アレ本当に上級悪魔だったのか……

  私が何故こうなったのか尋ねるとお父様はとても渋い表情をしていた。娘と妻ラブなお父様だから私を傷つけないように言葉選びに悩んでるようね。けど、すぐに軽く溜息をついたお父様は


「アンナ。お前は悪魔に呪いをかけられたんだ」


  お父様はそうハッキリ告げた後、私が屋敷に運び込まれた時の話をしてくれた。


  キョウカ達が私を運んで屋敷に到着した後、お父様にことの経緯を簡潔に説明した。お父様はすぐに私を私の部屋のベッドに運ぶように指示し、我が家がいつも世話になってるお医者様ホウメイ先生を呼ぶように指示した。

  たまたま急患がいなかったのもあり、ホウメイ先生はすぐに来てくれたらしい。ホウメイ先生は私の身体をくまなく診察して、ある一点を見てとても片眉がピクリと上がった。そして、重たい溜息を一つついた。


「大変申し上げにくいですがお嬢様は呪いをかけられたようです」


「何だってッ!!?」


ホウメイ先生が先程から注視していた一点を指差し、お父様達がそこを見てみると、私の右脇腹付近に赤黒い紋様のようなアザがあった。私も後で確認したらだいたい直径10cmのような赤黒い紋様のようなアザが本当にあった。

  お父様はホウメイ先生に呪いを解呪出来ないか尋ねたのだが、ホウメイ先生は困ったような表情になり


「私では無理です。呪いは専門外ですので……ただ、呪いを解呪する専門組織でもある教会の者達でも難しいかもしれません……」


ホウメイ先生曰く、私に呪いをかけたのは上級悪魔かもしれないとの事だった。ホウメイ先生が前に読んだ解呪について書かれた専門書に載っていたアザと、私についてアザが一致していたらしい。その載っていたアザが上級悪魔によってかけられた呪いの刻印のアザと一致していたらしい。その後、教会の人達にも来てもらったらしいが、ホウメイ先生の言った通り上級悪魔にかけられた呪いで間違いないと言われたそうだ。


  はぁ……アレ本当に上級悪魔だったんだ……あまりに弱かったから下級ぐらいの悪魔かと思ったわ……いや、油断していたとはいえ私に呪いをかけたんだからそれなりには強かったのか……


「それで……アンナにかけられた呪いは弱体化の呪いらしい。本来の弱体化の呪いは魔力を弱めたり、魔力数値を減らしたりする効果らしいが、その……アンナは魔力も魔力数値も低いから身体に影響を受けてその姿になったのではないかと教会の者達がな……」


お父様は私にかけられた呪いについて説明してくれた。私は設定上は、「リリカルスクールラブ」の悪役令嬢アンナ・ステインローズと同じ地属性の魔力数値100という、ありふれた魔力属性とあまりに低い魔力数値という事になっている。

  しかし、実際の私は転生の際に女神アイリーン様が私に、かつて人間だった頃の力を私に授けてくれたおかげで、私は魔力数値は無属性という若干チート級の属性。魔力数値も無限大というチート転生を果たしているのである。

  となると、先程のお父様に説明した教会の人達の言葉は当てはまらないのでは?と思ったのだけれど、逆に強大な力過ぎて弱体化出来なかったのでは?という考えに至り得心した。


「それで……弱体化の呪い自体はありふれた呪いなのだが、相手が上級悪魔故にその呪いのかけ方が複雑で、少しでもミスをするとアンナの身体に何かしら影響を与えてしまうと言われてな……」


お父様は悲痛な表情を浮かべてそう説明してくれた。

  呪いという症状は、かけた者やかけた者の怨念によりその形は複雑になる。解呪するにはその複雑化した呪いを一つ一つ解かなくてはならない上に、強力な力で宿った呪いは一つ解くのにも莫大な力や時間を要してしまう。ましてや、私は上級悪魔がその命を代償にかけた呪いなので強力で強固な呪いなのである。


「そうなると……アンナの呪いを解くには、解呪の巫女様に依頼するほかない」


「解呪の巫女様?」


「我がウィンドガル王国が誇る解呪のエキスパートで魔法省の5大トップの1人だ」


お父様の説明によると、解呪の巫女様とはどんな呪いでもあっという間に解いてしまう凄腕の解呪専門家らしい。その腕前の良さから皆から『解呪の巫女様』と呼ばれている。

  本来それだけの解呪の腕をもつなら教会に所属するのが筋なのだが、本人が教会の厳しい戒律のようなルールを嫌い魔法省に所属し、今では前にお世話になったヴィオル・アスカルド侯爵令嬢と同じく、魔法省の5大トップの1人となっている。


「では、その方に頼めば私の呪いは解けるのですね」


「間違いなく解けるだろうが……いかんせん解呪の巫女様は我が国だけでなく、他の国からも要請が来る程忙しい人物でな……魔法省には連絡するがいつ解呪の巫女様に解呪をお願い出来るか分からないのだ……本当にすまない……」


お父様は渋い表情をして頭を下げてきたので、私は慌てて「大丈夫ですよ!?お父様のせいではありませんから!?」と言って、お父様に顔を上げてもらうようお願いした。


  こうして、私は解呪の巫女様とコンタクトがとれるまで、この姿でいる事になった。最悪の場合を想定して、私が解呪を行う為にどこからか解呪の専門書を取り寄せた方が良さそうね……あっ、そう言えば……


「お父様。その……何故私の胸は小さくならなかったのでしょうか?」


「ん?あっ……言われてみれば確かにそうだな……すまん……アンナの身体が小さくなった方が衝撃的でその事には気づかなかった……」


まぁ、確かに誰だって小さくなってしまった身体に目がいくから仕方ないわね……。

  ちなみに、後日教会の人に尋ねても、胸だけが小さくならなかった原因は分からなかった……

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幼くなっても悪役令嬢の姉はヒロインの妹を溺愛す 風間 シンヤ @kazamasinya

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