11話 解決策の提案
俺たちは先ほど見えた村まで案内される。
猪人族の住民もかなり見かけるのだがどこか覇気が無い様に感じた。
俺達が物珍しい様でチラチラこちらを見てはくる。
案内人の男から人族に会う機会は少ないので許してやって欲しいと言われた。
まあ有名人になった気分の様でそこまで悪い気はしていなかったので気にしていないと伝えておく。
そのまま村の中央付近まで進むと他の家より少しだけ大きな家に案内される。
『ここが我らの族長の家です』
先に話を伝えてくれていたみたいで、すぐに族長に会えるみたいだ。
正直族長に会うために揉めたりするのは嫌だったので助かった。
『族長!お客を案内しました』
中から声が聞こえてきた。力強い男性の声だ。
『ああ。案内ご苦労、上がってくれ』
そのまま部屋の中に上がらせてもらう。族長自らお茶の様なものを出してくれる。少し落ち着くと族長が話し始めた。
『俺は猪人族の族長をしているダグラスという。部下を助けてくれて感謝する』
「俺はアデルです。こっちの二人は仲間のシズネとドランです」
シズネのいう通り温厚そうな性格で安心する。見た目は茶色の肌にスキンヘッドとかなり怖い見た目だが・・・
『何かお礼をしたいのだが・・・なにぶんこの村にはあなた方にお渡しできるものが無いのだ。すまない』
最初から物を貰う気ではなかったので全く問題ない。
それより気になっていた事があるので族長に尋ねる。
「いえ、お礼は不要です。それより気になっていたのですが村の住民に元気がない様に感じました。何かあったのですか?」
こんな事を聞いたら失礼じゃないかと思ったが気になったので聞いてみる事にしたのだ。
怒られたら謝れば済むし。でもこの族長の人となりを見ていると怒るとは思えないが。
『気づかれましたか。実はここ何年かで作物の収穫量が激減していまして・・・餓死しない様に生活するのが精一杯の状況なのです。』
なるほどな。確かにここら辺は広大な荒野の様な場所だ。しかしだ、少し歩けば森林地帯に入れるし狩で肉を得ることも可能だろう。
その事を伝えるのだが・・・
『森に入り作物を作ろうとも考えましたが村の守りに男手をかなり使うので開拓する余裕は無いのです。それに出来たとしても犠牲が大きい。村を捨てて豊かな西側にいくことも考えましたが女子供を連れていく事を考えると・・・』
なるほど。森を開拓するには犠牲が大きく、こんな大人数で引っ越すのも魔物に襲ってくださいと言っている様なものか。
肉を取るため狩もしているらしいが、猪人族は力はそれなりに強いが戦闘能力に関してはあまり無いみたいだ。
先ほど出会った者たちも狩をしているところを巨大蛇に襲われたと言っていた。
これは中々に詰んでいる。
族長は頭を抱えているが、俺としてはそこまで悲観的に考えていない。
どうやって猪人族を勧誘しようか考えていたのだが・・・案外簡単にいくかもしれない。
2000人ほどいる猪人族が食う物も俺たちの村で用意しないといけないが大丈夫だろう。あそこら辺は動物も多いし植物や果実も沢山取れるのだ。
「もし犠牲もなく西に行けるとしたらどうしますか?」
族長は考え込んでいるが、このままでは食料が足りなくなるのが必至らしい。
できるならすぐにでもそうすると言っている。
俺はここに来た理由を族長に話す事にする。
少しの間考え込んでいた族長だったがおもむろに口を開く。
『俺は猪人族の長として皆を守る義務がある。この村には愛着があるが、このまま滅びを待つくらいならあなた方に賭けてみる事にします』
よし!猪人族は作物を作る事に慣れているし、力もあるので建築関係を任せられる。俺たちの村には必要な仲間なのだ。
「任せてください。道中の魔物についても問題ありません」
『ありがとうございます。準備に1日ほど時間をください』
俺は問題ないと伝えた。
族長が村の住民を集め俺たちを紹介してくれた。
そこで西に引っ越す事を伝えたのだが・・・正直びっくりしてる。
