この最新型ロボ動かしづらいんですが!!

ちびまるフォイ

たたかえ!最新ロボット!

「これを……俺に……!?」


「ああ、君はこれまでも多くの巨大怪獣を倒してきた。

 君にならこの最新ロボットを操縦するのにふさわしいと思った」


「任せてください!」


そのとき、ドシンと地面から突き上げるような振動を感じた。


「怪獣め……さっそくおいでなすったか……!!」


「さあ、今こそこの最新型ロボットで戦うんだ!!」


「はい!!」


パイロットはコックピットに乗り込んだ。

新品おろしたてのロボット特有の匂いがする。


「覚悟しろ怪獣め!! もう今までのようにはいかないぞ!!」


パイロットはロボットの電源を入れた!!





『ただいま、起動ソフトウェアをダウンロードしています……20%』


コックピットの窓にはちっとも進まないゲージが表示された。



「あの……」


「なにかな?」


「ソフトウェアをダウンロードって出てるんですが……」


「なにせ最新のロボットだからね。たくさんの最新ツールと同期させるため

 ソフトウェアの更新があると自動でやってくれるんだよ」


「いやそれよりも怪獣が来てるんですよ!?

 ダウンロードをすっとばして動かせないんですか!?」


「そんなことできるわけないだろ!

 ロボットの制御にもソフトウェアが使われているんだから」


「え、ええ……?」


しょうがないので怪獣がここへ来ないことを祈りつつダウンロードを待った。

ダウンロードのゲージは急に早くなったり遅くなったり、山の天気よりも変わりやすい気分にイライラさせられる。


やっと100%になるかと思いきや99%で急ブレーキしたり、

ダウンロードが終わったかと思いきや今度はインストールでまた待たされる。


街の半分以上が壊滅したころ、やっとソフトウェアのダウンロードが終わった。


「よし、これで動かせる!! いくぞ!!」


操縦レバーを一気に動かした。

その瞬間に、コックピットの窓は白くにごり外が見にくくなった。


「あ、あの! ロボットが動かないんですけど!」


「あーー……もしかして、一気に動かそうとした?」


「はい……それがなにか?」


「さっき、最新のソフトを入れているといっただろ?

 中にはCPU負荷が高いものだってある。一気に起動させたら応答なしになるんだよ」


「はぁ!?」


よく見ると、コックピットの窓には「応答なし」と表示されている。


「もう怪獣が好き勝手暴れてるんですよ! 早く動かしてください!」


「わかってる。今負荷の高いソフトを終わらせてるから……よし、OKだ」


「ロボット、発進!!」


レバーを再び倒すがやっぱり動かない。今度は応答なしでもない。


「なんで動かないんですか!!」


「最新型だからボイス操作とタッチパネル式なんだよ」


「このレバーの意味は!?」


「人間にだって使わないけど手に水かきがあったり、

 電気自動車にだって使わないけどマフラーがあるだろう?」


「コックピットの機能は最小限にしてくださいよ!!」



『こんにちは。私はロボット操縦アシスタントのオルタナ。

 まずはあなたのユーザー登録をしましょう。

 あなたの生年月日と名前、初恋の相手の名前を教えください』


今度は自動音声がコックピットに表示される。


「どうだすごいだろう。最新のAIなんだぞ」


「俺、操縦している間ずっと喋り続けなくちゃいけないの!?」


「もちろん。ボイスコントロールだからな」


「もういい!!」


パイロットはたまらず最新のロボットから降りてしまった。


「おい、どこへ行く気だ!! 怪獣が来ているんだぞ!!」


「知ってますよ!! たしか格納庫に古い巨大ロボットがあったはずです!」


「ここに最新型ロボットがいるのに、なんでわざわざ旧式を使うんだ!」


「戦いは命がけなんです! 意味わからない機能をごてごて追加された最新型より、

 手に馴染んで勝手知ったる旧式のほうがまだいいんです!」


そうこうしているうちに怪獣はついにこの格納庫を突き破ってきた。


パイロットが到着すると、旧式のロボットはしっかり整備されて転がされていた。

コックピットに乗り込むと懐かしい感じがする。


「やっぱり旧式のほうが馴染んでいるなぁ」


キッと目をいっそう鋭くさせると、パイロットは怪獣を倒すべくロボットのエンジンをかけた。


「いくぞ!! 発進!!」



まずはエンジンを温めた!!

エンジンを温めてからじゃないと旧式のロボットは立ち上がらない!


エンジンをかけてある程度落ち着いてからはゆっくりとアクセルを踏みながら、

クラッチを半分くらいまで微妙に踏み込んでレバーを入れる。


レバーは「スタンドアップ」から、ギア1の半分くらいまで動かす。

上半身を起こし終わったらギアをまた切り替えて少しづつギアの数字をあげていく。


ちゃんと立ち上がったら、印刷されてくる起動許可書にはんこを押す。



「さあ! あとはロボット管理局から起動許可稟議書を返送してもらうだけだ!!」



いつもの慣れた手順を高速で済ませたパイロットは

起動許可がもらえるのをロボットもろとも焼き尽くされるまで待ちつづけた。

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この最新型ロボ動かしづらいんですが!! ちびまるフォイ @firestorage

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