を こめた 弟の ことばに うたれました
――おまえの 言う とおり 兄さんは やりとげた 自分に
満足している なのに ぼくは タカや その仲間たちに
仕返しする ことしか 考えていなかった 星に なった
ヨダカ兄さんが そんなこと よろこぶ はずがないのに
*
その夜……🌟🌟🌟
カワセミと ハチスズメの 兄弟は 1本の 細い 梢に 仲よく ならび
カシオペア座の よこで 青く またたく ヨダカの 星を 仰いでいます
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