だってお義姉様が!

砂月ちゃん

だってお義姉様が

ある日の事、わたくしが庭で草むしりをしておりますと、町の方から立派な馬車に乗った貴族の方々と馬に乗った護衛騎士様達が数人いらっしゃいました。



「◯◯ーーーーー?」



はい、◯◯はわたくしですがどちら様でしょうか?



「「「!?」」」


「ーーーーー!」



義妹いもうとの学院のご友人方?

まぁ、遠い王都からわざわざ?あいにく彼女は領地こちらには来て居ませんわ。

王都の屋敷に居るのではなくて?



「ーーーーー!」


「ーーーーー?」



義妹いもうとは、領地こちらには一度も来た事がありませんわ。



「ーーーーー?」



わたくしですか?

亡くなったお母様の療養の為に共に領地こちらに移って来て以来、一度も王都に行った事はございませんから、義母にも義妹いもうとにも会った事がないのです。



「ーーーーー?」



いえ、お父様からは『再婚する事になってわたくしより一歳下の義妹いもうとが出来る。』と一度お手紙を頂いただけで、本当に会った事はありませんわ。



まぁ、一歳違いと言いましても実際には、数ヶ月しか誕生日は違わないのですけどね。

お母様がご存命中に、お父様が外で作った庶子ですし……



「ーーーーー。」


「ーーーーー?」



そういえばお父様もお母様が亡くなられて以来、領地こちらにはいらした事はありませんから、もう十年近くお会いしていませんわね。



あちらの皆様、お元気でしょうか?



あら?どうなされましたの?

皆様そんな真っ青な顔をされて?

旅の疲れがお出になったのかしら?



宜しかったら、家で暫くお休みされて行かれては?



あいにくと婆やが亡くなってからは一人暮らしで、たいしたおもてなしも出来ませんけど……



あらまぁ、よけいに顔色が悪くなってしまいましたけど、大丈夫ですか?



「ーーーーー。」



えっ?町に宿を取っているから、そちらにお戻りに?

お気をつけてお帰りくださいませね。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



それから暫くして、王都からこの前いらした義妹いもうとのご友人の方からお手紙を頂きました。



手紙を持って来られたのは、あの時一緒にいらしていた王太子殿下の護衛騎士の方達です。



まぁ、あの方宰相様の御子息でしたのね。



『先日はたいへん失礼致しました。貴女様にお会い出来ていなかったら、我々はとんでもない間違いを犯すところでした。


貴女様のは、王都の学院で一度も会った事の無い貴女様を悪役にして皆の同情を買い。


王太子殿下を含めた我々側近に近付き、婚約者との関係を壊して国家転覆を図ろうとした罪でとして【最果ての修道院】に送られる事になりました。』



あら、たいへん!【最果ての修道院】といえば、『そこに入ったら生きて帰る事が出来ない。』と有名な世界一厳しい修道院ではありませんか!



そんな所に送られるなんて、義妹いもうとは何という罪深い事をしてしまったのでしょうか?



『貴女様のお父上◯◯伯爵ですが、入婿で貴女様の義妹には爵位継承権がありませんでした。そして伯爵はこの十年間、一度も領地に戻らず領地経営も全て代官に任せきり。


その代官も伯爵のチェックが甘い事を知っていて、数々の横領を働いていた事が発覚し、王都で裁判に掛けられる事になりました。


その調査中、貴女様に渡されるはずの予算も横領していた事が発覚したのです。


つきましては、裁判と正当な伯爵家の後継者としての手続きもございますので、一度王都においでください。』



まぁ、どうしましょう?

わたくし王都に着て行くドレスなんて、持っていませんわ。



「ーーーーー。」



えっ?『成人の儀※1の時のドレス』ですか?

お金が無かったので、お母様の古いドレスにわたくしが編んだレースを付け足したりしてリメイクしましたけど?



そう言えば、代官の娘は『王都のドレス屋で作って貰った』という、水色の凄く高そうなドレスを着ていましたわ。

彼女にはまったく似合っていませんでしたけど……



わたくしもあんな綺麗なドレスを着てみたかったです。 



「ーーーーー!」



えっ?あのドレス、本当はわたくしのだったのですか?

道理でサイズは合っていた様ですが、彼女の茶色の髪には合っていませんでしたのね?