2000人程いるので反対意見も出るかと思っていたのだが皆俺たちに頭を下げて感謝している。このままでは村が存続できないと皆が感じていた様だ。
少し照れくさいが悪い気はしないな。
今日は俺たちが魔物の狩をし、食材を提供する事にした。
ドランとシズネが張り切り過ぎたのもあって俺達の強さが猪人族に理解されたみたいだ。大量に魔物を仕留めたのでこれだけあれば腹一杯食えるだろう。
移動の途中に倒れられても困るので張り切って狩をしたのだ。
村のみんなは久しくぶりに腹一杯食べた様で、泣きながら礼を言う者まで現れた。
和気藹々としていると族長が顔を強張らせながらこちらに向かって来た。
いや・・・見た目が怖いんだよ。
何かあったのかと思い族長に訊ねると、今後はダグラスと呼んで欲しいと言われた。俺は了承すると族長が話し出す。
『今後我ら猪人族はアデル様に忠誠を誓いたく思います。つきましては我らも眷属に加えてくださいませんか?』
突然の申し入れに戸惑うが断る理由もないな。
むしろこちらからお願いしたいくらいだ。族長が俺の眷属になる事を願った事で猪人族が全員頭を下げている。
俺の後ろではシズネとドランが微笑んでいる。相変わらずだ。
俺は頭をあげる様に伝え、眷属化を使用する。
族長改めダグラスに眷属化を使用すると光だす。周りの猪人族も同様だ。
いつもの光景なんで今更驚きもしない。
光が収まるとあまり変わらないダグラスが現れる。一瞬失敗か?と思ったがそうではないみたいだ。
名前 ダグラス
種族
影響値 1180万
属性 アデルの眷属
スキル 世界系 土震世界
身体強化、空間収納、思考加速、自動治癒、魔力感知、魔力衣、飛行術、人化、土系統の魔法の応用可能
予想はしていたが、それでも驚きは隠せない。
何故かは分からないが俺が直接眷属にすると皆神性を帯びている。もしかしたらだが俺の“神の王”に関係しているのか?
いや今は気にしてもしょうがないな。
ダグラスはここまで強いともはや魔物に怯える必要などない気がするな!
ダグラスの部下は進化しなかったがかなり強くなったのがわかる。
先ほど助けた3人もかなり強くなっている。
猪人族たちは驚いているが、目の前のダグラスはもっと驚いている。
『シズネ殿やドラン殿を見ているので疑ってはいませんでしたが・・・これは流石に驚きましたな』
まあね〜俺は麻痺してきたから問題ないけど、いきなり種族が進化して強くなったら衝撃だろう。
眷属化と同時にスキル付与もしているので更に強くなっているしな。
後はいつも通り武器も作るかな。
最初は戸惑っていたが今は味方が強いに越した事はないので自重しない事にしたのだ。
「ダグラスの武器も作ろうと思うんだが希望はあるかな?」
少し悩んでいたダグラスだったがすぐに希望を伝えてきた。
今回も途轍もない武器ができそうだったが、西に向かう際強い武器があったほうが良いだろうと思ったのだ。
『そうですね。それでしたら斧のような物がいいですね。あまり剣の様な繊細な物は苦手でして・・・』
ワハハと笑いながらダグラスが答えているが確かに細剣などは似合わないな・・・
俺はダグラスの武器のイメージを固めた。
よし、“斧”と“土”にしよう。魔力を込めると巨大な斧ができあがる。
『
名前の通り土を砕く・・・いや地面を砕けそうな斧だ。
ダグラスに武器も作ったので、この場はお開きとなった。
明日からは2000人を守りながら西の村まで行かないといけないのだ。
日数もかなり必要になるだろう、村は大丈夫かな?
村にはカノン達がいるので心配はしてないがここまで時間をかける予定は当初なかったのだ。
まあ拗ねているかもしれないが大丈夫だろうと思い休む事にした。
ドリームワールド〜仲間と作る国づくり〜 神川創太 @masannn
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ドリームワールド〜仲間と作る国づくり〜の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます