第12話 出会い episode7
「いったいこの階層の世界ってどうなっているんですか?」
返事を返さなかった。
確かに聞こえていたはずだ、だが、彼女は振り向こうともしない。
何故だ? 何かいけないことを聞いてしまったのか?
その時だ、あの猫……フリストって言ってた。あの猫が稼働プロセスに割り込んできた。
「彼女にその答えを求めても返っては来ないよ。……知らないからね」
「ええっと、確かフリストって」
「そうだよ。僕は郁美のアーカイブの一部なのさ。それもただのアーカイブじゃない。自立型の思考を持ったアーカイブ」
自立型の思考を持ったアーカイブって? 何?
そもそも、アーカイブっていうのは書庫であり保存されたデーターの貯蓄じゃないのか。それに自立型の思考って言うことはAI機能を有するというか、思考回路を自由に操作することが出来るということなのか。
アーカイブが……。
「ちょっと混乱しているようだね。日本国北東北エリア第4支部106部隊長。柳澤泉君」
「ええっと、正体バレバレなんですねぇ」
「まぁね。君と妹の映美羅ちゃんのアーカイブも僕は自由に開示できるけどね。て、いうよりすでに開示しているんだけど」
「ですよねぇ――――。そこまで正体ばれているんでしたら。だったら話が早くていいんですけど。まずは本当にここは99階層なんですか?」
「そうだねぇ、君らから見ればそう言う言い方もできるんだろうね。でも僕らはその階層自体の外側にいるんだよ」
「階層の外側ってそんなことがあるんですか? またぁ―、僕を混乱させようとしているんですよねぇ」
「あ、理解できないかぁ。そうだよねぇ、そうだなぁ――、こういうイメージかなぁ」
フリフトが言うイメージとは。
僕らがいる世界はフォルダーごとに階層があり、そのフォルダーが一つの世界としてイメージされている。
そのフォルダーの中にまたフォルダーだありそれが連鎖的につながっているというのだ。
しかもどんどん掘り下がっているというイメージしかもっていなかったが実際はその逆で、高層ビルと言うか建造物のように上えと積み重なっているというのだ。
つまり僕らは相当高い位置に存在しているリソースということになる。
ゆえに、末端? この場合先端と言うべきだろうか。新しい階層になればなるほどリソースの分配が狭くなり、行動範囲も小さなものになっていくということらしい。
つまりは僕等がいた本当に末端に近い階層ではイメージされているだけの世界が広がっていて、そこにただヒューマノイドデーターが浮遊しているという状態にしかないということらしい。
そうなれば行動することも少なく少量スペックのリソースで補えるという訳だ。
ただ種の保存を目的とした。保管箱に押し込められているといっても過言じゃないということになるんだろう。
「だから君たちは、電脳AIが作り上げた仮想世界で視覚的に景色と感覚をうえつけられていたにすぎないんだよ。過去の記憶もリソースを使うことが出来ないから、ほとんど削除されている状態。最もその削除されたデータはアーカイブされていて、あ、ようやく見えてきたね。あの竜宮にすべて保管管理されているんだよ」
うっ、いまいちよくわかんねぇ――――、て、言うよりはそれを認知理解しようとすることが出来ないように多分ロックがかかっているんだろうな。
頭を抱えていると映美羅が
「おにぃどうしたの?」と心配そうに見つめていた。
そうか、映美羅にはこのフリストが見えていないんだ。
「ま、今すぐにすべてを受け入れることは、今の君たちには無理なことだからね。そこんところはおいおいと郁美と一緒に居ればおのずとわかってくるというか、データを書き換えることが出来るようになるはずだからね。心配しなくてもいいよ」
「データを書き換える?」
「うんそうだね、もうすでに君たちのバイオデーターは大分書き換えられているから、それになじむまで、時間がかかるかもしれないね。その証拠に、今見ているこの世界の風景がそれを物語っているといったら、少しは謎が解けてきた感じはしないかい?」
「は、はぁ――、よくわかんないすけど、まずはそう言うことでいいのならそう言うことで……」
「うんうん、そう言うことなんだよ」
「で、もう一つ聞いていいですか?」
「なんだい泉君」
「あのぉ――、今どこに向かっているんですかねぇ」
「ああ、ほらあの竜宮さ。あそこが僕らが今目指す目的地なんだ」
次第に近づく巨大な建造物。
その先端は雲を突き破り、はるかかなたの上空にそびえたっている。
竜宮――――。
そこは数知れないアーカイブの集合体であることに……いや、そのなすことの意味さえも俺は理解していなかった。
今は……。
AIバーチャルダウン:そしてアーカイブは囁いた。あなたに私のすべてを捧げますと さかき原枝都は さかきはらえつは @etukonyan
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