わたくしは我が伯爵家特有の銀髪ですから。

アレは、横領した物でしたのね。

あら?では義妹いもうとはどうしてましたの?



伯爵家の血を引いていなかったから、銀髪では無かったのではなくて?



「ーーーーー。」



まぁ!?本当は焦茶色の髪でしたの?それを三歳からずっと染めていたのですか?

それでは随分と髪が傷んでたいへんですわね。



「ーーーーー!」



えーーー!?髪を傷め過ぎて最近は髪が薄くなってしまい、学院に入学してからずっとかつらだったのですか!?



十五歳の令嬢が……

それはまぁ、ご愁傷様です。



ところでどうやって王都に行ったらよいのでしょうか?

わたくし、王都までの路銀がありませんわ。



それに王都に行っても、何処に泊まればよいのかしら?

王都の屋敷には、まだ義母が居りますし……



「ーーーーー。」



あら?お手紙を届けてくださった貴方方が王都まで、連れて行ってくださるの?

王都での宿泊場所は、宰相様が提供してくださる?



まぁ、本当に至れり尽くせりですわね♪



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


残念ながらこの時、わたくしを王都まで護衛してくださった護衛騎士の方とラブロマンスが起こる事はありませんでした。



王都での裁判の間は、宰相様のお屋敷に泊めて頂き、奥様や御子息様にもたいへん良くして頂きました。



御子息の婚約者の方も、時々様子を見に来てくださりましたわ。

最初は警戒されておられましたが、そのうち王都で流行りのいろいろな場所にも案内して頂き、領地に帰った今でも文通をさせて頂いております。



裁判もスムーズに進みその結果、お父様が持っていた伯爵位の速やかな譲渡。

今まで横領していた権利や財産の弁償としてお父様と義母は、全財産没収の上、足りない分は犯罪奴隷として炭鉱で強制労働をして返して頂く事になりました。



『今まで贅沢三昧をしていた付けがまわったのだ。

いつまで持つか見ものだな!』



と宰相様がおっしゃっておりましたが、わたくしとしては、財産を返して頂けるのなら長生きして頑張って頂きたいです。



それからわたくしのお金等を横領していた代官一家も、犯罪奴隷として売られて行く事になりました。



『なんで私が、犯罪奴隷にならなきゃいけないのよ!

あのドレスがあの見窄らしい女のだって知らなかったんだから、仕方ないでしょ!!』



と、代官の娘が衛士から奴隷商に渡される際に叫んでいたそうですが、わたくし知ってます。



王都からの荷物にハッキリわたくし宛と書いてあった物まで持って行きましたわよね。



何故、わたくしがそんな事を知っているかと言いますと、幼馴染みや知人が何人か伯爵家で働いておりますの。



ですから本当は義妹いもうとが何をしていたか知っていましたのよ。



馬鹿な義妹いもうとが尻尾を出すのをずっと待っておりました。

わたくしだけの力ではあの人達を伯爵家から追い出す事が出来なかったので、王太子殿下や宰相様達には物凄く感謝しております。



そ、それにしても義妹いもうとかつらを外した頭!

アレはというよりですわね!!



その姿は裁判を見ていた貴族だけでなく、大々的に新聞にも写真が載り、全世界の人々の目に晒される事になりました。



ある意味、【最果ての修道院】に行く事になって良かったかもしれませんね。

わたくしでしたら、恥ずかしくて外を歩けませんもの。



今でも思い出すと、笑い過ぎてお腹が痛くなりますの!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


さて、事件の顛末はこんな物ですわ。

コレでご納得頂いたかしら?



ですから義妹いもうとの息子を名乗る貴方には、例え本物であったとしても【伯爵位を継ぐ権利】はありませんの……



あら?貴方と長々とお話ししていたら、ちょうど旦那様が王都から帰っていらっしゃいましたわ。



「ーーーーー!」



まぁ、もうお帰りになるの?

もう少しゆっくりして行かれたら良いのに……



「ーーーーー!」



そう…どうしてもお帰りになるの?

では、気をつけてお帰りになってくださいね。



出来れば旦那様に見つからないうちに!!



それにしても、【最果ての修道院】に行った義妹いもうとの息子だなんておかしな話ですわね。



もし修道院に行く前に身篭っていたとしても、あそこからは、絶対にのですから。


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※1


【成人の儀】


十五歳の時に行われる成人式の様な行事。











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