第10話 ミッドナイトドライブ

 俺の名前は森亜藍。つかの間の休日で深夜にドライブを楽しんでたんだけど、緑夢からこんな連絡が入った。

 「亜藍!悪いけど住所送るから拾ってくれないか?どうせ亜藍のことだからあの道で車走らせてるだろ?頼む!」

 俺はタクシーじゃないっての~。

 まっ、いいけどね~逆に。

 緑夢のことだから突然、仕事を任されたに違いない。何だかんだ、ゴレンジャーの中では(緑夢はこの呼び方嫌がるけど俺は逆に気に入ってる)一番の知識人だからね~。

 緑夢から送られてきた場所は、深夜までやっているチェーン店のカフェみたい。場所はここから一時間くらいのところ。

 10分くらい一本道を進んでいたら雨が降りだしてきた。

 「あちゃー、アフロヘアがしぼむな~。」

 まいっか、逆に。

 辺りは外灯一つ無い一本道。だから夜にもなれば出歩く人はいない。よくこの道をドライブして楽しんでいる。

 ーーだけど、今日は。こんな時間に道を歩く女性を見つけた。

 髪は長く、白いワンピースを着ている。

 普通こんな時間に女性がこの一本道を出歩くかな~?ーーまっ、いっか。逆に。

 近くに停めて声をかけてみるか。...正直怖いけどね~。

 女性の横に車を停めて話しかけた。

「あの~、大丈夫~?こんな時間に傘も差さないで~。...よかったら送りましょうか~?」

 女性が振り返った。

 「あっ!良かった~!誰もここ通らないし!雨も急に降ってきて困ってたんです!...あっ、ナンパとかじゃないですよね?」

 そんな女性の明るい対応に胸を撫で下ろした。

 ふぅ~。良かった。逆に。

 女性を後部座席に乗せてからより一層雨が激しくなってきた。

 「女性がこんな真夜中にどうしたんですか?」

 「えーと、この辺には出張で来てて。お腹空いちゃってコンビニあるかな~、って彷徨ってたら迷子になっちゃっいまして...。」

 バックミラーで女性の方を見ると、恥ずかしそうにうつ向いているーー逆にいいね~。

 「この辺は住宅街だから全然お店が無いからね~、じゃーこのまま中心地に向かっちゃって大丈夫ですよね?」

 「はい!ありがとうございます!...ほんと困ってたんです!」

 はにかんでる笑顔もかわいい。このまま緑夢がいるカフェに誘うのもありかな?

 「この辺り殺人事件があったって聞くから...。」

 唐突に女性が言った言葉。...雨でよく聞き取れなかった。まさか殺人事件なんて。絶対聞き間違いだよ。

 「はは、..は、は、殺人事件なんてこの平和な街にないよ~。」

 「.....。」

 「...何かラジオでもつけましょうかね~。」

 肌寒くなってきたしラジオで気分を盛り上げよ~。

 しかし、こんな時に流れてきたのは、


 [さぁ、今夜も始まりました!ミッドナイトFM!さっそくですが今夜のテーマは...怪談話!真夏の怪談話二時間スペシャルで~~す!!]


 「いや~、、、怪談話なんて聴きたくないよね?」

 「...私聴きたいです。」

 「えっ、聴きたいの!?...意外とこういうの平気なんですか?」

 「...今日は何か、聴きたい気分なんです。」

 女性がそういうなら仕方ないか。カフェまでは残り20、30分ってところか。


 [どうも、怪談師の佐々木です。今日お話するのは、とある男が経験した、真夜中のドライブでの恐怖体験です。.....男は真夜中に車を走らせ、]


 「ふ、ふ、ふ」っと後部座席の女性が笑った。

 「...どうかしました?」

 「...ごめんなさい、今と同じだな、って思っちゃって。」

 「は、は、は....。でも、二人でいるから...。」


 [...すると、突然、車を呼び止める男が現れました。『警察です!事故が起こったので、向こうの道にお願いします。』...どうやら警察官が事故処理を行っているらしく、男は別の道を案内されました。...でも、おかしいんです。辺りを、見回しても事故が起こった様子がないんです。『ほんとに事故ですか?』...男が質問しても、警察官は、じーーっと、見つめるだけで何も言いません。男はおかしいな、と思いながらも別の道に車を走らせました。]


 「変ですね。」

 「へっ?」

 「こんな真夜中に、警察官が何もないのに居るなんて。」

 「.....まぁー、怪談話だから、現実の話じゃないでしょ?」

 「そうですよね、真夜中に見ず知らずの人に会うなんて怖いですもんね。」

 「.....。」

 雨がさらに激しくなってきた。


 [...しばらく車を走らせると、今度は女性の人が現れました。長い髪に、透き通るような肌で、男は思わず声をかけました。...話を聞くと、迷子だって言うんですよね~、これはちょっとおかしいですよね~。こんな真夜中に。なんですが、男はその女性を後部座席に乗せてしまうんです。]


 ふぅ~、、。

 チラッ、っとバックミラーを見ると女性は白い歯を見せて笑っていた。


 [...すると、その女性が何か言ったんです。かすかな、今にも消えそうなほそい声で。男は、聞き返しました。『えっ、何か言いましたか?』女性は今度ははっきり言いました。『さっきも会いましたね』って。男は何が何だかわからなかったんですが、すぐにぴんときました。...さっきの事故現場。男は何か引っ掛かっていたんですね。警察官は、私服だったんですよね。私服警官かな~って思って、たいして気に留めていなかったんですが....、でも、もう一つ。一瞬警察手帳を見せたんですが、その顔写真が女性みたいに髪が長かったんですね。現場には、土が盛られていて、近くにシャベルも立ててありました。...あれ~?もしかして、あのニセ警官が女性警察官を殺して、埋めた現場だったんじゃないかな~って...。じゃー、今後ろに乗せている女性が]


 そこでラジオが切れた。

 一瞬で車の中は静寂に包まれた。

 「あれ?切れちゃったみたいだな~、、、。結末が気になるけど、切れちゃったらしょうがないか~。」

 ラジオを切ったことはバレたかな?でももう怖くて無理~...。

 女性は無言だ。

 「どうしました?」っとバックミラーを確認してみると、女性は消えていた。

 最初から居なかったように、忽然と消えていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る