第11話 同時多発

 「無理無理無理無理無理無理無理無理無理!!」


 「もう、無理!!!」


 何で~!?何で突然いなくなるの!?普通に喋ってたのに...。

 もしかして、幽霊見ちゃった!?


 とにかく緑夢のいるカフェまで飛ばそう!

 雨も弱まってきたし、あと5分くらいで着けるかな~、とにかく早く!早く!!早く!!!




 みんなは机に突っ伏している。先生も床で倒れている。

 「何で...?どうしてこんなことに?」

 「僕も分からないよ...!僕と萌黄色さんだけが目を覚ましたんだ!他の人はいくら呼んでも目を覚まさないんだ!」

 まだ頭がぼーっとする。早く...、助けを呼ばないと...。

 「早く、誰か呼ばないと...。」

 「そうだね!萌黄色さん!歩ける!?僕が肩を借すから...!よし...!行こう!」

 轟くんの肩を借りて、教室を出た。

 深夜の学校でもいつもは怖くないのに~、最悪~..。

 「...僕、何か見たんだ....!」

 「そりゃー、何かは見るでしょ...。」

 暗闇の廊下を進みながら、横の轟くんを見てみる。

 真っ直ぐと一点を見つめている。

 「...僕は見たんだ....!」

 急に轟くんが止まった。

 何?と、轟くんの方向を見ると暗闇で何かが動いた。

 「あれ...、あれが教室の窓から...。」

 消え入りそうな声でそう言い、前を指差した。

 轟くんが指を差すのと同時に、暗闇で動く何かが、窓から差す月明かりに姿を表した。




 カフェに着くと、緑夢は窓際で本を読んでいた。

 「緑夢!こんなに緑夢が愛おしく思うなんて...!」

 「おう!どうした?」

 緑夢の向かいの席に腰を下ろした。

 「いや~~...!緑夢を向かいに来る車の中で女性が突然消えちゃったんだよ~!!」

 「女性?亜藍、女性を連れてきたの?」

 「いやいや、違うんだよ!途中で、迷子になってる女性がいたから乗せてあげたの!そしたら消えちゃって...、もう、何がなんだかわかんないんだよ!」

 「ちょっと待てって、冷静になってよ。とりあえずコーヒーでも飲んで、...さっきから店員の人が来ないなぁ。」

 緑夢はキョロキョロ辺りを見回しながら、眼鏡をくいっ、と小刻みに持ち上げている。

 神経質な緑夢のいつもの癖だけど、その癖を見るだけでこんなにも落ち着くなんて。

 「...ん、緑夢は何時間も前からいて何も頼んでないの?」

 「えっ?何時間て?さっき着いたばかりだけど?」

 .....ん~?どうゆうこと?だって、緑夢から連絡もらったのが一時間前だから...、ん?

 「じゃー、ここに来る前に連絡入れてたってこと?」

 緑夢が怪訝な顔でこっちを見る。

 「いやっ、亜藍が連絡してきたんだろ?ドライブしてるから緑夢もどうだ~って。...僕はちょうどここのカフェが帰り道だったからちょうどいいかって。」

 「いや...!俺は緑夢が」

 そう言いかけて室内の電気が消えた。

 もしかして。

 「...もしかして、亜藍は連絡してない?」

 「うん...。」

 暗闇の中で二人、顔を見合わせた。

 察しのいい緑夢は悟ったようだった。

 ...あの女性も、もしかして。

 「...怪獣だ!怪獣に誘い込まれたんだ!亜藍!」

 怪獣の中には、幻惑を見せたり眠らせたりする特殊能力を持ったやつがいる。

 でも、ここまで計画的に使ってくるなんて聴いたことがない。

 とっさに俺と緑夢は机の下に隠れた。

 だけど、周りに客はいなく、緑夢が言ったように誘い込まれたんなら、、、万事休す。

 ここで死ぬのか、と一瞬死を意識したとき、


 「助けにきましたよ。亜藍さん、緑夢さん。」


 いつの間にか宇宙人のマスクを被った少年が、机の下に現れた。

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