第11話 出会い episode6
「おにぃ、大丈夫なの、この人についていって」
映美羅は不安そうに問う。
「まぁ、しゃぁーないでしょ。成り行き上、今はついていきましょう」
「ぶー、なんか胡散臭いんだよなぁ、あの人」
確かに映美羅の言う通り、信用にはかけるような外見……いやいや、外見で人を判断しちゃいけない。
しかもこの
「おい、何やってんだ早く来いよ」
「あ、はい今行きまぁす!!」
駅を出ると、そこは荒れ果てた廃墟の街あとが目に映る。
電車に乗っているときは、華やかな街の雰囲気が見えていたのに。
「何ポケッとしてんの? 二人はこっちに乗って」
その声の方を見れば、古ぼけた軍用ジープにかわいらしくも、これまた離れていてもグラマスな体が目に映える女性が運転席に乗り僕らを手招きしていた。
「ねぇ―、君たちこっちだよぉ!」
外見はごくりとつばを飲み込みたくなる。いやぁ―、男っていうのは素直な生き物ですなぁ。
そんな俺を映美羅の冷たい視線が全身に降り注がれる。
「ふぅーん、おにいってJKだけじゃなかったんだ。いやいや、むっつりスケベなのは知っていたけどさ、年上の女にもそのデレってした顔すんだ」
何を言う、これは男の正常な反応だ。
と、反論したいがシスコンである俺は、我が、妹に嫌われたくないという気持ちが先走りついこんなこと言ってしまう。
「映美羅にはかなわないよ」
我ながら、なんていうことを言ってしまったのかと、口にしてから後悔している自分がほんと情けない。
しかもだ、頭をなでなでしながら、髪の感触をそれとなく堪能しているという変態だ。
でもそれでいいのだ。ああ、この髪の感触はなんとも言えない。
「ほんと仲いいんだね。あなた達兄妹なんでしょ。なんかでもさぁ―、それ以上のにおいがプンプンしてるんだけど! あははは、気のせいかなぁ――」
このグラマスなおねぇさん。意外と勘が鋭かったりして……いやいや。照れる。
ま、ここに置いて行かれては困るのもあるし、ちょっと警戒しながらもジープに乗り込んだ。
すると「それじゃ行きますかぁ」とギアを入れジープは動き出した。
「あ、私、
その声のトーンにすごみが加わり「”わかるよねぇ――――おねぇさんっていう――――意味!!”」
「はいはい、そりゃぁもうわかりますとも。ええっと麻奈美おねぇさんとお呼びしてもいいんですか?」
今度はキャビっとした声で
「あら、あら、なぁんだお兄ちゃんの方はものすごくいい子なんだねぇ――。で、そちらの妹さんは、どうかなぁ――」
「エロばばぁジャン」
「んっ? 今何か言った? いやぁ―ほらこのジープ年代もんだから、エンジン音高いから、よく聞き取れなかったんだよねぇ」
「いやいや、何でもないですよ。かっこいいおねぇさんだって言っていましたよ」
「あら、そうぉ? そうなの? ――――なんか”エロばばぁ”なんて聞こえたのは気のせいかなぁ―」
「あはははは、それは何かの聞き間違いじゃないでしょうか!!」
マジぃ!!!!! わ、話題変えねぇと、放り投げられそうだ。
「と、ところで、何処に向かっているんですか? 東京なんていうのは、ほんと久しぶり……ア――――いや初めてなんで土地勘もなければ、何もわからない田舎者なもので」
「あははは、そうなの、まぁねぇ、東京て言ってもさ、ごらんのとおりなもんで、田舎ってどっち南の方? 北の方?」
「あ、自分ら、東北の方です。それも雪の多い地域です」
「ふぅ――ん、雪積もるところかぁ。私、雪積もったところなんか見たことないんだよねぇ。なんか羨ましいなぁ」
「いやいや、自分たち階層めちゃ低いんで大変ですよ」
「何階層に居たの?」
「ええええ――――っと2万階層以下です」
「うっわぁ――、それってきつぅそう!! でもここよりはいい暮らしが出来ていたんじゃないの? それなのに、なんでわざわざこんな99階層まで上がってきちゃったんだろうね。ま、最も一番体感的にいいのは千階層くらいが一番いい暮らしが出来てるみたいだけどねぇ」
それだ、それの意味が分かんねぇ――。
俺たちは、階層が上がれば裕福になれると教え込まれてきたのに。
最高の環境と、自由に使えるリソースが豊富に提供されると。そう教育されてきた。
それなのに……。
今俺たちがいる階層が本当に99階層。100階層を超えたところにいるとしたのなら。
なんでだ、この荒れ果てた世界が広がなければいけないんだ。
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