(4) ※ネタバレ有
さて、読者諸賢へ一応注意だ。今から俺はモノローグの中で、『ポートピア連続殺人事件』のストーリーを一から十まで喋ってしまう。未プレイで、これからプレイする予定や、YouTubeで実況動画を見る予定がある人は、残念だがこれ以降を読まない方が良いと思う。え、いい? ほんとに? 言っちゃうよ?
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ファミコン版『ポートピア連続殺人事件』はおおよそ次のようなストーリーだ。
神戸市内の大きな館に住む資産家の
主人公である刑事のボスは、部下の刑事ヤスこと
①第一発見者で山川の秘書の沢木文江にはアリバイがあった。取り調べで文江は、事件発生日の7時から10時まで英会話学校に通っていたと供述した。彼女は、短期大学を2年で卒業してすぐ秘書となり、働きながらスキルアップのために英会話学校にも通っている努力家だったのだ。
②第一発見者で山川の家の使用人であった小宮六助にもアリバイがあった。取り調べの結果、事件が発生した21時頃、彼は街に飲みに出ていた。彼は自分を雇ってくれた山川に恩義を感じており、山川を殺害すれば自分も職を失うわけだから、殺害の動機もない。ただし彼は、事件が起きた日、玄関の鍵をかけ忘れたまま外出してしまっていた。これは犯行が誰にでも可能だったことを意味する。
③山川の甥である山川俊之にもアリバイがあった。捜査の結果、俊之は事件発生日時に違法薬物の取引を行っていたことが判明する。また俊之は無職で、山川に金をせびって暮らしていたため、殺害の動機もない。
④山川に多額の借金があり、事件前後で失踪していた平田は、最終的に京都の山中で首を吊って自殺していたことが判明する。ヤスは平田が犯人であり、山川の殺害を気に病んで自殺してしまったのではと推理した。しかし平田の死亡推定時刻は、山川の殺害よりも前だった。平田の遺書には山川のことは書かれていなかった。
⑤平田の娘である平田由貴子は、実は事件当日、死亡推定時刻のおよそ2時間前に山川の屋敷を訪れていた。由貴子は父の借金を助けるため、さらにお金を借りられないかと山川に頼みに行っていたのだ。山川は平田を助けることを由貴子に約束していた。そのため由貴子が山川を殺害する理由が考えられない。
⑥最後の被疑者、川村まさじは、詐欺の常習犯であった。ボスとヤスは、川村と親しかったストリッパーの
ここでこの「連続殺人事件」における、2件目の殺人事件が起きる。ボスとヤスは、おこいの証言によって川村の自宅を突き止め、事情聴取のために彼の住む小さなアパートに向かったのだが、川村は山川と同じように室内で首を切られた死体となっていたのだ。死体を確認するとまだ温かく、2人の到着直前に殺害されたことが分かった。ヤスは、川村こそが山川を殺害した犯人であり、逮捕を恐れ自殺したのではと推理した。しかし、詐欺の常習犯で前科持ちの川村が、その程度で自殺するはずがない。
2件目の事件後、おこいの証言によって、川村が山川と共に詐欺を繰り返しており、特に淡路島の洲本で行った詐欺によって被害者夫妻を自殺に追い込んだことと、その夫妻の子供だった2人の兄妹のうちの1人が山川の秘書の沢木文江であったことが判明する。そして、川村の死後に自宅から見つかった地図を使って、山川の屋敷の地下にある迷宮を探索すると、隠し部屋から山川の日記が発見される。この日記から、山川が文江の両親を自殺に追い込んだことを悔い、罪滅ぼしのために文江を雇い、自分の死後に文江に資産を残せるよう計らっていたことが判明する。ヤスはこの手紙を読み、文江の兄の心情に思いを馳せ、文江の兄がもし犯人だったとしたら後悔しただろうと声を震わせた。文江の兄は行方不明で、肩に蝶の形のアザがあるというヒントだけが残る。
そしてラストシーン。プレイヤーから見ると明らかにギャグ要素に見える、取り調べ相手の服を脱がせる命令を主人公の相棒のヤスに繰り返すと、ヤスの肩に蝶の形のアザがあるのが見つかる。ヤスは文江の兄であり、自分の両親を自殺に追い込んだ山川と川村を恨んでいた。この2人を殺害したのはヤスだったのだ。ボスがヤスを取り調べている最中に文江が現れ、山川の遺体を発見した際に壁を壊して入った後、内側から鍵を差し込んで密室を偽装したことを自白する。文江はヤスを助けるために、山川を密室内での自殺に見せかけ、捜査を撹乱しようとしていたのだ。
筋書きだけ振り返ってみれば、テレビドラマとかでよくあるサスペンスにも見える。だが、日本のアドベンチャーゲームの草創期に、主人公の相棒が犯人という衝撃のどんでん返しをぶつけたため、当時相当な社会的反響があったらしい。そしてこのゲームをデザインした堀井雄二こそが、後に『ドラゴンクエスト』シリーズを生み出したのから、伝説にもなるというものだ。俺が生まれるずっと前の話なので、父親とネットから得た情報だったが、とにかくインパクトがあったゲームだったということだけは知っている。間違いなく名作中の名作と言えるゲームだ。
ちなみに、ゲームの難易度としてはそこそこ高く、適切な選択肢を選んできちんとフラグを立てていかないと正解には辿り着けない。しかも技術的な問題でセーブ機能がない。俺が小学生のときにやった時は、父親にヒントを出してもらいながら考えて、およそ4時間くらいかかった気がする。でも峰岡だったら、ゲーム初心者とはいえ小学生の俺の知能などと比べ物にならないくらい情報処理能力が高いから、その半分で終わりそうだ。
そんなことを考えながら作業しているうちに、即席麺が完成した。峰岡を待たせているので、行儀が悪いが片手鍋から直接食べる。クーラーで少し身体が冷えてしまったので、温かいスープが内臓にしみた。そういや、峰岡もノースリーブだったので、クーラーで身体が冷えてしまっているかもしれない。温かい紅茶でも入れてやるかと、電気ケトルをセットしておいた。ティーポットにティーバッグを入れ、ソーサーにアーモンド入りのチョコを添える。昨日峰岡がチョコが好きだと言っていたので、昨日用意しておいたのだ。
呑気に俺がお盆にティーセットを載せて自室の扉を足で蹴って開けた瞬間、サイレンのような音が鳴り響いてビクッとしてしまった。びっくりしてテレビ画面を見ると、「ポートピアれんぞくさつじんじけん おわり」の文字が浮かんでいる。このゲームのエンディングだ。
「え、これでおわり?」
峰岡はぽかんとした顔で画面を見つめていた。その姿を俺が唖然として見ていると、峰岡は俺の方を振り向いて、こう言った。
「これ、ほんとに犯人はヤスさんなんですか?」
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